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髪色が増えるたびに最強になる魔王軍 〜不吉な黒髪と見捨てられた元皇子、12星座の絆を結んで世界を極彩色に塗り替える〜  作者: S@Y@


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第3話:規格外の『ゴミ』

「あぁ? なんだァ、てめえは……」


奴隷狩りのリーダー格の男が、不快そうに顔を歪めて頭上の巨木を睨みつけた。


他の荒くれ者たちも、一斉に武器を構えて身構える。


だが、そこにいたのは、最高峰の装備を固めた帝国の騎士でもなければ、大森林の凶悪な魔物でもなかった。


衣服こそそれなりに上質だが、武器一つ持たず、何より──その髪が、一切の光を宿さない「完全な黒髪」である少年。


「……チッ、なんだ、ただのガキか。しかもあの黒髪……魔力ゼロの劣等種じゃねえか。おい、驚かせやがって」


男たちは一瞬にして緊張を解き、ゲラゲラと下卑た笑い声をあげた。


この世界の常識において、「黒髪」はイコール「無能」。そんな存在が、自分たちプロの奴隷狩りに敵うはずがないと、誰もが確信していた。

地面に蹲るサクラピンクの髪の少女──フェリスもまた、絶望の瞳で頭上の少年を見上げていた。


(黒髪の人間の男の子……? だめ、逃げて……! その人たちに関わったら、あなたまで殺されちゃう……っ!)


声にならない悲鳴を胸の中で叫ぶ。


だが、そんな周囲の反応など、少年──シリウスにとっては日常茶飯事であり、どうでもいいことだった。


「劣等種、ね。まあ、間違っちゃいないが……」


シリウスは小さくため息をつくと、頬杖を外した。


そして、巨木の枝から、重力を感じさせないほど滑らかな動作で、ふらりと地面へと飛び降りる。


ストン、と軽い足音が響いた。


「おいおい、わざわざ死にに降りてくるとは、とんだお人好しのバカだな!」


一人の男が、嘲笑しながら腰の長剣を抜いて突進してくる。その刃には、鋭い風の魔法の刃が纏わされていた。直撃すれば、生身の肉体など容易く両断される。


「危ないっ……!」


フェリスが思わず目を瞑り、叫んだ。


しかし──。


キィィィンッ!!


激しい金属音が響く。だが、それはシリウスの肉体が斬られた音ではなかった。


「が、はっ……!?」


次の瞬間、風の刃を纏った男の身体が、まるで目に見えない巨岩に激裂に衝突したかのように、凄まじい勢いで真横へと吹き飛んでいった。


男は地面を何度もバウンドし、木々に激突して動かなくなる。


「な……ッ!?」

「今、何が起きた……!?」


残された奴隷狩りたちが、我が目を疑って絶叫した。


シリウスは、一歩も動いていなかった。


ただ、男の放った渾身の斬撃の軌道を見切り、紙一重のステップで回避すると同時に、男の死角から**『ただのローキック』**をその足元へ叩き込んだだけだ。


突進のスピードをそのまま利用され、自爆するように吹き飛んだのだ。


「悪いな。魔法の使えない無能なんで、剣の軌道が遅くてあくびが出そうだ」


シリウスは、面倒そうに自分の黒髪を指先で弄りながら、冷めた目で残りの男たちを見据えた。


「ひ、開けっ! 【ライトニング・ボルト】! 死ねぇぇぇ!」


恐怖に駆られた別の男が、杖を突き出し、直撃すれば即死を免れない強力な雷撃魔法を放つ。


落雷のごとき速度で迫る青白い電撃。


だが、シリウスは、その魔法が発動する『一瞬前』の、杖の向きと空気の歪み(魔力の流れ)を完全に把握していた。


ドォォォン!!!


激しい爆発音が響き、シリウスがいた場所の地面が黒く焦げ付く。


「やったか!?」と男が狂喜したのも束の間。


「だから、遅いって言ってるだろ」

「へ──」


男のすぐ背後から、鼓膜を震わせる低い声。

男が振り返る暇すら与えず、シリウスの鋼のような正拳突きが、男の背中に吸い込まれた。


バキィィィンッ!!!


「ぐ、ふぅっ……!」


男が着ていた防具の革鎧が、衝撃に耐えかねて派手に弾け飛ぶ。男はそのまま白目を剥き、地面に顔面から突っ込んで気絶した。


「ば、化け物……! 魔法も使わずに、俺たちの最高火力を……!?」

「あり得ねえ……! 奴は本当に魔力ゼロのゴミなのか!?」


残されたリーダー格の男と、もう一人の男が、完全に腰を抜かしてガタガタと震え出す。


「おい、残り二人。一斉にかかってこい。一人ずつ相手にするの、結構だるいんだわ」


シリウスは拳を軽く振り払い、冷酷なまでに静かな、けれど圧倒的な強者の佇まいで、一歩、また一歩と男たちへ歩み寄る。


魔法という絶対の法則に依存しきった連中には、極限まで磨き上げられた「純粋なフィジカル(体術)」が、どれほどの脅威か理解すらできていないようだった。

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