5.全てを話して
数ある作品から本作品を選んでいただきありがとうございます。
「以上が、私が時戻り前に歩んだ人生です。」
そう言ってアネットは頭を下げた。長い話だった。最初に会った時に聞いた話よりかなり長い。私も知らない事がかなりあった。時戻り前に生きて感じた、彼女の想い、行動を知ることができた。セレナーデ侯爵とジルも辛そうな顔でアネットを見ていた。
「そうか・・・。これで愚兄への行動にも納得がいった。」
「アネット・・・。辛かったな・・・。」
セレナーデ侯爵がアネットを抱きしめる。セレナーデ侯爵は泣いていた。私からも概要は聞いていたが、本人から聞くと話の重さも違う。
「そうして、私は時戻りをしました。原因は不明です。そして私は私以外に時戻りをした人がいるのを知りました。私の考えでは時戻りをした人は7人いると考えています。確証はありませんが・・・。」
「7人もか!?」
「そういえば、私も詳しく聞いたことは無かったな。いったい誰だ。」
驚く2人に対し、アネットは7人の名前をあげた。既に本人から確証を得ているメンバーと推測の2人。アネットが挙げたメンバーに2人の表情は複雑そうだ。
「なるほど。隣国が好戦的なのも納得がいく。未来の魔法の知識があるからか。」
「恐らくは・・・。」
「だが、最後の1人は何故だ?会った事も無いし、伝説上の人物とも思われているが・・・。」
「それは・・・なんとなくとだけ。確証はありません。」
アネットは言葉を濁す。まあ私が理由を説明していないから説明できないのは当然だ。ゲーム上の彼女の攻略対象が時戻りをしているといっても理解出来ないだろうし。そこはずっと伏せるつもりだ。
ザクはアネットの目をまっすぐ見つめて頭を下げた。
「ありがとう、アネット。辛い思いをしていたんだね。」
「信じて・・・くれるんですか?」
「信じるとも。何度も言うが君の言葉なら僕は信じる。」
「ザク・・・。ありがとう。」
「うぉっほん!!」
「「!!」」
ザクとアネットが2人の世界に入ろうとしているのをセレナーデ侯爵が咳をして引き戻す。ザクとアネットは顔を真っ赤にして顔をそらした。ザクはセレナーデ侯爵をまっすぐ見つめた。
「私の迷いは完全に消えました。セレナーデ侯爵。改めてお願いしたい。アネットと婚約をさせてください。」
「お父様。お願いします。」
ザクとアネットがセレナーデ侯爵に向けて頭を下げる。セレナーデ侯爵は苦々しい顔で2人を見ていた。
「・・・条件がある。」
「「条件?」」
「セレナーデ家と王族が対等な条件で国王に婚約を認めさせることだ。そうすれば2人の婚約を認めてもいい。」
「「!!」」
アネット達は顔をあげる。どちらにしろ国王を認めさせなければいけないのは変わらない。それに、対等な条件と言うのは難しいと思う。
「アネットの回復魔法や呪いの解呪を使うのが条件だったり、私が隣国との境界線に行くのが条件だった場合は絶対に承諾しない。」
「はい!!必ず、必ずや父上に認めさせます。」
「ありがとう!!お父様!!」
アネットがセレナーデ侯爵に抱き着く。彼はアネットの頭を優しくなでながらザクを睨みつけた。
「いいな。アネットを泣かせるなよ。泣かせたら許さん。」
「はい。約束します。」
ザクはセレナーデ侯爵の視線を真正面から受け止めて、頷いた。
それからザクとこれからの事を話した。国王への面会のタイミングについてや、今後のデートについてなど。ザクはアネットの1つ下なので、来年から学園に通うことになるが、それまではお茶会等で会うことになるだろう。時戻りの事を話したことで、隠し事が1つ減ったのが嬉しいのか、アネットは嬉しそうに笑っていた。それを眺めるセレナーデ侯爵は寂しそうだったが。ただ・・・。
(結局、アネットやセレナーデ侯爵は私の事を喋らなかったのね。ま、いずれ私の事も話す事になるでしょう。それまではいいでしょう。)
そう。アネットは私の事を喋らなかった。話すかどうかは任せると言ったが、今は話さないことにしたらしい。自分だけを見てほしかったのかもしれない。何はともあれ、1つの山場は終わったのだった。
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