12.帰国後
数ある作品から本作品を選んでいただきありがとうございます。
帰国後、私達は国王の元へ訪れ事情を報告した。国王はこちらの犠牲なく戦争が終わったことに安堵していた。
「そうか・・・。大儀であった。それにしてもお主には驚かせられるな。こんなにも早く実績をあげるとはな・・・。それで・・・お主への褒美は」
「もちろん。結婚を望みます。」
(ノゾミさん・・・。)
(何か問題ある?貴方自身の実績は後からいくらでもたてればいい。私からの結婚祝いだと思いなさい。)
(・・・はい。ありがとうございます。)
アネットは何か思うところがありそうだったが、受け入れてくれた。私にとってはアネットが幸せになることが一番大事だ。障害となるものは私が薙ぎ払う。多少過保護気味かもしれないが、しったことではない。アネットが泣くよりましだ。
国王は私を見て深いため息をついた。
「国を救ったのだ。誰も文句を言うまい。承知した。婚約については後日公表する。式などの日程は後々な。」
「ありがとうございます。」
私は、国王に向かって頭を下げた。これでザクとアネットの結婚が覆ることもないだろう。私の役目もほぼ終わりだろう。
そんな事を考えていたら、国王が思い出したかのように口をひらいた。
「そうだ。イザークもお主の事を心配しておった。顔を見せてやれ。」
「そうさせてください。すぐにお会いしたいのですが、大丈夫ですか。」
「ああ。今は部屋にいるはずだ。案内をさせる。おい。誰か。」
「はっ。こちらへ。」
国王の言葉に1人の男性が国王の隣に立った。私は国王に深々と礼をすると、その男性についていった。ザクに会えるという事でアネットがソワソワしているのがわかる。
(ノゾミさん。ザクに会うのなら、替わります。)
(ちょっと待って。その前に試したい事があるの。)
(え・・・・。!!ノゾミさん。まさか・・・。)
アネットが息をのむ。私がやろうとしていることを想像したのだろう。だが、それは杞憂だ。私はそこまで意地悪くはない。
(安心しなさい。別に貴方のふりをしたりしないわ。ちょっと話をして気がつくかを試すだけよ。)
(気づくわけありません!!それに、万が一ノゾミさんの事を気に入ってしまったら・・・。)
(そこはザクの事を信じてあげなさい。貴方の中の彼は、そんな人なの?)
(それは・・・。違いますけど。)
(なら安心て見ていなさい。それに私の事を話すいい機会だしね。)
そんな話をしながら、私はザクの部屋の前に案内された。連れてきてくれた男性がドアをノックする。
「はい。」
「ルスクです。セレナーデ侯爵令嬢をお連れしました。」
「!!入ってくれ。」
ルスクと名乗った男がドアを開けてくれる。私は彼にお辞儀をして部屋に入った。
部屋を見渡す。ザクの部屋は綺麗な部屋だった。真正面に机と椅子がありザクがそこに座っていた。どうやら書類と格闘しているようだった。周りには本棚がいくつかあり整理整頓されている。
ザクは顔をあげて、私を見ると嬉しそうな顔をして立ち上がった。
「アネット!!帰ってきたんだな!!無事なんだな!!」
「ご心配おかけしました。怪我一つありません。」
「・・・?」
ザクは私の目の前まで来たが、そこで立ち止まると私の事をじっと見た。私も見つめ返す。彼は首をかしげると私の後ろに立っている、ルスクを見た。
「すまない。ちょっと2人で話したい。ちょっと席を外してほしい。そうだな。紅茶を用意してもらえるか。」
「わかりました。」
ルスクは頷くと、礼をして部屋を出ていった。私に気を使ってか、扉は開けっ放しだ。
「少し話したい。そちらに座ってくれ。」
ザクが部屋の中にあるソファーをさす。私は頷いてそこに座った。彼も向かいのソファーに座る。ザクは私を見つつ、複雑な表情を浮かべていた。
「ルスクが戻ってくる前に1つだけ聞いておきたいんだがいいだろうか。」
「どうぞ。」
「変な事を聞くんだが・・・。君はアネットでいいんだろうか?」
(!!)
