11.帰国の途へ
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戦争が終わった後、ガーナードさん達はリンク王子を連れ、国に向けて出発した。私は先立って国に戻る事にした。セレナーデ侯爵達もこちらに向かってきているだろうから、合流して事情を説明しておこうと思ったのだ。国の方に飛んでいくと途中でセレナーデ侯爵達が馬に乗りながら移動しているのが見えた。人数は300名程度だろうか。声を魔法で拡大しながら彼の元へおりる。兵士達は驚いていたが、それを無視して話しかける事にした。
「セレナーデ侯爵。お疲れ様です。状況報告をしてもよいでしょうか。」
「頼んだ。」
「隣国の兵士達は降伏しました。人質として第1王子のリンク王子を捕らえています。現在、彼を連れてこちらに向かっている所です。」
「「「!!」」」
予想外の戦果だったのだろう。兵士達にどよめきがはしる。だが、セレナーデ侯爵は表情を崩さず頷いた。
「わかった。すまないが、一緒に来てくれるか。道すがら詳しい状況を聞きたい。」
「ええ。申し訳ないですが、私は飛びながらで構いませんか。馬には乗れませんので。」
「わかった。」
セレナーデ侯爵は私に向かって頷くと、後ろに振り返る。
「全体に告ぐ!!戦争は終結しているが、油断はするな!!第1隊~第3隊は砦の兵士達と合流し、国に戻る。他の部隊は念のため数日砦で待機だ!!」
「「「は!!」」」
兵士達はセレナーデ侯爵に向かって敬礼すると、再び移動を始めた。だが、先ほどまで張りつめていた空気が穏やかになっていた。当然だろう。戦場に飛び込む予定だったのだ。それがなくなったのだから、安堵しても仕方がない。
私は先導するセレナーデ侯爵の横を飛びながら話をする。彼は私だけに聞こえる形で呟いた。
「ノゾミさんでいいんだな。」
「ええ。彼女に人殺しをさせるつもりはありませんでしたので。」
「殺したのか・・・。」
「ええ。敵の一部を消滅させました。」
その言葉に彼は何かに気づいたようで、勢いよく顔をあげてこちらを見た。
「まさか、先ほどの大爆発!!」
「あれは溜め込んだエネルギーを解放しただけです。その前に敵兵に一発撃ちこみました。」
セレナーデ侯爵は私の言葉を聞いて絶句していた。何か問題があったのだろうか。首をかしげる。
「何か問題がありましたか?」
「ある。やりすぎだ・・・。確かに被害は最小限で済んだが。最後の爆発は余計だ。我が国にはそれだけの魔法使いがいると宣伝しているようなものだ。」
「それでいいのですよ。怯えさせれば攻めてこないでしょう。」
「他国が同盟を作って、我が国の包囲網を作ったらどうする。」
「その国の1つでも潰してやればいいではないでしょうか。」
「君はいつまでもいるわけではないのだろう。アネットに期待されることになる。」
(!!)
アネットが中で固まっている。確かに、私がいなくなった後に戦争となったら皆がアネットを頼ることになるだろう。
「そこはそうならないように王様の手腕に期待させていただきます。それに、アネットには先ほどの魔法を教え込みますよ。使えるようにさせます。」
(ええ!!)
(当り前でしょう。今までも私が使った魔法は覚えさせてきたじゃない。当然今回のも覚えてもらうわ。)
(無理ですって!!あんなの使えません!!)
(泣き言言わない。イザークと結婚するんでしょ。そのために利用できるものは利用しなさい。)
(う~。)
アネットは不満げだったが、私は無視した。セレナーデ侯爵の方を向き直る。セレナーデ侯爵の顔はどこかき攣っていた。
「アネットは納得しているのか。」
「納得させます。彼女は殿下と結婚するんですから。これくらいはやってもらわないと。」
私は満面の笑みを浮かべる。セレナーデ侯爵はそれを見て深いため息をついた。
「ほどほどにしてやれよ。」
「善処はします・・・。なにはともあれ、これで結婚のための実績が作れたでしょう。」
「実績にしては極端な気がするが・・・。」
「まあまあ。いいじゃないですか。さ。行きましょう。」
そう言って、私は話を打ち切った。セレナーデ侯爵もそれ以上は突っ込んでこなかった。
それから1日かけて砦に向かって移動した。砦に向かう途中でガーナードさんと合流した。ガーナードさんはこちらに気がつくと、馬からおり、出迎えてくれた。
「ガーナードさん。」
「おお。アネット侯爵令嬢。無事合流できたか。」
「はい。無事に合流できました。こちら、セレナーデ侯爵です。」
「セレナーデだ。貴公が砦の守護隊長か。」
「はっ!!ガーナードと申します。」
ガーナードさんは馬からおりると、セレナーデ侯爵に向けて敬礼をした。セレナーデ侯爵も頷く。
「よくぞ我が国を守ってくれた。礼を言う。」
「いえ。お恥ずかしながら、ご息女が来てくださらなければ、砦は破られていました。彼女には感謝しかないです。」
「いや。自信をもってよい。今まで守っていたのだから。か・・・娘が例外なだけだ。それで、後ろにいるのが。」
「はい。リンク王子です。」
セレナーデ侯爵がガーナードさんの後ろを見るとリンク王子がいた。両端に兵はいたが、縛られたりはせず、1人で馬に乗っている。抵抗する気配も見せない。彼はセレナーデ侯爵を見ると馬からおりて礼をした。セレナーデ侯爵も同じように馬からおりる。
「初めまして。私はリンク・スロースト。第1王子だ。」
「初めまして。リンク王子。お会いできて光栄だ。これから我が国に連れていくが、もうしばらく我慢してほしい。」
「ああ。抵抗する気はない。我が国では、どう頑張ってもそちらの国に勝てない事が分かったからな。」
「?どういうことだ。」
「あんな広範囲の魔法を使えるご息女がいるのだ。しかもその魔法を使えるのは1人ではないという。あの魔法を使える人間が、単身で来られただけで、我が国は消滅してしまう。」
「・・・。」
セレナーデ侯爵がじろりとこちらを見る。だが、私は知らん顔をした。アネットの命を守るためだ。1人殺しても他にもいると思われれば命を狙われることはないだろう。
セレナーデ侯爵はため息をつくと、リンク王子のほうに向きなおった。
「まあ・・・そうだな。抵抗しないでくれるのは助かる。悪いようにはしないので、このままついてきてくれ。」
「ああ。」
リンク王子が頷くのを見ると、セレナーデ侯爵は後ろの兵士達を見渡した。
「全体に告ぐ!!最初に述べた通り、第1隊~第3隊は私と共に、一旦国に戻る。他の部隊は念のため数日砦で待機だ!!」
「「「は!!」」」
兵士達が敬礼した。そして、一部の部隊が砦に向けて移動を開始した。ガーナードさんも砦に戻る事になった。私達はリンク王子を連れて、国へと帰還することになった。
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