第17話:新たなる星の導き
『魔毒の城壁』の完成によって、豊穣の泉を囲む要塞は文字通り鉄壁の要塞へと進化した。サシャの率いていた魔族たちも、今や完全に我が魔王軍の頼れる防衛戦力として馴染んでいる。
「状況把握。──よし、拠点の安全はこれで担保されたな」
俺は要塞の中央、少し高くなった石の演台の上に腰掛け、ものぐさそうに三色のインナーカラーを弄った。
サクラピンク、ゴールド、ヴァイオレット。黒髪の内側で鮮やかに明滅する極彩色の光は、俺の中に眠る三つの星の力の証明だ。
「シリウス様、お水とお茶、どちらが良いですか?」
フェリスがサクラピンクの髪を揺らし、木製のトレイを持ってトコトコと歩み寄ってくる。
「あぁ、水でいい。ありがとな、フェリス」
受け取った冷たい泉の水を喉に流し込んでいると、どすんどすんと重い地響きを立ててゴルドがやってきた。その隣には、紫色の髪をなびかせたサシャも一緒だ。
「魔王様、大森林の南側の見回りを終えました。例の帝国の小隊ども、我が砦の毒の威圧感に恐れをなしたか、完全に撤退していきましたぞ!」
ゴルドが自慢の大槌を肩に担ぎ、嬉しそうに報告する。
「当然よ。私の『神罰の紫毒』が染み込んだ壁だもの。まともな感覚を持った斥候なら、近づくことすら不可能なはずだわ」
サシャがふふっと妖艶に微笑む。二人の連携は日に日に磨きがかかっていた。
「上出来だ。……だが、のんびりしている暇はなさそうだぞ」
俺はグラスを置き、視線を大森林の『さらに深く、北西の方角』へと向けた。
アリエス、タウロス、スコーピウス。三つの星痕が俺の身体にスタックされたことで、俺の五感──いや、星を感知する『魂のレーダー』のような能力が、格段に強化されていた。
ドクン、ドクン、と。
俺の胸の奥で、まだ見ぬ『次の星』が、共鳴を求めて激しく脈打っているのがハッキリと分かる。
「状況把握。──ここから北西、大森林の最深部、通称『迷いの霧の谷』だ。そこに、俺たちの4人目の仲間になるはずの奴がいる」
俺の言葉に、フェリスたちが一斉に表情を引き締めた。
「4人目の、仲間……! シリウス様、次はいったいどんな星座の力を持つ方なんですか?」
フェリスが目を輝かせる。
「頭に浮かんでくるイメージだと……そうだな。天を駆ける双子、あるいは表裏一体の二面性。──**『双子座』**の星痕を持つ奴だ」
「双子座、ですか。あの地域は、古くから幻術を操る狡猾な種族が潜むと言われている危険地帯ですが……」
ゴルドが太い眉をひそめる。
「幻術? 面白そうじゃない。私の毒と、どっちが凶悪か試してみたいわね」
サシャは不敵に唇を舐めた。
「何が待っていようと関係ない。俺の力を求めている『志』があるなら、俺が丸ごと迎えに行って、背負ってやるだけだ」
俺は演台から軽やかに飛び降りると、前髪を掻き上げた。
サクラピンク、ゴールド、ヴァイオレットのインナーカラーが、次の戦いを予期して一際強く輝きを放つ。
魔王シリウスと三人の星の戦士たち。
極彩色の魔王軍による次なる「仲間集め」の旅が、今ここから始まる。




