4/田町みさお –5 真相
肩を揺すられる。
「……ん、あ……」
どうやら意識を失っていたらしい。
早く、ウエディングドレスを。
焦燥感で目蓋を開く。
「──…………」
「……みさおちゃん」
僕の視界に、さえちゃんとほのかちゃんの姿があった。
「え、な、なんで──」
「なんでじゃないよ……ッ!」
さえちゃんが、僕を抱き締める。
「二日も勝手に休んで! メッセ送っても返してくれないし……」
ほのかちゃんが眉をひそめ、かわいらしく僕を睨む。
「……私、ちょっとだけ怒ってるんだからね」
「ご、ごめん……」
嗚呼。
嗚呼。
会う気はなかったのに。
あのまま別れるつもりだったのに。
「──…………」
歌音が、そっと口を開いた。
「……あたしは、やっぱり会うべきだと思った。あのままなんて、だめだよ」
「──…………」
「たとえ、元に戻ったとしても。あたしがおじさんを認めたように、二人だって認めてくれる。そう思うから」
違う。
違うんだ、歌音。
僕は元の姿に戻ろうとしてるんじゃない。
歌音は、僕が必死にウエディングドレスを作っているのを見て、安心したんだろう。
僕が必死に生き返ろうとしていると解釈したのだろう。
でも、違うんだ。
僕は。
僕は──
バツン!
唐突に意識がシャットダウンする。
視界が、闇に包まれた。
──やっと
──やっと、繋がった……
声がする。
どこか懐かしい声だった。
「君、は……?」
──田町みさお、です
「そう、か。君が……」
──はい
「悪いけど、僕はもう止まらない。君が何を言おうと、この体を君に返す。そう決めたんだ」
──止めは、しません
──私は、ただ、無理をしてほしくなかっただけ……
──私のわがままに、付き合わせたくなかっただけ
「……あんなのは、わがままじゃないよ。当たり前の願いだ。子供に、当たり前に与えられるべきものだ」
見えるかどうかわからないけど、肩をすくめる。
「まあ、ウエディングドレスはちょっと骨が折れたけどね。相手も用意できなかったし」
──…………
──キツネコさまが、あんなことになってしまったから
──すべて、お話します
──私の、罪を
「罪……?」
──美佐夫さん
──あなたを殺したのは……
──……私、なんです
「──…………」
不思議と驚きはなかった。
怒りもない。
ただ、そうなのかと、他人事のように思っただけだ。
──私は、ずっと、死にたかった
──お父さんとお母さんのところへ行きたかった
──でも、本当に死ぬ勇気はなくて……
──毎日、ただくすぶっていました
わかるよ。
わかる。
僕もそうだったから。
──ある夜、本当に限界が来て
──どこかから飛び降りようと思って、山道へ行きました
──でも、思い切れなくて……
──よさそうな場所を探すうちに、いつの間にか、あの祠まで来ていたんです
──私が野花を供えて死にたいと祈ると、頭を叩かれました
──こりゃ、って
──キツネコさま、でした
──キツネコさまは、私の心を読んで……
──それなら、すこしのあいだ別の人間になってみたらどうだと言いました
──私は、自分のことが、嫌いで嫌いで仕方なかったから
──自分じゃない誰かになれるのなら、と思って、幾晩かを祠の傍で過ごしました
──キツネコさまと、いろんな話をして……
──そして、あの日
──酔っ払った美佐夫さんが通り掛かったんです
「──…………」
──キツネコさまが、えいやって私と美佐夫さんを入れ替えてくれて
──美佐夫さんは、そのことに気付かずに、家に帰っていきました
泥酔していたとは言え、我ながら間が抜けている。
──でも、そこからが問題で
──慣れない視界と、歩幅
──そして、急に目眩がして、足がもつれて……
──私、そのまま崖下に落ちちゃったんです
「あー……」
なんだか腑に落ちた。
そういうことだったんだ。