「・・・どういう意味でしょうか。」
私はザクを賞賛しそうになるのを必死に抑えこんだ。アネットの見込み通りだ。彼は気づいた。
私の言葉にザクは困ったような表情を浮かべた。彼自身も困惑しているのだろう。
「いや・・・。どうも雰囲気が違う気がして・・・。なんと言えばいいのだろうか。私の心が君とアネットは別人だと叫んでいるんだ。こんな風に思うのは初めてで俺自身も戸惑っている・・・。」
そう言い、彼は再び私をじっと見つめた。私は笑顔を浮かべる。もう充分だ。種明かしをしても問題ないだろう。私はザクを見て頷いた。
「いいえ。イザーク殿下の感覚は間違っていませんよ。」
「!!」
「初めまして。私はノゾミと言います。アネットの身体にお邪魔しております。」
「身体に・・・お邪魔している?」
ザクは不思議そうに首をかしげる。まあいきなりそんな事を言われても意味がわからないのもしょうがない。そこは補足する必要がある。
「ええ。二重人格などではありません。別の人間の魂がアネットの身体にお邪魔しています。」
「そんなことが・・・。じゃあ。戦争に出たのは。」
「私です。アネットは誰も殺していませんよ。」
「そうか・・・。」
ザクはため息をついて、ソファにもたれかかった。戦争は人を殺す可能性がある。覚悟はしていたが、出来ればアネットには戦場に立ってほしくなかったのだろう。私も同意だ。非常時のために魔法は教え込むが、できればアネットには戦場に立ってほしくない。
「私の目標はアネットの幸せです。今回、貴方とアネットが結婚するためには実績が必要だということだったので、手っ取り早くやらせてもらいました。戦争になると、アネットの国も危なかったですしね。」
「そうか・・・。それは助かったが。だが」
「しっ!!」
私はザクの言葉を遮る。耳をすますと、何かがこちらに近づいてきていた。おそらくルスクが紅茶を持ってきたのだろう。
「私の存在はアネットと、セレナーデ侯爵しか知りませんのでそのつもりで。後はアネットに聞いてください。では。」
「ちょ!!」
(交代よ。)
(えっ!!)
私はアネットと交代して奥に引っ込んだ。アネットはいきなり表に出てきてあわあわしている。
そんななか、ルスクが紅茶を持ってきた。アネットとザクの前に紅茶と茶菓子をおく。
「お待たせしました。紅茶と茶菓子になります。」
「あ・・ああ。ありがとう。何かあったら呼ぶから下がっていてくれ。」
「承知しました。」
ルスクはザクにお辞儀をして部屋を出ていった。部屋にはアネットとザクが残される。2人共何を話せばいいのかわからず、しばらく黙っていた。やがてザクが口をひらいた。
「その・・・。アネットなのか?」
「あ、はい。そう・・・です。」
「そうか。俺の心もアネットだと言っている。安心したよ。俺は間違っていなかった。」
「信じてくれるんですか・・・?」
「ああ。俺の心がそう言っているからな。改めてお帰り。無事でよかった。」
ザクがアネットに笑顔を向ける。アネットはそれを見て大粒の涙を流し始めた。それを見てザクが慌てだす。
「アネット!?」
「よかった・・・。私怖くて・・・。ザクは私とは気づかないんじゃないかって。かっこいいノゾミさんの事を好きになるんじゃないかって思って。」
「馬鹿だな。」
ザクはアネットの手を取るとその甲にキスをした。そしてアネットを見て笑う。
「俺がアネット以外の人を好きになるわけないじゃないか。身体は同じだとはいえ、魂が違う。俺は気づいたし、これからも気づくよ。約束する。俺はずっとアネットだけを好きになることを。」
「うん・・・・。うん。」
アネットは泣きながら何度も頷いた。ザクは席を立ち、アネットの方に回ると彼女を力強く抱きしめた。アネットも抱きしめ返す。アネットは声をあげて泣き始めた。ザクはアネットが泣き止むまで、抱きしめていた。
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