第50話:知略の撃破と、水瓶の降伏
「……私の数式が、完璧な計略が、なぜ機能しないッ!?」
水瓶座の知者が、狂ったように水瓶から次々と新たな魔力光糸を放ち、流砂の罠を発動させる。だが、それらはすべて、フェリスが展開するサクラピンクの絶対聖域**【乙女の処女宮】**に触れた瞬間に、ガラス細工のように儚く砕け散っていった。
「状況把握。──お前の計算式には、俺たちの『身内』の強さが抜けてんだよ」
俺は八色のインナーカラーを獰猛に揺らし、地面を蹴った。
フェリスの超高速神聖治癒によって、体内の魔力対流はすでに限界を超えて跳ね上がっている。
「シオン、アルゴ! 逃げ道を塞げ!」
「あはは! 了解だよシリウス! 僕の風でお前の計算を全部吹き飛ばしてあげる!」
シオンの新緑の風が砂漠の四方を囲む巨大な竜巻となり、水瓶座の退路を完全に遮断する。
「……私の『氷結の絶対時間』からは、いかなる知略も逃れられん」
アルゴの深藍の冷気が砂の足場を一瞬で凍土へと変え、水瓶座の足元を完全に凍りつかせて縫い止めた。
「しまっ……、動けない……!?」
絶望に目を見開く水瓶座の知者。その眼前に、俺は『縮地』すら必要としない純粋な神速で肉薄した。
カインの破壊、ゴルドの剛力、サシャの毒熱、そしてフェリスの聖なる魔力。既存メンバー全員の意志がスタックされた俺の拳が、七色の極彩色を超えた未知の輝きを放ち、水瓶座の掲げる器へと叩き込まれる。
バキィィィィィィィィンッ!!!!
世界中の知恵を蓄えていたはずの『知恵の水瓶』が、衝撃波とともに木端微塵に爆砕した。拠り所を失った魔力光糸の罠が完全に霧散し、砂漠に静寂が戻る。
「がはっ……! 私の、知略が……完敗、だと……」
武器を砕かれ、その場に膝をついた水瓶座の知者は、凭れかかるようにして天を仰いだ。その表情には、すべてを出し尽くして敗れた者の、妙にサッパリとした諦めが浮かんでいる。
その瞬間。
砕け散った水瓶の破片から、夜の砂漠を優しく潤すような**【清流】**の光が厳かに溢れ出し、彼の胸元へと吸い込まれていった。
> 【第九星痕・水瓶座が覚醒】
> 個体名:アクアに神格能力『知恵の水瓶』を授与。
> 同時に、主への基礎身体能力バフがさらに上乗せ(スタック)されます──。
脳内に響き渡る、九度目の厳かな声。
ドクンッ……!!!
新入り──アクアの覚醒と同時に、俺の前髪の内側に、九色目の輝きとして**【清流の光のメッシュ】**が鮮烈に灯る。
「……フフ、完敗だ。これほど圧倒的な力と、それを支える『聖女』の祈りを見せつけられては、私の戦術論も形無しだよ。認めよう、君たちが新しい世界のルールだ」
アクアは胸に『水瓶座の星痕』を宿し、不敵ながらも恭順の意を込めて、俺の前に深く頭を垂れた。
「状況把握。──その生意気な頭脳、これからは俺たちの要塞都市をさらに発展させるために使え、アクア」
俺は九色に増えたインナーカラーを弄りながら、ニヤリと口元を歪めて手を差し伸べた。
「シリウス様……っ!」
結界を解いたフェリスが、サクラピンクの髪をなびかせながら、駆け寄ってくる。その瞳には、大仕事を成し遂げた安堵の涙が浮かんでいた。
「よくやった、フェリス。お前のおかげで助かった。……最高の料理人、兼、最強の聖女様だな」
俺がその頭を無骨に撫でると、フェリスは顔を真っ赤にしながらも、本当に嬉しそうに満面の笑みを咲かせた。
「状況分析。──これにて、9人目の身内が合流。さらに我が軍の知略と兵站は神の領域へと達しましたね、我が主」
レオンが誇らしげにオッズアイを輝かせ、全員がフェリスと新入りのアクアを大歓声で迎え入れる。
最高の絆で結ばれた既存メンバーの底力と、ついに覚醒したフェリスの絶対防御。
極彩色の魔王軍の進撃は、砂漠の知恵をもスタックし、世界を完全に塗り替えるための次なる激動へと舵を切る。




