7.開戦
数ある作品から本作品を選んでいただきありがとうございます。
「状況を報告せよ!!」
「は!!隣国は我が国との境界から5km離れていたところに陣取っていましたが、先ほど一方的に我が国に宣戦布告をし、こちらに進軍を開始しました!!」
「このタイミングで仕掛けてきたか・・・!!」
国王はセレナーデ侯爵と頷きあうと2人共立ち上がった。
「申し訳ないが、話は終わりだ。セレナーデ侯爵。早速で悪いが、魔法軍団を連れて援軍に向かってくれ。非常招集をかければすぐに集まるように指示してある。時間が勝負だ。」
「承知しました。」
「イザーク。我々は緊急会議だ。お前にもでてもらうぞ。」
「承知しました!!」
イザークが力強く頷く。皆が盛り上がっている中アネットはおろおろしていた。
(面白いわね。)
(ノゾミさん?)
(アネット。申し訳ないのだけど、ちょっと替わってもらえない。うまくいけば実績の話も一気に解決するかもしれないわ。)
(いいですけど・・・。ノゾミさん。何か変な事考えていません?)
(大丈夫。まあ、任せておきなさい。)
アネットと切り替わると、私は国王に近づいた。
「国王陛下。」
「おお。セレナーデ侯爵令嬢。すまないが、話はきりもいいしここで終わりだ。お主は送ってもらいなさい。」
「いえ。その心配は無用です。単刀直入に聞きますが、隣国を退ければ、実績としては十分ではありませんか?」
「アネット?」
ザクが不思議そうにこちらを見る。国王も厳しい目つきで私を見る。
「・・・セレナーデ侯爵令嬢。何を考えている?」
「いえ。私には私ができる事をしようかと。それでどうです?隣国を退ければ充分じゃありませんか?」
「・・・確かにそれであれば実績として問題ないだろうが。まさかセレナーデ侯爵についていくつもりか?馬を飛ばしたとしても数日はかかる距離だぞ。」
「まさか。私は1人で行きますわ。」
「アネット!?」
セレナーデ侯爵がぎょっとした顔で私の方を見る。私は優しく微笑んだ。
「セレナーデ侯爵。私は先に行きますので、後から来てください。」
「!!もしや、君はノゾ」
「それ以上は駄目ですよ。セレナーデ侯爵。それで、隣国が攻めてきている方向はどちらになりますか?」
「・・・。」
セレナーデ侯爵は、部屋の窓を開けると、窓の先の一方向を指指さした。
「この方向だ。だが、数十kmは先だ。頼むがくれぐれも無理は・・・。」
「勿論です。身体に傷一つつけずに帰りますわ。」
「ア、アネット・・・?」
ザクが恐る恐る私に声をかける。私の雰囲気が違う事に気づいたのかもしれない。私はザクを見て微笑んだ。
「イザーク殿下。ご心配なく。お互いできる事を頑張りましょう。」
「あ、ああ。」
「それでは。」
私は窓に近寄ると魔力眼を開き、風魔法を発動させた。そして、風魔法を使って勢いよく窓から飛び出した。
「アネット!!」
ザクが叫ぶ声が聞こえたが、それを無視し、私は高速で移動する。飛行魔法が使える事は既に実験済だ。空気抵抗を最大限に減らすように結界を張りながら飛んでいるので、かなりの速度で移動できている。これならば、1時間もかからずに到着できるだろう。
(ノゾミさん!!本当に戦場へ向かうのですか!?)
(ええ。この国は私が守るわ。この国が蹂躙されれば貴方の幸せどころではないもの。)
(でも。勝算とかあるんですか?)
