おまけ小話1 空に昇っていく
裕紀が手紙と相性が悪いと感じる理由の一つ
の、お話
朝、登校すると下駄箱に手紙が入っていた。(こういう事はちょくちょくあってその度思うのだが、こいつらは俺の下駄箱や机を、郵便受けとかポストと間違っているのではないだろうか)
封筒に差出人の名前が書かれていなかったので不審物と判断し、そのまま生徒用の昇降口に設置されているゴミ箱に捨てようとしたところ、沙夜子から怒られた。(こういう事はちょくちょくあって、その度なんで怒っているのか理由を尋ねるのだが、必ず大きなため息をつかれる。コイツはホントにお節介だ)
あまりに沙夜子が五月蠅いのでとりあえず中を確認したところ、放課後校舎裏の温室へ来てほしいとの事だった。
人の都合も確認せずに、勝手に呼びつけるような輩に付き合うことはないと、沙夜子の見ていないところで再び手紙を処分しよとすると、そのたびに美央美が邪魔をしやがる。(こういう事はちょくちょく(……中略)コイツの性格は最悪だ)
……本当はわかっている。手紙の差出人が何を考え、俺に何を求めているのか。沙夜子がなんで怒り、美央美が邪魔をするのか。
けれど。
それでも、この事にまったくと言っていいほど心が動かない自分は、人として必要な何か(たとえばそれは、愛とか思いやりとか怒りとか憎しみとか、そんなものをはじめとする『他人に対する感情』なのだろうと思う)が壊れているのだと自覚していて。
だから、俺がそれらの手紙に応えることは決してない。
だってそうだろ?
それらの問いに、YesともNoとも答えることが出来ない(無関心はYesでもNoでもないのだ)のに、行って何をしろと言うのか。
他人に無関心だからと言って、好きこのんで他人を傷つけたいとは思わない。周りからは冷血漢だと思われているようだが、「お前に全く関心を持てない。好きだとも嫌いだとすら思えない。だから手紙なんて迷惑だ」なんて言葉は、いくら俺でも言いたくない。
だから俺は何もなかったことにして、いつもとなにも変わらない退屈な日常としてその日1日を送る事にしている。
誰の、どんな手紙にも応えない事で、差出人達の小さなプライドを守るために。
沙夜子と美央美の邪魔に、この場での手紙の処分を諦めた俺はため息をつきながら、空っぽのカバンの奥底に手紙をしまう。
とりあえずこれは持ち帰り。
決して見えないように自室の机の奥底にしまって。
そしてある程度貯まったら、落ち葉や枯草と一緒に焼き芋の材料にすると決めている。
空の彼方に消えていく煙と一緒に、彼女達の想いもまた空の向こうに拡散していくことを願いながら、俺はボンヤリとその様を眺めながら焼き芋を食べるのだ。
元々はこちらの「家族の卵」ではなく「桜と青空」のおまけとして書いていた作品。
裕紀が手紙と相性が悪いと言ってしまったため、こちらに持ってきました。




