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2/第一の試練 -6 ほのかちゃん

 給食を終えると昼休みだ。

 クラスメイトに取り囲まれるのも悪くはないけど、先約があった。

 いくらさえちゃんとて、他人の教室には入りにくかろう。

 教室の外で待とうと席を立ったときのことだ。


「みさおー!」


「わ」


 顔を上げると、一切の躊躇なくさえちゃんがこちらへ駆け寄ってくるところだった。


「来たよ!」


「さすが陽の者……」


「?」


 さえちゃんが小首をかしげる。

 クラスメイトの一人がさえちゃんに尋ねた。


「あれ? さえって田町さんのこと知ってるの?」


「うん。昨日友達になったんだー」


「え、ずるい!」


「へへーん、いいだろ!」


 クラスメイトと二言三言交わしたあと、さえちゃんが僕の正面の席に腰掛ける。


「みさお、よかったね。話せるようになったみたいだね」


「──…………」


 思わず赤面する。


「……え、と。僕がみんなと話せてないって……」


 言わなかったよな。


「あはは、わかるよー。でも、きっと大丈夫とも思ってたよ」


「そうなんだ……」


 すごい。

 二十も年下の女の子を、本気で尊敬してしまいそうになる。


「……!」


 女神を崇める視線でさえちゃんを見つめていると、一瞬、寒気がした。

 気のせいだろうか。


「あ、穂乃香!」


 さえちゃんの視線が僕の背後に向けられる。

 視線を辿るように振り返ると、そこに、窓際で恋愛小説を読むのが似合いそうな儚げな少女が立っていた。クラスメイトだ。


「みさお。この子が穂乃香だよ。栗生(くりう)穂乃香」


「あ……」


 慌てて立ち上がり、会釈する。


「田町みさお、です」


「知ってます」


 あれ。

 なんか、刺々しい?


「ほのかー……?」


 さえちゃんが、可愛らしくほのかちゃんを睨む。


「……栗生穂乃香、です。よろしくお願いします」


「あ、どうも。これはご丁寧に……」


「さっきも言ったけど、穂乃香はうちの親友なんだよ。仲良くしてあげてね!」


「う、うん……」


「──…………」


 ほのかちゃんが、僕から目を逸らす。


「ほのかー……」


 溜め息をひとつつき、ほのかちゃんがしぶしぶといった様子で頷いた。


「……わかりました」


「もー、何が不満なのさー!」


「いや……」


 これは、朴念仁の僕でもわかるぞ。

 大好きなさえちゃんが僕と仲良くしてるから、やきもちを焼いているのだ。

 なるほど。

 なるほどー……。

 これが、百合を愛でる気持ち!

 今まで興味のなかったジャンルだが、実にいい。

 二人のやり取りを頷きながら見ていると、さえちゃんが不思議そうに振り返った。


「どしたの、みさお。ニコニコして」


「あ、うん……。なかよしだな、って」


「うん。うちら、大親友! ねー、穂乃香!」


「……は、はい」


 あ、照れてる。

 かわよいなー。

 さえほの、推せるなー。

 二人のことを、もっと知りたくなる。


「その。二人が出会ったときのこととか、聞いていい、かな」


 さえちゃんが、自分の胸を軽く叩いてみせる。


「もっちろん! あれは宇宙創成の刻、世界は光と闇とに分かたれ──」


「違います」


 ばっさり行った。


「私たち、幼稚園のときからの幼馴染みなんです」


「じゃあ、ずっと一緒なんだ」


「はい。中学に入ってクラスが別になっちゃったけど、小学生のときはずっと同じだったんですよ」


「すごい!」


 少子化でクラス数が減っているとは言え、六年連続はすごいことだ。


「幼馴染みで、大親友なんだね。羨ましいなあ」


「はい……」


 ほのかちゃんが、てれてれと前髪をいじる。

 いいな。

 本当に、いいな。

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