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くまクマ熊ベアー  作者: くまなの
クマさん、新しい依頼を受ける

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998/999

974 クマさん、湖に向かう

 朝食をいただき、わたしたちは出かける準備をする。


「ユナ、確認ですが、その格好で街に行くつもりですか?」


 セレイユがわたしの姿を見ながら尋ねてくる。


「そうだけど」


 おかしいところはない。いつもの格好のクマ服だ。


「そう言うと思いましたので、服を持って来ました。着替えてください」


 セレイユが隠し持っていた服を取り出す。

 この街にいたときは、わたしは制服を着ていたから、セレイユにとって、クマの格好は違和感を覚えるのかもしれない。

 わたしもクマの格好を普通と思っている時点でダメだと思う。

でも、普通の服を着るのは、若干の抵抗がある。


「わたしは、別にこのままでも」


 後ずさりする。

 でも、左右からノアとミサに腕を掴まれる。


「ユナさんの普通の格好が見たいです」

「いや、見なくてもいいでしょう」


 力を込めればノアとミサを振りほどくことはできる。

 でも、そんなことをすれば、2人に怪我を負わせてしまうかもしれない。


「ほら、今更感があるでしょう。フィナ、助けて」


 フィナに助けを求めるけど、フィナは微笑んでいるだけで、助けようとはしてくれない。

 シュリを見るけど、「どんな服を着るの?」とか言っている。

 くまゆるとくまきゅうに助けを求めるけど、首を横に振っている。

 誰も助けてくれないわたしは、セレイユが持ってきた服を着ることになった。


 セレイユが持ってきた服は白を基調にしたお嬢様風の涼しげな感じだ。

 スカートは膝までの長さで、腕の袖は半袖だ。

 気分的に制服と変わりないけど、私服となるとやっぱり違う。


「ユナさん、似合っています」

「可愛いです」


 みんな褒めるけど。


「恥ずかしい」

「クマの格好のほうが恥ずかしいと思うのですが」


 セレイユの言葉はもっともな言葉だ。

 普通に考えたら、クマの着ぐるみの格好のほうが恥ずかしいよね。

 でも、慣れなんだよ。習慣なんだよ。

 24時間、ずっと同じ格好をしていると、慣れちゃうんだよ。

 でも、女の子として、アウトだよね。

 女の子レベルが存在したら、わたしは間違いなくレベル1だと思う。

 そして、準備を終えたわたしたちは出発することになる。

 ちなみに、みんなの護衛もあるので、クマ靴と手袋だけは死守した。


「あっ、確認を忘れていましたが、水着は持って来てくださいましたか? 持っていない人がいましたら、用意しますので、言ってください」

「一応、持って来たけど、水着を持って行くの?」

「着るか分かりませんが、必要になった場合二度手間になりますから」


 全員、水着はアイテム袋の中に入っている。

 準備もOKだ。


「湖に行くんだよね?」


 湖のイベントというのだから、湖に行くのは当たり前だ。


「はい。体験もできますから、そのときに水着に着替えてください」

「体験?」


 なんの体験かは見てもらえば分かると言って、詳しい説明はしてくれない。わたしたちは屋敷を出て、湖に向かう。

 ちなみに騒ぎになっても困るので、くまゆるとくまきゅうは送還した。


 わたしたちは湖までやってくる。

 クマの格好ではなかったので、来るときと違ってチラチラと見られることはなかった。

 やっぱり、わたしが見られる理由はクマだからだよね。


「湖の上で浮かんでいるのはボートでしょうか?」


 ノアが湖を見ながら尋ねる。


「もの凄い速さで動いています」


 湖には乗り物に乗って遊ぶ人がいた。

 カップルが乗るようなボートではない。

 詳しくはないけど、海の上を走る水上バイクではない。

 湖や川で行うボートレースに近いかもしれない。

 こんなものが、この世界にあるの?


