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髪色が増えるたびに最強になる魔王軍 〜不吉な黒髪と見捨てられた元皇子、12星座の絆を結んで世界を極彩色に塗り替える〜  作者: S@Y@


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第18話:迷いの霧の谷


要塞の留守をゴルドの部下たちと多種族の民に任せ、俺たちは大森林の北西に位置する『迷いの霧の谷』の入り口へと辿り着いていた。


目の前に広がるのは、昼間だというのに太陽の光が一切届かない、不気味な白霧に包まれた深い渓谷だ。一歩足を踏み入れれば、上下左右の感覚すら狂いそうな濃密な気配が漂っている。


「うぅ……シリウス様、ここ、なんだかすごく視界が悪くて、頭がくらくらします……」

フェリスがサクラピンクの髪を押さえ、俺の服の裾をぎゅっと掴んだ。


「気をつけなさい、フェリス。ただの霧じゃないわ。これ、精神を惑わす微弱な魔力が混ざり合っている。私の毒とはまた違う、嫌な性質の結界ね」

サシャが周囲を警戒しながら、紫色の髪を揺らす。


「状況把握。──なるほど、これが『迷いの霧』の正体か。五感を狂わせて、侵入者を自滅させるトラップだな」


俺はものぐさそうに息を吐き、前髪の内側で輝く三色のインナーカラーを弄った。

普通の人間の感覚なら、今頃完全に方向感覚を失って立ち往生しているところだろう。だが、三つの星痕のバフがスタックされている今の俺にとっては、この程度の幻術、あってないようなものだった。


脳内のレーダーが、霧の奥から伝わってくる「二つの相反する魔力の波長」をハッキリと捉えている。


「ゴルド、フェリス、サシャ。俺のすぐ後ろを離れずに付いてこい。この霧の『核』になっている場所に、最短ルートで突っ込む」


「はっ! お任せください、魔王様!」

大槌を握り直したゴルドが、岩石のような身体で俺の背後を固める。


俺たちは一切躊躇することなく、視界ゼロの白い闇の中を突き進んだ。

右へ、左へ、時にはあえて道のない崖際へと、俺は迷いのない足取りで進んでいく。普通なら幻影に惑わされて底なし沼に落ちるルートだが、俺が足を一歩踏み出すたびに、足元の霧が怯えるようにサーッと割れて道を譲った。


「信じられない……。この視界で、どうしてそんなに正確に歩けるの?」

サシャが驚愕の声を漏らす。


「言ったろ、状況把握だ。それから──奥にいる奴の『こえ』が、うるさいくらいに俺の星痕と共鳴してんだわ」


霧の最深部へと近づくにつれ、脳内に直接、相反する二つの感情が流れ込んできた。

『誰も信じるな、全員騙して陥れてやる』という、刺々しい敵意。

そして同時に、『誰か、本当の私を見つけて、救ってよ』という、引き裂かれそうなほどに悲しい、孤独な悲鳴。


(状況把握。……一つの身体に、二つの心か。まさに双子座ジェミニにふさわしい欠落だな)


その時、一気に霧が晴れ、目の前にぽっかりと開けた奇妙な空間が現れた。

そこは、周囲を鏡のような結晶質の岩壁に囲まれた、巨大な『鏡の回廊』だった。


「ようこそ、愚かな侵入者たち」


「……あはは! 本当に迷わずに来ちゃうなんて、馬鹿みたい!」


岩壁の鏡の中から、同時に二つの声が響き渡る。

現れたのは、右半分が漆黒、左半分が純白という、奇妙な対比の衣服を纏った一人の『美しい少年』──いや、全く同じ顔をした『少女』だった。


二つの姿が鏡の間を陽炎のように揺らめき、どちらが本物か、あるいは両方が偽物か、全く判別がつかない。


「僕たちの幻術の迷宮を破った褒美だ」

「私たちの可愛い『お人形』にしてあげる!」


双子のシンクロした嘲笑とともに、鏡の世界から、無数の「俺たちの偽物の幻影」が武器を構えて一斉に飛び出してきた。


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