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「コトネ!!おかえりー!待ってたよー。」
サララと別れ屋敷へと帰宅したコトネを待ち伏せするように、ミーヤは入り口で仁王立ちしていた。
ミーヤはぴょんぴょんと飛び跳ねながら近づいてきてするりとコトネに腕を絡ませた。
「どうされたのですか?ミーヤさん。」
「コトネにお願いがあるの。」
「はい、なんでしょう?」
「あのっ………シギーからお魚料理食べに行こうって誘われて…………ひとりで行くのが恥ずかしいから、コトネについてきて欲しいの…………。」
ミーヤもじもじと恥ずかしそうにスカートの裾を引っ張っている。
(シギーさん誘えたんだ。でもデートって言ってないのかな………)
「ミーヤさん、それって絶対私がついて行っちゃっだめなやつです。」
「えっ、そうなの?楽しくご飯が食べたいって言われたからコトネが居ればもっと楽しいかなって…………」
(嬉しいけど、でも……シギーさん、これぜんぜんデートだって伝わってないですー!!)
「ありがとうございます。でも、きっとシギーさんはミーヤさんとふたりで行きたいと誘ったのだと思います。」
「でも、でもっ、わたしシギーとふたりだと意地悪なコト言っちゃったり。ひっかきたくなっちゃう。」
ミーヤは俯いて手のひらをぎゅっと握る。
コトネはそんなミーヤが愛らしいと、撫でたい衝動を抑えながら伝える。
「ミーヤさんはシギーさんのことが苦手ですか?」
「ううん、イ…ヤじゃないけど。いつも意地悪言ってくるから。わたしも同じよう返しちゃう。」
「なるほど。喧嘩するほど仲がいいとも言いますけど。」
「…………………私、他の人と話してもこんな風にならないのに、シギーだけは思うようにいかないの。」
目の前に居るミーヤにもしも猫の耳があったならぺたんと伏せてしまってもいることだろう。
(たぶん、それはシギーさんがちょっかいをかけすぎるせいなのだろうけど、私が伝えていいことなのか…………?)
コトネは、なんとか彼女の力になれないかと考えを巡らせた。
(ミーヤさんを前向きな気持ちで、デートに送り出したいけど、どうすればいいだろう。送り届けるのはいいけどそれ以上は邪魔をしたくないし。ミーヤさんはシギーさんと普通に楽しく話せるなら安心できるよね。うーん、ミーヤさんがいつもと違う装いをすればシギーさんも動揺して余計なことを言わないのでは…………!)
「例えばですけど、シギーさんと仲良くできるならなりたいですか?」
「う………ん。」
「………あの、ミーヤさんにはご存じないと思いますが…………私は異界の出身でして。」
「そうなの!?」
「はい、それで私、異界の魔法が少し使えるんです。この世界の魔術とはちょっと違うのですが。試してみませんか?」
「コトネ、魔術が使えるの?すごいっ!!」
目を輝かせて驚いてくれるミーヤにコトネはもちろん噓ですけどね、と心の中で呟いた。
そして、言われるがまま素直に後をついて来るミーヤをこの街で可愛い物を多くを取り扱っている洋服屋の試着室に放り込んだ。
「ミーヤさん、とりあえず上はコレと下はコレとコレに着替えてください。」
「えっ!?えっ?」
戸惑うミーヤに洋服を押し付けカーテンを閉める。
あ、う、。と困惑の声とともに衣擦れする音が聞こえてきた。
着替えたよ、と弱弱しい声とともにミーヤは顔を出した。
「変じゃないかな…………。」
ミーヤは不安げであったが、コトネも洋服屋の店員も何度も頷きながらミーヤを褒めた。
黒いワンピースはウエストにリボンが付き、袖口は異素材の赤と黒のチェックでボリューム感もある。足元はシンプルな黒のショートブーツだ。
華奢なミーヤにとても似合っていたし、今から待ち合わせる真っ黒な洋服しか選ばない男と統一感は出そうだ。
コトネは店員とともに、可愛いですよね、これなら髪型はどうしましょうか、と相談を始めた。
髪型もいつものツインテールから髪を下して緩く一つの三つ編みにしてサイドに流す。
会計の際にミーヤが慌て財布を出したが、この店レンタルができて気に入れば購入ができることを言い、それから今回は何も伝えず連れてきたのだ、コトネが支払うことを伝える。
「ミーヤさん、ここで異界のおまじないをしましょう。」
「おまじない?」
「はい。今のミーヤさんはこの街で一番可愛いいです。だから今日はいつもより素直になれます。」
「すなおに、なれる?」
「はい、そうです。素直にです。」
コトネの言葉を復唱してミーヤは何かを考えている様子だ。
「さあ、行きましょう。待ち合わせの時間ですよ。」
コトネはミーヤの腕を引いてシギーの待つ店の前までエスコートする。
この街で一、二を争う魚料理の有名なレストランの前にシギーは立っていた。
華やかなレストランの前に立つシギーは相変わらず全身真っ黒で高身長であるが猫背である為どこか所在なさげに見えた。
シギーはミーヤの姿を確認すると呆けた様になり固まる。
そんなシギーの前にするりとコトネはミーヤを押し出した。
「シギーさん、ミーヤさんのエスコートよろしくお願いいたします。」
コトネは笑顔でそれでは、と付け加えるとその場を後にした。




