3/第二の試練 -1 僕は無力だ
僕が女の子になっても、仕事が消えてなくなるわけじゃない。
PCに向かい、溜まっていたメールの返信を逐一こなしながら、第二の試練について考える。
「パジャマパーティー、か……」
難しくはない、と思う。
二人とこのまま仲を深めて行ければ、決して不可能な試練ではないはずだ。
だけど、ひとつ問題があった。
「今日、まだ月曜日なんだよな……」
擦れた大学生ならともかく、中一女子が平日にパジャマパーティーをするだろうか。
やるとしたら、金曜か土曜だよな……。
「日、月はもう終わって、明日は火、水、木、金、土、日、月、火──」
指折り数えていく。
日曜日が一日目で、今日が二日目。仮に金曜日にパジャマパーティーを開催するとなれば、最後の試練は土・日・月・火の四日間でこなさなければならなくなる。
試練の内容がわからないだけに、すこし怖い。
「……でも、こればかりはどうしようもないか」
二人にだって都合がある。相手を尊重してこその大親友というものだろう。
明日、二人に話してみようかな。
親御さんの許可も要るはずだし、こういうのは早め早めのほうがいい。
「──よし!」
ぱん、とほっぺたを叩き、気合いを入れ直す。
決戦は明日だ。今日は早めに休むとしよう。
まだ午後十時だというのに、もう眠くなってきたし……。
どうやら、体内時計まで女子中学生になってしまっているらしかった。
寝る支度を整え、広くなってしまったベッドに潜り込む。
言うぞ、言うぞ。明日誘うぞ。
頑張るぞ!
「じゃあね、みさおちゃん。また明日」
ほのかちゃんが僕に手を振り、夕闇迫る商店街の向こう側へと消えていく。
「あ──」
思わず手を伸ばす。
でも、ほのかちゃんを引き止める言葉が、どうしても思いつかなくて……。
僕は、ゆっくりと手を下ろした。
「──……ふー」
誘えなかったー!
頭を抱え、その場にうずくまる。
誘うタイミングはいくらでもあった。
ほのかちゃんに至っては、帰り際に公園で青春トークまでした。
でも、誘えなかった。
「僕は無力だ……」
「こら」
ぽすん。
「わ」
頭に手が乗せられる。
「……見てたよ」
歌音だった。
「ぜんぶ見てた……?」
「おじさんが、言おう言おうとタイミングを逃すさまを、ずっと」
「──…………」
「──……」
「えっち」
「誰がじゃ」
歌音が僕を立ち上がらせる。
「そこの公園でいいか。場所を移して作戦会議だよ」
「うん……」
そのまま近くの児童公園へと引きずられていく。
歌音が財布を取り出し、五百円玉を自販機に押し込んだ。
「コーヒーでよかったよね」
「……うん、ありがとう」
「ありがとうじゃないよ。お釣り渡すから、ちゃんと五百円ちょうだいね」
「ア、ハイ……」
そりゃそうだ。
互いに缶を握り締め、ブランコに並んで腰掛ける。
「それで、どうして誘えなかったの? いつもの意気地なし?」
「ウッ」
実際、それもある。
僕は泣き虫で、意気地もなくて、なにより自分が大嫌いだ。
もし断られたら。
そう考えてしまう自分も、たしかにいる。
だけど──
「……それだけじゃない、かな」
「そう……」
歌音が、レモネードをひとくち啜る。
「……話してくれる?」
「うん……」