「あの乗り物はなんですか?」


 ノアも知らないみたいだ。


「水上車と呼ばれています。初めは水の上を移動するので水上馬車と名前が付けられるところを馬はいないってことで、水上車になったと聞いています」


 流石に水上バイクではなかったみたいだ。


「確か、3年前から始まったんですよね?」


 ミサが確認するように尋ねる。


「はい、魔道具を研究している一環として、開発されました」

「大きな船も造れそうだね」

「作れると思いますが、巨大な魔石が必要になりそうですね」


 確かに、大きな船となれば魔力量も必要になるから魔石も大きくなる。

 ただ大きい魔石がなければ、数でどうにかならないものなのかな。


「それじゃ、イベントって、この水上車を使ったもの?」

「そうです。この湖を周って競います」


 この街には中心に湖があり、その湖の中心には大きな島があり、学園がある。


「ユナ、どっちが勝つか勝負です」


 セレイユが指をビシッとわたしにさす。


「えっと、本気?」

「本気です。魔法と剣では勝てませんが、これならいい勝負ができます」

「いやいや、無理だよ。初めて乗るんだよ。地元のセレイユに勝てるわけがないでしょう」


 そもそも、バイクにも乗ったことがないのに。

 流石に、自転車はあるけど。

 それを乗ったことがあるセレイユと勝負なんて勝てるわけがない。

 プロでなくても、自転車に乗り慣れている人と、初めて自転車に乗る人では、勝負の結果は歴然としている。


「それなら、大丈夫です。わたしも乗ったことがありません」


 セレイユが自慢げに言う。


「そうなの?」

「あの事件が解決するまで、遊びらしいことはしてきませんでした。周りが大会で盛り上がっている間も、わたしは1人で剣を振っていました」


 セレイユが1人で剣を振っている姿が想像できてしまう。


「それで、ユナには早めに来てもらい、お互いに同時に練習をして、勝負ができたらと思いました。それなら、卑怯もありませんから」


 だから、早めに来てほしいと手紙にあったわけか。


「別に、わたしと争わなくても学校の友達を誘えばよかったんじゃない?」


 わたしを誘うよりも有意義だ。


「もちろん、誘ってありますよ。わたしがユナを誘うと言いましたら、みんなもやる気に満ちていました。交流会の負けの借りを返すと、言っていました」


 そこは一致団結しないでほしいんだけど。

 それに、学生までわたしのことが伝わっていたら、断りにくくなる。

 でも、心の中では面白そうって気持ちも沸いている。

 レースゲームも何度かやったことがある。

 海外の風景や日本の風景を見ながら走る車。

 相手の車をギリギリでかわす。

 よくぶつかって、車を壊したものだ。

 ゲーム内だから、気にせずにぶつかったりしたものだ。

 そんなこともあって、少しだけ、車やバイクを運転したいと思ったこともあった。


「わたしも参加できますか?」


 わたしが考えていると、ノアが湖を見ながら尋ねる。


「もちろんです」

「本当ですか。わたし参加します」

「わたしも」


 ミサも小さい声で参加を表明する。


「わたしも乗りたい!」


 シュリまでが言い出す。


「年齢制限ってないの?」


 日本ではバイクが16歳で車は18歳だ。ちなみに水上バイクに年齢についてはしらない。水上バイクと言うのだから、普通バイクと同じかもしれない。

 でも、このボートは10歳のミサが乗れるなら、年齢制限はない?


「う~ん、申し訳ありません。10歳以上からとなっています。シュリは7歳ですよね」


 そういえば昨日みんなの年齢を聞いていたけど、これが理由だったみたいだ。


「うぅ」

「でも、他の者と一緒に乗ることはできますから。上手に乗れるようになりましたら、乗せてあげますので」


 シュリは口を尖らせる。

 ルールはルールだ。

 でも、10歳ってことは魔法を扱える年齢が基準になっているのかもしれない。


「シュリ、わたし練習するから、一緒に乗ろう」


 フィナが優しく声をかける。


「わたしも練習します」

「わたしも頑張って練習します」

「……うん。分かった」


 みんなの言葉にシュリは素直に頷く。


「それじゃ、乗れるのは10歳以上なら、OKってことでいいの?」

「えっと、泳げること。みなさん、泳げますか? 参加条件に泳げる事があるのですが」


 今更、それを聞く?

 一応、全員、泳げると返事をした。

 水上車から落ちることもあるので、泳げないとダメとのことだ。

 確かに、泳げずに溺れたら大変だもんね。

 一応、小学校で水泳の授業があったから、最低限は泳ぐことはできる。

 ノアたちも最低限は泳げるので、乗ることはできる。

 海で泳ぐ練習をしてよかったと思う。

 わたしたちは学園の中に入る。


「入ってもいいの?」

「特別です」


 いいのかな? と思いつつ学園の門を通る。


「ここは……」


 わたしたちが連れてこられた場所は前回交流会で魔法の演出をした場所だ。

 ここではセレイユが水の花を作ったり、砂浜でシアがクマを作ったりした。


「大会当日は、ここがスタート場所になります」


 大会の参加者の人数がどれほどになるか分からないけど、ここなら、人が集まっても見学ができるから最適かもしれない。


「着替えをする場所も学校が提供することになっています」


 確かに、ここなら校舎から少し歩くことになるけど水着に着替えてから来ることもできる。

 参加者全員が着替える場所を作るよりは効率的だ。


「グラウンドには出店も並びますから、盛り上がりますよ」


 お祭りみたいなものかな。


 桟橋の方を見ると、先ほど湖の上を走っていた水上車がいくつも置いてある。

 今も、わたしたちの前をもの凄い速さで通っていく。


「意外と速いね」

「でも、危険はないようになっています。操縦の説明をする前に水着に着替えましょうか」


 やっぱり、水着に着替えることになるよね。

 水着になりたくない気持ちと、水上車に乗りたい気持ちが拮抗している。


「ユナさん、行きましょう」

「わたし、早く乗ってみたいです」


 拮抗していると、ノアたちに手を引っ張られたから、水着を着たくない気持ちが負けてしまった。

 わたしはノアとミサに両手を引っ張られ、フィナとシュリに背中を押される。

 それをセレイユが微笑ましそうにみている


「着替えるって、今日はどこで着替えるの?」

「今は簡易的な小屋がありますので、そこで着替えます」


 わたしたちは小屋で水着に着替える。

 普通の服から、水着へ。

 少し恥ずかしい。

 それにしても、やっぱり、セレイユは体型が綺麗だ。

 スマートと言うか、スラッとしていると言うか、全体的に美を兼ね備えている。

 それに引き替え、わたしは……。

 自分を見る。

 でも、思ったよりもお腹は出ていない。二の腕も、細く見える。

 もしかして、妖刀事件で動き回ったから、体が引き締まった?

 あれだけのことで?

 もしかするとクマの着ぐるみは代謝の効率をあげてくれるとか?

 少ない運動で痩せたり、体が引き締まったりすることができたら、ますますクマの服が脱げなくなる。

 もしかして、神様がわたしがクマの服を脱げなくさせるために、新機能を付けたりしてないよね。



水上対決になりそうです。

どっちも初心者、どうなるのでしょうかね。


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― 新着の感想 ―
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>「はい。体験もできますから、そのときに水着に着替えてください」 水上車に乗る時は「水着」着用が規則なのでしょうか?。 ユナなら、【クマ服】の方が”安全”だと思いますし、水着がセパレートタイプの場合…
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