3/第二の試練 -3 パジャマパーティのお誘い
「パジャマパーティー!」
さえちゃんが身を乗り出す。
「やるやる! 絶対やる! いつやる? 今日? 明日?」
「わ、わわ」
あまりの食いつきに、思わず目をしばたたかせる。
「き、金曜日がいいかな、って……。ほら、次の日休みのほうが夜更かしできるし」
「みさお、あったまいい!」
さえちゃんが僕の頭をうりうりと撫でる。
乱暴なようでいて髪を乱さない気遣いが感じられる、よいなでなでだ。
「金曜かあ……」
ほのかちゃんが、軽く首をかしげてみせた。
「……えと。都合、悪かった?」
「あ、ううん。私は大丈夫。普段二人でお泊まり会するときって、たいてい私の家なんだけどね。金曜日はたしか、お姉ちゃんの彼氏さんが来る予定だったなって」
「そうなんだ……」
それはお邪魔できない。
「うちとこは兄弟多いからうるさいし。ね、みさおの家は?」
「あ、うん。実は、最初からそのつもりだったんだ。僕のおじさんがしばらく留守にしてて、そのあいだ部屋を自由に使っていいって言うから」
「えっ」
ほのかちゃんの目が期待に輝き始める。
「じゃあ、子供だけでパジャマパーティー……!?」
「うおー! なんか大人みたい!」
「すごい、すごい!」
ほのかちゃんが僕の手を握る。
「す、……ッごく、楽しみ!」
「え、へ。うへへへ……」
さすが僕の大親友予定の二人だ。
ここまでトントン拍子に進むだなんて、さすがに思っていなかった。
「あ、そうだ。お父さんお母さんに連絡して、ちゃんと許可もらってきてね。心配かけちゃうから」
「わかった!」
「ふふ。みさおちゃん、先生みたい」
「あ、ご、ごめん。つい……」
「謝ることないよ。ただ、みさおちゃんって、たまに大人みたいなこと言うなって」
「あー……」
たしかに、時折三十二歳が漏れている自覚はある。気を付けなければ。
「ねー、みさお。みさおのおじさんの家って、どのあたり?」
「え、……と。さえちゃん、歌音の家ってわかる? わりとその近所なんだけど……」
「ごめん、行ったことないや……」
「うーん」
口では説明しにくいな。
スマホで地図を表示させようにも、ここは昼休みの教室だ。
スマホの持ち込み自体は黙認されてるみたいだけど、使ってるのがバレると注意、悪質なら没収もあり得るらしい。
「さえちゃん。それ、当日のお楽しみにしない?」
「あ、それもいいかも!」
「でしょ」
ほのかちゃんが得意げな顔をする。
おしとやかで慎ましく女の子らしいほのかちゃんだけど、よくよく観察してみれば感情表現が多彩だ。
それに気付けるようになった自分は、着実に大親友ポイントを稼いでいるのだろう。
「当日、持ってったほうがいいのってある? お泊まりセットは持ってくけど、それ以外で」
「そうだなあ……」
パジャマパーティーに必要なものって、いったいなんだろう。
僕、パジャマパーティー初めてだから……。
「……枕、とか?」
「まくら?」
「まくら……」
二人が顔を見合わせる。
「あ、ううん! なんか、枕が変わると眠れないって人、いた気がして。あはは……」
言わなきゃよかった。
「でも、そっか。おじさんのおうちなんだもんね。お布団とかって人数分あるのかな」
「あ」
ない!
僕の部屋に誰かが泊まりに来るだなんて想定をそもそもしたことがなかったから、予備の寝具なんて悲しいものは存在しないのだ。危ないところだった。
「ありがとう、ほのかちゃん。なんとかする!」
「大丈夫……?」
「大丈夫、大丈夫。まさか布団ごと持ってきてもらうわけには行かないし」
「うちはぜんぜんいいよ?」
「僕がよくないよ。二人はお客さまなんだから」
ホストとして二人をおもてなししなければ。
でも、女子としての経験が浅い僕には、何が必要で何が余計なのかがわからない。
あとで歌音に尋ねてみよう。