(当り前よ。現実世界で替わってもらった時、色々魔法を試させてもらったでしょ。それで使える魔法は確認済みよ。)
(人を・・・殺すんですか。)
アネットは恐る恐る聞いてくる。私は頷いた。
(ええ。恐らく殺し合いになるわ。勿論降伏してもらえればそれが一番だけれど。そうならないとは思うわ。)
(・・・。)
アネットはその言葉に黙り込む。アネットには辛い現実だ。だが、放置していればこの国は甚大な被害をうける。ザクやセレナーデ侯爵も無傷で帰ってくるとは限らない。そんな事は防がなければ。
(貴方は見なくていいわよ。籠っていなさい。)
(いいえ。ザクと一緒に歩むと決めたからには、私も目を逸らしちゃいけないと思うんです。)
(そう・・・。本当に貴方は強くなったわね。)
(いえ・・・。私なんてまだまだです。)
(いいえ。胸を張りなさい。さて、話はここまで。もう少し加速するから集中するわ。大人しくしてなさい。)
(はい・・・。)
アネットの答えを聞いて、私は風魔法を強化して、速度を上げた。
結果として1時間もかからないうちに私は国境の砦に着いた。いきなり中に降りると混乱すると思い、砦の前に降りた。砦の向こう側では、既に戦闘が始まっているらしい。怒号が飛び交っている。
「おい!!お前は何者だ!!何が目的でここに来た!!」
いきなり、空から私が下りてきたことに驚いているのだろう。砦の門番の警備兵が剣をこちらに向けている。私は堂々と名乗りをあげることにした。
「私はセレナーデ侯爵の娘、アネット・セレナーデです!!隣国の敵を殲滅させるため、助力に来ました!!」
「あのセレナーデ侯爵の娘・・・だと。この辺りにいたのか?」
「父もこちらに向かっていますが、他にも兵を連れているため時間がかかります。そのため、私が単独できました!!指揮官に合わせてもらえないでしょうか!!」
「だが・・・。」
私が本物なのか信じられないのだろう。だが、今は問答している時間はない。私は声を張り上げた。
「今は時間との勝負!!私が敵だったら空中から魔法を撃てば潰せたのはわかるでしょう!!私が参戦すればこの事態を解決できる!!急いで!!」
「!!開門!!」
私の言葉に納得したのか、門番が開門を叫ぶ。本来であれば、この行動は懲罰ものだ。見ず知らずの人間を砦の中に入れるなどありえない。だが、藁にもすがりたかったのだろう。
すぐに門が開けられた。私は開けられた門をくぐる。
中は人が目まぐるしく動いていた。その人達の邪魔をしないように私は砦の一番上に移動する。そこに、指示を出している人がいた。その人に近づく。彼は私に気がつくとすぐに剣を抜けるように構えをとった。私の一挙手一投足を見逃さないようにしている。私も必要以上には近づかず、立ち止まった。
「誰だ君は。」
「セレナーデ侯爵の一人娘。アネット・セレナーデです。無駄話はやめましょう。単刀直入に言います。私の魔法で敵軍を壊滅させていいですか?」
「!!」
私の言葉に周りが一斉にこちらを見る。指揮官らしき人が一瞬驚いた顔を浮かべたが、すぐに元の顔に戻ると、ため息をついた。
「セレナーデ侯爵の娘殿か。私はここの指揮官をしているガーナードだ。こちらも単刀直入に答えよう。やれるものならやってくれ。こちらは猫の手も借りたいくらいだ。」
「今敵はどのあたりに?」
「500m先に魔法使いの部隊が陣取っている。向こうは長距離魔法を開発していたようでな。無理に攻めようとせず、長距離魔法をひたすら撃ってくる。こちらからは魔法が届かず、防御に専念するしかできない。だが防御魔法は魔力消費が激しく、魔力が切れるのも時間の問題だ。」
防御魔法は、攻撃魔法よりも魔力消費が激しい。防御魔法は結界を作らなければいけなく、魔法を逸らせない場合、真正面から受け止めなければいけないからだ。長距離魔法の場合、ある程度の距離では威力が弱まることはない。そのためフルパワーの魔法を毎回受け止めるのは、術者の魔力と精神力ががりがり削られていくのだ。
「なるほど。都合いいですね。500m先の敵を全滅させればいいわけですね。」
「可能なのか。」
「見ていてください。論より証拠。駄目だったらまた考えましょう。」
「・・・わかった。」
ガーナードは渋々といった形で頷いた。私は砦の外壁の上から敵を見下ろしながら私は不敵に笑った。
「さあ。潰しましょう。私にはむかう敵は全て叩き潰す。」
作品の励みになりますので、評価・リアクション等をいただけると幸いです。また他短編なども投稿しておりますので、お暇がありましたら読んでいただけると幸いです。




