10.6人目の攻略対象
数ある作品から本作品を選んでいただきありがとうございます。
「さてと・・・。予想通り、逃げ出さなかったわね。」
(このまま降伏してくれるといいんですけど・・・。)
私は敵陣の目の前に浮かんでいた。敵兵達はどう対応してよいのかわからないのか、私とガーナードさんを交互に見ている。ただ、敵陣に入ったら攻撃される可能性がある。その対策はしておかなければ。
(アネット。ちょっと集中しないといけないから話しかけないでね。)
(はい。わかりました。)
私は再び太陽光を集め始めた。少し暗くなるくらいで集めるのを止める。そのエネルギーを敵陣の真上に移動させた。エネルギーの移動を確認してから、私は地上に降りた。
「ガーナードさん。お疲れ様です。」
「あ、ああ。それにしてもまた辺りが暗くなっているが・・・。」
「ええ。ちょっとした脅しです。」
私は敵陣の方に向くと、声量を大きくさせる。
「今からそちらの陣地に入る!!だが注意されたし!!もし私を害そうとした場合、頭上に待機させてある魔法がこの辺り一帯を吹き飛ばすだろう!!」
「「「!!」」」
私の言葉に周りの味方がぎょっとする。私はそれを無視して、敵兵に視線を合わせる。私が視線を向けたら敵兵は数歩後ずさった。
「そういうことですから。大人しく敵大将に案内してください。死にたくなければ。」
「し、少々お待ちください!!」
そう言って、敵兵の1人が敵陣の中に駆け出して行った。すぐに戻ってくると、こちらに向けてお辞儀した。
「ご案内します!!こちらへどうぞ!!」
「よろしく。さ、ガーナードさん達も行きましょう。」
「あ、ああ。」
私達は敵兵の人に連れられて敵陣の中に入っていった。周りから多数の視線が突き刺さる。当然だろう。私がエネルギーを解放すれば、この敵陣は吹き飛ぶのだから。
奥に行くと、他より大きなテントが見えてきた。そのテントの入り口に着くと、敵兵はこちらを見てお辞儀をした。
「こちらになります!!」
「ありがとう。ガーナードさん。念のため、警戒して開けてもらえますか。」
「わかった。」
ガーナードさんが、警戒しつつ、テントを開けた。魔法が飛んでくるという事もなく、敵兵が詰めているということもなかった。テントの中には数人の人がいるのが見えた。
「ガーナードさん以外は外で待っていてもらいましょう。ガーナードさん。付き添ってもらえますか。」
「勿論だ。」
私の言葉にガーナードさんは頷くと、私達はテントの中に入った。テントの中には大きな机が置かれていた。そしてその周りに3人の人が立っている。そのうちの1人を見て、私は驚いた。
「リンク・スロースト第1王子・・・。まさか王位継承者が指揮しているとは思わなかったわ。」
「!!私の事を知っているのか。」
リンク王子は驚きの表情を浮かべてこちらを見た。勿論私とは初対面だ。だが、こちらにはゲームの知識がある。彼はゲームの攻略対象なのだ。ゲームでは、留学という形で隣国に向かう。そこで、第1王子に会う事ができるのだ。隣国の学校で、彼と交流することで、好感度を上げると付き合う事ができる。そして隣国の王妃として終わるエンドだ。
彼は隣国が世界を征服すべきだと考える人間だ。隣国の王妃になった後は、他国に戦争を吹っかけていくか、彼をなだめて平和の道を探すかを選ぶことになる。傲慢な性格ではないのだが、隣国が世界一と教育されていたためか、侵略することに何の疑いも持っていない。ゲームでは選択肢を1つ間違えると即侵略となってしまう。中々頭が痛い存在だ。
ただ、他のルートを選んだ場合は、隣国が侵略してくるルートはなかった。今回侵略してきたという事は、彼も時戻りをしたからだろうと思ってはいたが・・・。直接指揮をしているとは思っていなかった。
だが当然その事を話すわけない。私は知らん顔で答える。
「こちらも色々情報を仕入れておりますので。それで、改めて問いますが降伏という事でよろしいですね。」
「ああ。だが図々しい願いなのは承知しているが、1つ頼みがある。」
「なんでしょうか。」
「抵抗はしないから捕らえるのは私だけにしてほしい。他の者は解放してもらえないか。」
「王子!!なりません!!」
周りにいた2人が悲鳴に近い声をあげ、王子に詰め寄る。恐らく臣下なのだろう。王子が捕まるのは大きな損失だと考えているのだろう。だが、王子の覚悟は変わらないようだった。2人を手で制した。
「やめろ。ただでさえ、こちらは多くの魔法使いを失っているのだ。お前達までも失いたくない。・・・頼む。この通りだ。」
彼はそう言って頭を下げた。私としても多数の人間を拘束することはリスクがあるからこの願いは渡りに船だった。私は頷く。
「いいでしょう。王位継承者である貴方を拘束すれば充分でしょう。ところで、お三方、ちょっとテントの外に出ていただけますか。ガーナードさんも。」
「わかった。」
隣国の3名は特に抵抗せずテントの外に出た。テントの外にでると、遠くから兵士達がこちらを覗いていた。私は辺りを見回す。
「ここにいる者達につぐ!!リンク王子は降伏された!!彼の身柄を拘束することで貴方達は解放される!!ただし、彼の行動を無為にするような行為をしようとした場合!!」
私は空を見上げる。そこには先ほど溜め込んだエネルギーが存在していた。それを高く移動させて解放させた。莫大なエネルギーが解放され、大爆発を起こす。
「「「「!!」」」」
巨大な爆発が空中で起こった。爆風でテントが大きく揺れる。かなり上の方に持って行ったので、地上には何も影響なかったが、上空には、存在していた雲が全てなくなっていた。
全員が言葉を失っている。私はもう一度全員を見渡した。
「今の魔法が諸君を襲うだろう!!それだけではない!!この魔法を貴方達の国で放つことになる!!地図から貴方達の国が消える事になるだろう!!」
「「「「!!」」」」
効果は絶大だった。隣国の兵士達全員が顔を引きつらせる。やがて、1人が武器を地面に捨てた。それを見た兵士達が次々と武器を地面に捨てる。兵士全員が武器を捨てたのを見ると、私はリンク王子を見る。
「それでは、行きましょうか。副官が残るのであれば、引き上げてくれるでしょう。」
「ああ。だが、拘束等はしなくてよいのか。」
「ええ。貴方はそこまで愚かではないですから。もし何かしようとしたのであれば、先ほどの言葉通り、貴方の国は地図から消える事になります。この魔法を使えるのが私1人だけだとお思いで?」
「!!私は世界を知らなかったのだな・・・。」
そう言い、リンク王子はがくりと肩を落とした。まあ、最後の言葉はもちろん嘘だが。こんな凶悪な破壊魔法が使える人が何人もいたら世界は一瞬で滅ぶ。だが、アネットを守るためには嘘も方便だ。
(ノゾミさん。これで終わったんですか。)
(ええ。これで戦争は終わるわ。疲れたわ。)
戦争とはいったが、実際は小競合いレベルで方がついてしまった。だが終わりは終わりだ。一段落ついて、私は深いため息をつくのだった。
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