4/田町みさお –7 大親友
「──……さお、ちゃん!」
「……!」
はっと目を開く。
「僕、どのくらい寝てた……?」
「えっと、三十秒くらい。みさおちゃん、大丈夫……?」
ほのかちゃんが僕の額に手を当てる。
「……うん、大丈夫。徹夜が響いたのかな」
「ほんど、何度もじんぱいがげでー……!」
僕の体にすがりついていたさえちゃんが、涙混じりにそう言った。
「ごめんね……」
さえちゃんの髪を、そっと指先で梳く。
「……歌音」
「うん?」
「決めたよ」
歌音の目を見て、言う。
「僕は、戻らない。このまま生きる」
戻れない。
本当は、そう言うのが正しい。
でも、これは僕の選択だ。
仮に、やっぱり戻れますなんて言われたとしても、僕は首を横に振るだろう。
「……そっか。わかった」
歌音が、嬉しいような、寂しいような、そんな笑顔を浮かべた。
「ウエディングドレス、どうする?」
「それは、着るよ。化粧、お願いできる?」
「わかった」
「──あ、お化粧なら、お姉ちゃんにすこし習ってます」
ほのかちゃんが、そう言った。
「そうなんだ。あたし、そんなに得意じゃないから、栗生さんにまかせちゃっていいかな」
「はい!」
嗚呼。
僕の行動は、何も知らない二人からしてみれば、ただの奇行だ。
にも関わらず、真剣に手伝ってくれる。
最高の親友だと思った。
でも、それだけじゃ足りなかった。
満足、できなかった。
「……あの、さ」
「うん?」
「どうしたの、みさおちゃん」
「……あの、ね。自分から言うの、はず、……恥ずかしいんだけど。親友、じゃなくて……」
口が震える。
涙が溢れる。
みさおちゃんと話してるときは平気だったのに。
なんで二人を前にすると、僕はこんなに泣き虫になるんだろう。
「……だ、……大親友がいい、……な……」
ぼろぼろと涙をこぼしながら、二人の答えを待つ。
「……うん」
ほのかちゃんが、僕の頬に手を添えて、親指で涙を拭う。
「みさおちゃんとさえちゃんは、私の大親友だよ」
「うちも……!」
さえちゃんが、僕の手を握る。
痛いくらいに。
「うちも、みさおと穂乃香の大親友、だから……!」
さえちゃんの目にも、僕と同じくらい大粒の涙が浮かんでいた。
「……だから! もう、無茶はしないで……」
僕は、二人を抱き締めた。
短い腕で、必死に。
「……うんッ! も、……もう、しないから……」
そして、大親友の二人と一緒に、思うさま泣いた。




