2/第一の試練 -終 第二の試練、それは
「ひッ、ひっ、ふー……」
ラマーズ法じみた呼吸を行いながら、なんとか坂道を登っていく。
すこし覚悟ができているぶん昨日より体は楽だが、先がわかっているからこそ気が重い。
「ほらほら、もうすこし! 引っ張ってあげようか?」
「うぐ」
僕にだって、多少のプライドというものがある。
これくらいはできるんだということを見せて行かなければ、いよいよもって愛玩動物に成り下がってしまいそうだ。
「ひと、りで、上がれる……ぅ!」
「そっか」
歌音が、不思議と嬉しそうに微笑む。
十回くらい気合いを入れ直し、キツネコさまの祠へと辿り着くころには、空の縁が藍色に染まり始めていた。
「──あふ。ようやっと来たか、遅かったのう」
祠の上であぐらをかいていたキツネコさまが、あくびと共に僕たちを出迎える。
「そんなことして、祠壊れないんですか?」
「わしは神じゃぞ」
歌音の素朴な疑問に、適当な返事が返ってくる。
答えになっているような、なっていないような。
「──……ッ、はー……」
息を整え、顔を上げる。
「第一の試練、クリアしてきましたよ!」
「おう、見ておったぞ。褒めてつかわす」
「それは、うん。どうも……」
いまいち嬉しくない。褒め方がよくないのだと思う。
「なんじゃと。神じゃぞわしは」
「もっとこう、やる気を沸き立たせる褒め方ないですか。神ならできそうなもんだけど」
「ぐぬ。ならば、すこし待っておれ」
キツネコさまが思案し、耳をぴこぴこさせながら口を開く。
「……おじさん。今日、すごく頑張ったね。あたしの背中に隠れ始めたときはどうなるかと思ったけど──」
「わああ!」
「ぎゅむ!」
歌音が慌ててキツネコさまの口を塞ぐ。
どうやら、歌音の心を読み上げたらしい。
「……そっか、歌音。そんなことを」
「違うからね!」
「おじさん、頑張る!」
「ううう」
「けほ、けほ……。こりゃ、神の口を塞ぐでない!」
ぽこん!
「た」
ホールドから抜け出したキツネコさまが、いまいち痛くないげんこつを歌音に見舞う。
「まったく、最近の若いもんは……」
僕は、ぶつぶつ文句を言うキツネコさまに向き直った。
「それで、第二の試練はなんです?」
「ふむ」
なんとか威厳を取り繕ったキツネコさまが、僕に言った。
「第一の試練を乗り越えたのならば、そう難しいこともあるまいて」
キツネコさまが片方の口角を上げる。
「第二の試練、それは」
僕と歌音が、同時に喉を鳴らした。
「──ぱじゃまぱーてぃー、じゃ!」




