第33話:天秤座の覚醒と、新世界の絶対法
「私の天秤を……お前のところで使え、だと……?」
レオンは漆黒の長髪を揺らし、驚愕にそのオッズアイを見開いた。
どれだけ組織に裏切られ、大罪人として追われたとしても、彼が手放さなかった『正義の天秤盾』。それが今、俺が放つ圧倒的な魔力と覇気に呼応するように、持ち主の意志を超えてカタカタと激しく共鳴している。
「状況分析。……お前の言葉には、他者を欺く『嘘』の波長が一切存在しない。だが、私を従えようというのなら、まずはその資格(器)を証明してもらう!」
レオンは最後の力を振り絞り、大盾を構えて真っ正面から俺へと突進してきた。
大地を揺るがすほどの重戦車の如き突撃。一歩も退かぬ絶対の規律。
(状況把握。……フン、本当にクソ真面目で不器用な奴だわ。だったら──)
「いいぜ。お前のその重すぎる正義ごと、俺が丸ごと受け止めてやる」
俺は避けることなく、真っ向から迫り来る天秤盾のド真ん中へと、素手の右拳を突き出した。
バキィィィィィンッ!!!!
荒野に激しい衝撃波が吹き荒れ、周囲の岩山がピキピキとひび割れる。
五つの星痕のバフがスタックされた俺の拳は、レオンの渾身の突撃を寸分違わずその場で完全に停止させていた。
「な……っ!? 私の盾を、ただの拳一つで真っ向から……っ」
「お前の法がどれだけ頑固でも、俺の場所なら誰もそれを歪ませやしない。──だから、もう一人でその重い天秤を支えるのはやめろ」
俺は突き出した拳をそのまま掌へと変え、レオンの天秤盾をガシッと掴むと、体勢を崩した彼の身体を、力強くその胸へと引き寄せた。
その瞬間──。
レオンの胸元から、厳かで、すべてを見透かすような**【黄金】**の光が爆発的に溢れ出した。
【──第六星痕・天秤座が覚醒。個体名:レオンに神格能力『神規の絶対執行』を授与。同時に、主への基礎身体能力バフがさらに上乗せ(スタック)されます──】
脳内に響き渡る六度目の厳かな声。
ドクンッ……!!!
心臓がかつてないほど重厚に脈打ち、俺の身体から放たれる極彩色の神気が、周囲の荒野の重力そのものを一変させる。
サクラピンク、ゴールド、ヴァイオレット、プラチナシルバー、深紅──そして新たに、俺の前髪の内側に**【黄金の光のメッシュ】**が、六色目として鮮烈に灯った。
「あ……あぁ……。私の天秤が、光に、満たされていく……。これが、私の求めていた……真の『法の器』なのか……っ」
レオンは大盾を地面に突き立てたまま、その場に静かに片膝を突いた。これまでの張り詰めていた孤独な殺気は消え失せ、その瞳には、俺という新たな主(絶対法)への深い帰服の光が宿っていた。
「状況把握。──ようこそ、俺の魔王軍へ。これからはお前が、俺たちの『正義』だ」
俺は六色に増え、ますます極彩色の輝きを増したインナーカラーを指先で弄りながら、不敵に口元を歪めた。
「シリウス様ーっ! 新しいお仲間ですね! すごく強そうですっ!」
フェリスがサクラピンクの髪を弾ませて駆け寄ってくる。その後ろから、ゴルド、サシャ、レン、カインもそれぞれの武器を携えて集まってきた。
「ガハハ! これで6人目か! いよいよ大所帯になってきたな、魔王様!」
「ふふ、これだけ堅物なら、私たちのブレーキ役にちょうどいいかもしれないわね」
賑やかな仲間たちの声を背に受けながら、俺は黄金の光が馴染んでいく自身の右手を眺めた。
アリエス、タウロス、スコーピウス、ジェミニ、キャンサー、そしてライブラ。
世界に無能と追放された黒髪の皇子は、気づけば世界の半分を支配できるほどの絶対的な『極彩色の魔王軍』を創り上げつつあった。
「よし、状況把握。──堅物の歓迎会もしなきゃならんし、一旦要塞へ戻るぞ。……帝国が次の一手を打ってくる前に、俺たちの『新しいルール』を世界に叩き込んでやるわ」
俺たちの進撃は、もう誰にも止められない。




