6.国王陛下との面会
数ある作品から本作品を選んでいただきありがとうございます。
ザクが実家に来てから1週間後、国王と面会することになった。まだザクが王太子になることの正式発表はしていないため、非公式の訪問だ。アネットはセレナーデ侯爵と共に城へ向かった。城に着くと、兵士に案内され、城の中の一室で待たされる。緊張しているアネットを見て、私は声をかける。
(ザクと一緒になれるかが今日決まるのね。頑張りなさい。)
(うう・・・お腹痛い・・・。)
(何?替わる?)
(いいえ。ここは私がやらないといけませんので・・・。)
(そうね。その通りだわ。)
アネットの言葉に私は頷く。アネットはザクとのために頑張ろうとしている。それであれば私としては応援するだけだ。
そんな話をしていたら、部屋の扉が開き、ザクと国王陛下が現れた。アネットとセレナーデ侯爵は立ち上がり、頭を下げる。
「よい。楽にせよ。」
国王が、手を振り2人の向かいの席に座る。それに続いて、2人も頭をあげ、席に座った。
「国王陛下。ご健康そうで何よりです。」
「嫌味か?数日前も隣国との境界の件で話し合ったばかりであろう。」
「そうでしたな。」
セレナーデ侯爵の嫌味に国王が苦々しい顔をする。対してセレナーデ侯爵は涼しい顔だ。国王は溜息を吐くと、口を開いた。
「早速本題に入ろう。イザークの婚約についてだ。イザークと婚約を結びたいという娘がそなたか。」
「ひ、ひゃい。アネット・セレナーデと申します。」
緊張しているのか、アネットが噛みながら頭を下げる。それを国王は厳しい顔で見ていた。ザクが国王に向きなおる。
「父上。先日話した通りです。アネットは家の格、人格的にも申し分ありません。反対する理由はないかと。」
「セレナーデ侯爵よ。そなたは1人娘だったな。跡継ぎはどうする。」
「何。養子でもとりますゆえご心配なさらず。重要なのは娘が好きな相手と添い遂げる事ですので。」
「お父様・・・。」
アネットが感極まった表情をしてセレナーデ侯爵を見る。彼はアネットを優しく見ながら微笑んで、頷いた。国王はそんな2人の様子を見ていたが、やがてアネットを見て口を開いた。
「では、セレナーデ侯爵令嬢よ。そなたに問う。」
「ひ、ひゃい!!」
「次期王妃というのは好きだけでは出来ない。知識も教養も度胸も無くてはならぬ。それがそなたに出来るか。」
「はい。」
アネットは躊躇わず頷いた。その反応に皆が驚く。
「ほう・・・自信があるのか。」
「いえ・・・。自信はありません。ですが、私は1人ではない。1人で抱え込む必要がないと教えてくれた人がいました。そして私を支えてくれる人がいます。その人達がいる限り、私は頑張れます。」
「アネット。」
ザクがアネットを見て嬉しそうに頷く。セレナーデ侯爵も娘の成長を見て泣きそうな表情を浮かべていた。
だが、国王はアネットを見てため息をついた。
「そうか・・・。気持ちは分かった。結論から言おう。そなたをイザークと結婚させるのは難しい。」
「!!」
「父上!!」
ザクが今にも国王につかみかかる勢いで立ち上がる。対してセレナーデ公職はその言葉を聞いても冷静だった。
「理由があるのでしょう。聞かせてください。」
「セレナーデ公職は理解が早くて助かる。イザークも一旦落ち着け。話を最後までに聞くのだ。」
「・・・はい。」
ザクは悔しそうに席に座り直す。国王はそれを見るとアネットの方を見た。
「まずセレナーデ侯爵令嬢。誤解させてしまったかもしれないから先に伝えておく。1人の父親としては、イザークの望んだ相手と結婚させてやりたい。」
「はい。」
「だが、私はこの国の王だ。私情を挟むわけにいかぬ。」
「はい・・・。」
「さて、何故お主と結婚させることができないかだが。一言で言うと、権力の集中だ。」
「権力の集中・・・ですか?」
首をかしげるアネットを見ながら国王は頷く。
「ああ。セレナーデ侯爵は侯爵家であるのに加え、魔法軍団の名誉顧問でもある。他の侯爵家より一歩抜きんでているのだ。その上、娘が王家の者と結婚したとなると、発言力が強くなりすぎる。」
「国内のパワーバランスが崩れるという事ですか。」
「話が早くて助かる。セレナーデ公職の発言が王族の言葉と同じと思われると、反発が生まれる。」
「じゃあ・・・私とイザーク殿下と結婚するのは無理なのですね・・・。」
「いや、そうとは限らない。」
項垂れたアネットを励ますように、セレナーデ侯爵がアネットの手を握った。顔をあげたアネットを見て優しく微笑む。
「お父様?」
「お前の覚悟はそんなものではないだろう。まだ諦めるには早い。」
「ですが・・・。」
「どうするつもりだ。」
国王の言葉にセレナーデ侯爵が顔をあげる。国王とセレナーデ侯爵の視線が交じり合った。
「まず、最初に権力の集中。これをなくします。私が魔法軍団から完全に手を引きます。」
「それは出来ぬ。お主はこの国の防衛力の要だ。」
「今回の隣国の件が片付くまでは手伝いますが、それ以降は手伝いません。いい加減我々も世代交代をしなければいけない時代です。」
「そうは言うが・・・。」
セレナーデ侯爵はアネットを優しい表情で見る。
「後は、お前次第だ。アネット。」
「私次第・・・ですか?」
「ああ。後はお前自身がイザーク殿下の隣にいられるように実績を立てるんだ。」
「実績・・・ですか?」
「ああ。周りの人間が文句を言えないレベルの実績を打ち立てるんだ。別に武力の実績である必要はない。魔法の論文でも、学校の成績でもいい。イザーク殿下に相応しいと思われるようなものを。」
「それは・・・。」
「なあに。今すぐというわけではないよ。私も手伝うから。イザーク殿下も心変わりしたりしまい?」
セレナーデ侯爵がじろりとザクをじろりと見る。ザクはそれに応えるように力強く頷いた。
「もちろんです。私の思いが揺らぐことはありません。アネット。私も手伝う。皆で頑張ってみないか?」
「はい!!」
アネットは嬉しそうに頷く。ザクはアネットの両手をゆっくりととると、その手を自分の額に持っていく。
「あ~。コホン。すまないが、2人の世界に入るのはやめてもらってもいいかな。」
「!!」
国王の言葉にぱっと2人が手を放す。お互い顔を赤くしながら顔を逸らす。
(やれやれお熱いわね。まあ、論文とかで良いのなら簡単だから安心しなさい。私が持っている知識をいくつかだせば、それで論文をかけるわ。)
(本当ですか!?)
(ええ。さっそく今日から論文の内容を・・・。)
2人で話をしていると、遠くから誰かがこちらに向かってくる足音が聞こえた。足音は部屋の前で止まると、勢いよく開いた。部屋に現れたのはこの国の兵士だった。
「失礼します!!」
「何事か!?」
「敵襲です!!隣国が!!宣戦布告と同時にこちらに攻めてきました!!」
「「「!!」」」
それは開戦の知らせだった。
作品の励みになりますので、評価・リアクション等をいただけると幸いです。また他短編なども投稿しておりますので、お暇がありましたら読んでいただけると幸いです。




