第52話:深海軍勢の襲来と、要塞都市の絶対迎撃陣
ドガァァァァァァァンッ!!!!!
要塞都市の遥か南方に広がる平原が、突如として激しい水飛沫とともに爆裂した。
海から程遠いこの地に、深海から魔導水脈を強引に引き込んで出現した数万の眷属軍勢──半魚人の兵団や巨大変異巨大イカが、大地を青黒い津波となって埋め尽くしていく。
「状況分析。──敵の総数、およそ3万8千! 先頭を進むのは深海の鉄甲騎兵。このままでは平原の防衛ラインが数分で押し流されます!」
レオンが黄金の髪をなびかせ、オッズアイの瞳に無数の戦況を映しながら木札を叩いた。
「フン、数だけが取り柄の雑魚どもが。アクア、お前の計算通りに迎撃するぞ。指示を出せ」
俺は九色の前髪を不敵に弄りながら、最前線の城壁の上から津波を見下ろした。
「すべては計算通りさ、我が主。レオン、シオン、カイン──私の導き出す魔力伝導の座標へ、同時に最大火力を叩き込め。空間の湿度が最高潮に達した今が、最も効率的に破滅をスタックできる」
アクアが清流の髪を指先で弾き、冷徹な声で戦術論を空間に投影する。
「あはは! 了解だよアクア! 湿った空気なら、僕の電気を帯びた嵐が一番伝わる!」
シオンの新緑の風が、アクアの指定した座標へピンポイントで真空の渦を発生させ、数千の深海兵を一箇所に凝縮する。
「フン、まとめて切り刻むだけさ」
カインが深紅の大鋏を閃かせ、空間ごと真空の渦を爆破。そこへサシャの紫色の毒熱がスタックされ、津波の水分が瞬時に沸騰した劇薬へと変貌していく。
「ギ、ギャァァァァァッ!?」
数万を誇った深海の軍勢が、アクアの知略と既存メンバーの無駄のない超高精度な連携によって、前線に触れることすらできず一瞬で蒸発していく。
だが、敵もさるもの。軍勢の奥から、山をも超える巨躯を持った【深海王】の直系眷属──超巨大魔獣オオイカが、その無数の触手を城壁めがけて振り下ろしてきた。
「ガハハ! その程度の質量、俺とアルゴの防壁で100回受けてもビクともしねぇわ!」
ゴルドが剛力の闘気を城壁にスタックし、アルゴが『氷結の絶対時間』で触手そのものを分子レベルで凍結させる。
バキィィィィンッ!!!
城壁に激突した巨大な触手が、衝撃だけで粉々に砕け散った。
完璧だ。知略、火力、防衛、インフラ、そのすべてが完璧に噛み合っている。
──しかし、大自然の物量は、俺たちの想定をさらに超えてきた。
「我が主! 敵の本隊が、倒された眷属の魔力を生贄に、都市の直上に直接『大海水の一極集中』を展開! 街が、丸ごと押しつぶされます!」
レオンの緊迫した声と同時に、要塞都市の空が、完全に「海」へと変貌した。
数億トンに及ぶ超高圧の水塊が、都市の全域を跡形もなく押しつぶさんと、重力に従って一気に降り注ぐ。
ゴルドの剛力でも、アルゴの氷でも、この「質量そのものの天井」をすべて防ぎ切ることは不可能。
「状況把握。──チッ、上空からの飽和攻撃か。なら──」
俺が前に出ようとした、その瞬間だった。
「──みんなの特製グラタンを、この街を、絶対に汚させませんッ!!」
エプロンをなびかせたフェリスが、サクラピンクの髪を激しく揺らしながら、誰よりも早く城壁の先端へと飛び出した。彼女の手には、武器ではなく、仲間を護るという純粋な意志だけが握られている。
フェリスが両手を天へと掲げた刹那、彼女の胸の奥から、夜空の海を完全に遮断するほどの、圧倒的に優美で神聖なサクラピンクの輝きが解き放たれた。
**【乙女の処女宮】──!!!**
ドガァァァァァァァァンッ!!!!
降り注いだ数億トンの大海水が、都市の直上で展開されたサクラピンクの絶対聖域の結界に激突し、激しい地鳴りを響かせる。
だが、結界はひび一つ入らない。それどころか、フェリスの神聖な魔力に触れた大海水は、濁った深海の呪いを完全に浄化され、ただの「ただの綺麗な聖水」へと変えられて、都市の周囲の農地へと優しく降り注いでいった。
「な、何という神聖な光だ……! 街全体を包み込むほどの絶対防御と、同時に我々の魔力を超高速で全快させていく……。これが、彼女の『聖女』としての真価か!」
新入りのアクアすらも、フェリスの規格外の神格能力に驚愕し、眼鏡を押し上げる。
「状況把握。──最高のタイミングだ、フェリス。お前らが耕してくれたこの絶対の隙、無駄にはしねぇ」
俺は九色の前髪をかき上げ、不敵にニヤリと笑った。
フェリスの大防御によって完全に無傷、かつ魔力を限界突破させた極彩色の魔王軍。
「おい新入り、お前の計算通りに、あの海の王とやらの本陣へ、俺の最大火力をスタックしてブチ込んでやる。座標を示せ!」
「フフ、最高の数式を君に捧げよう、我が主!」
アクアが知略の光を放ち、敵の本陣の核を指し示す。戦局は、完全に俺たちの手の中にあった。




