3/第二の試練 -5 パジャマパーティ当日
「ほら、ここだよ」
パッと見おしゃれなデザイナーズアパートの二階に僕の部屋はある。
十年ほど前にリノベーションしたらしく、構造自体は古いけど、特に気になったことはない。
「こ、こんなとこ、泊まっていいのかな……!」
「緊張するね……」
「大丈夫だよ。家賃、そんなに高くない──みたいだし」
外階段で二階へ上がると、部屋の前に大きな荷物が置かれていた。
「おー。もしかして、ここ?」
「うん。これ布団だよ」
「え、今日のために……?」
「そうなの!?」
二人が驚く。
「え、あ、うん。でも、無理してないよ。おじさん、予備の布団欲しかったって……」
二人が帰ったあとに死蔵されることが確定している寝具だけど、まったく惜しくなかった。
第二の試練とは関係なく、僕は、今日という日を楽しみにしていたのだから。
鍵を取り出し、扉を開く。
「よーいしょ、っと!」
「うんしょ」
二人がそれぞれ、布団の入った荷物を持ち上げる。
「わ、僕が運ぶのに……」
「いーの! してもらってばっかりじゃ、うちらも申し訳ないし」
「どこに置いたらいいかなあ」
「あ、うん。入って!」
二人を自室に招き入れる。
な、なんか、自分の部屋にさえちゃんとほのかちゃんがいるの、へんな感じだな……。
どきどきする。
「こっちがね、寝室。僕、ベッド使うから、その隣に置いてね」
「はーい」
布団は寝るときにでも開封すればいいだろう。
「……え、と」
二人の表情を窺う。
「な、なにする……?」
圧倒的に経験値が足りないのだった。
「ふふふ」
ほのかちゃんがリュックサックを下ろし、中身を漁る。
「じゃーん」
出てきたものは、携帯可能なゲームハードだった。
「ゲーム、しよう!」
「いーねいーね、どれやる? やっぱし対戦する?」
「みさおちゃん、テレビに繋げていい?」
「あ、うん。いいよ」
ほのかちゃんがHDMI端子をテレビの側面に差し込む。
「ゲームたくさんあるから、みさおちゃん選んでいいよ。対戦でも、協力プレイでも、みんなでRPGだっていいかも」
「RPGは、うーん……」
みんな一緒にいるのだから、やっぱり一緒に遊びたい。
画面に映し出されたゲームの一覧を見て、子供のころ姉さんと遊んだ記憶のあるシリーズの最新作があることに気が付いた。
「あ、これ! これ、昔からあるやつだよね」
「そうだよ。これがいい?」
「うん。やってみたいな……」
どれだけ進化しているのだろう。
「うち、これ得意。二人ともボコボコにしてやる!」
「普段はどんくさい私だけど、ゲームでは負けられないよ」
「ほのかちゃん、強そう……」
三人分のコントローラーを用意して、いざプレイを開始する。
だけど、二人の強いこと強いこと。
ボコボコにされてはハンデを追加、バチボコにされてはハンデの追加を繰り返し、最大のハンデをもらってようやく対等に戦えるようになった。
「完全に手をひねられる赤子だ……」
「ふふふ。私、やり込んでるもん。たまにしかやらないさえちゃんが普通に強いの、なんか納得行かないけど……」
「うち、どんくさい仲間じゃないもーん」
「うぐぐ」
真のどんくさい王は僕ということに、僕の中でランク付けがなされてしまった。
白熱すること二時間強、気付けば窓の外はすっかり暗くなっていた。
「わ、夜だ! まだ帰らなくていいの、なんだかフシギ」
「パジャマパーティー、だもんね」
「え、と……」
歌音が用意してくれた予定表をちらりと確認する。
「……その。お風呂入って、着替える? それから出前取って、みんなで映画観ようよ」
ほのかちゃんが顔をほころばせる。
「すごくパジャマパーティーって感じするね!」
「ねー」
三人で頷き合う。
「あ、そだ。みんなでお風呂入ろうよー!」
えっ。
「うん、いいかも」
えっ。
「みさお、どう?」
えー!
どうやら百面相をしていたらしく、さえちゃんとほのかちゃんがくすくす笑う。
「お、お風呂、狭いかも……」
僕が言葉を絞り出すと、さえちゃんが言った。
「お風呂とトイレ別だし、ぜんぜん入れそうだったよ?」
そうなのだ。
浴室、広めなのだ。
「うぐぐ」
「……みさおちゃん、無理はしないでね」
ほのかちゃんが僕の背中を撫でる。
「人前で着替えるの好きじゃないって、私知ってるから」
ああ、天使。




