2/第一の試練 -14 親友
僕たちは、互いに互いのクレープを食べさせ合いながら、三十分ほどかけてようやくすべてをたいらげた。
「……ごめん、二人とも。夕飯入る?」
結局、僕はあまり食べられなかった。二人の半分以下だと思う。
「へーきへーき。うち、すぐおなか空くもん」
さすが運動部。
「私も満足……」
ほのかちゃんは、心底幸せそうだ。
「──…………」
第一の試練、これでよかったのかな。
達成したのなら、もっとこう、わかりやすくファンファーレとか鳴ってほしいものだ。
そのまま三人で話して、気が付けば夕刻。
別れの時間が迫っていた。
「放課後にクレープ、そしてたっぷりおしゃべり。これはもう、親友と呼んで差し支えないでしょう。異論反論ありますか!」
「うん。もちろんないよ」
二人が、優しく僕を見る。
「……ふ、へへ、へ……」
口元が弛むのを止められない。
親友。
親友だぞ。
友達のさらに上なんだぞ。
「こ、これからも、二人の親友として邁進していく所存、……であります!」
「ふふっ」
「みさお、固いぞー……」
「ご、ごめん!」
「いいんだよ。それもみさおちゃんらしいし」
「えへ、へへへ……」
幸せだな。この時間が、もっと長く続けばいいのに。
でも、時計の針は残酷だ。
「──そうだ。みさお、家どっち?」
クレープ屋さんを出たあと、さえちゃんが尋ねた。
「あ、うん。あっち……」
素直に答えたあと、しまったと思う。
試練の報告をしに、祠へ向かわないと!
「そっか……」
ほのかちゃんが目を伏せる。
「私たち、反対側なんだ。残念」
「……そうなんだ」
都合がいいと言えばいいけど、それはそれで悲しい。
「みさおちゃん。明日、学校でね」
「また明日!」
「う、うん……」
また明日、か。
僕は、ずっと、この言葉に憧れていたのかもしれない。
漠然とした約束。
明日も会えるという当たり前の幸せ。
それを凝縮した言葉が、"また明日"だと思うからだ。
「──……また、明日ね」
そう告げて、僕は、胸の前で小さく手を振った。
ほのかちゃんとさえちゃんが、僕に手を振り返しながら歩き去っていく。
僕は、その背中を、なんとなく目で追い続けていた。
二人が見えなくなったあと、スマホを取り出す。
「さて、と」
数回のコール音ののち、電話が繋がった。
「あ、歌音?」
『うん、歌音。おじさん、どうだった?』
「ばっちり。ありがとうな、歌音のおかげだよ」
『そんなことないって。あたしはちょっと手を貸しただけ。おじさんが自分で頑張ったんだよ』
「だとしても、感謝してるのは本当だから」
あのとき歌音がうちに来てくれなければ、今ごろどうなっていただろう。
考えるだに背筋が寒くなる。
「今からキツネコさまの祠に行こうと思うんだけど、歌音はどうする?」
『元から一緒に行くつもりだよ。乗りかかった船だもん。おじさんだけだと心配だしね』
「うう、ほんとにできた姪だ。全部終わったら、好きな服作ってあげるからね……」
『やった! 実は、それ目当てってところもあります』
「現金だなあ」
むしろ、頼られて嬉しいけど。
『じゃあ、中学校の前で待ち合わせでいい?』
「うん、大丈夫。二十分くらいで行けると思うよ」
『あたしもそれくらい。じゃあ、あとでね!』
「またあとで」
通話を切り、スマホを制服のポケットに仕舞う。
制服って、ポケットがたくさんあって便利だな。
そんな毒にも薬にもならないことを考えながら、僕は商店街の出口へ向けて歩き出した。




