962 クマさん、巨大クマの壁を作る
「カガリさん、その持っている物は、ゴジールさんの魔石?」
わたしはカガリさんが持っている魔石に目を向ける。
「ああ、借りてきた。お主のように毒の対処方法はなかったからのう。お主を助けに行くと言ったら、貸してくれた。それに毒なら残ったクマは毒が分かるみたいじゃから、クマたちがいればゴジールは大丈夫じゃろう」
確かにくまゆるとくまきゅうがいれば、毒に気付き、離れることはできる。
「それで、どうやって倒すのじゃ? 炎の魔法を投げて、全ての沼を蒸発させようとバカなことは考えておらんと思うが」
もしかして、沼にクマの炎を打ち込むところを見られていた?
「水源が山から流れて来ていれば、無理じゃと思うが」
そうだよね。
地下水、どこからか沼に水が流れている可能性は十分にある。
いや、山だからありえるよね。
「……ソンナコト、カンガエテイナイヨ。アレハ、ヨウスミダヨ」
誤魔化すように答える。
「どうして、棒読みなのじゃ?」
「カガリさんは、討伐方法はある?」
わたしは話を変えるためカガリさんに尋ねる。
わたしのバカな考えではなく、優秀なカガリさんなら、討伐方法の一つや二つはあるはずだ。
でも、カガリさんの返答は違うものだった。
「ないと言ったほうがいい。逃げ出すのも一つの手じゃ」
「それじゃ、お酒の材料が」
ここまで来たのに手に入らない。
「世界は広い、うまい酒は一つだけじゃない。ゴジールの酒にこだわることもないじゃろう」
「そうだけど」
もし、ここで逃げ出せばゴジールさんは祖父の代から造ってきたお酒を造ることができなくなる。
「お主の気持ちは分かる。じゃが、依頼料と今回の件は釣り合っていない。断っても問題はない」
「でも、このまま放置して、他の街に……」
「蟻のときにも言ったが、それはこの国に住む人たちが考えることじゃ」
今までどおりに死の山と扱い、放置するのも一つの判断。
毒沼の魔物がいると分かり、討伐するのも一つの判断。
それを考えるのは、この国に住む住民たちだ。
「……でも」
「お主は優しすぎる」
「そんなつもりはないけど」
わたしは自分が優しいとは思っていない。
自分がしたいと思ったことしかしない。
「じゃが、お主の優しさに妾の国が救われたのも事実じゃ」
「…………」
「じゃから、お主が倒すと言うなら、手は貸す」
「カガリさん……」
「お主が、あの沼の化け物を倒せば、美味しい酒が飲めるからのう」
「…………」
一瞬でも感動したわたしの気持ちを返して。
でも、倒す方法か。
あの魔石の集合体を壊すことができれば活動は止まるはずだ。
「魔石の位置は分かるから、攻撃を仕掛けてみるよ」
「分かるのか?」
「およそだけどね」
魔石のおよその位置は探知スキルで分かる。
そこに無差別に攻撃を仕掛ければ魔石を壊せる可能性がある。
まだ、やれることはある。
わたしは探知スキルを見て、反応の位置を確認する。
「魔石は、あのあたりにあるよ」
わたしは少し離れた場所を指さす。
「それでは魔石はお主に任せよう。妾はまがい物を引き付けよう」
カガリさんはそう言うと飛んでいく。
まがい物って、もしかして、液体状の生物のこと?
面白い言い方だ。
確かにまがい物だよね。
ただ、その物の形をしているだけ。
カガリさんは、そのまがい物を空を飛びながら倒していく。
やっぱり、空を飛べるのは羨ましい。
スキル、飛行
空を自由に飛び回ることができる。みたいなスキルを覚えないかな。
覚えたら、空を飛ぶ魔物にも対処できるし、楽なんだけど。
神様、お願いします。飛行のスキルをください。と願ってみるが、覚えることはなかった。
とりあえずは、柱を横に伸ばす感じで、足場を作りながら移動する。
そして、探知スキルで反応はある場所に来るとクマの炎を無差別に放り込む。
沼がぶつぶつと沸騰して、蒸気が上がってくる。
「臭い」
わたしは離れる。
毒から守ってくれても、匂いから守ってくれない。
さらには沸騰する沼の上にまがい物が作られる。
ぶつぶつと沸騰している液体状の生物。
見た目が悪化した。
気持ち悪さが増幅した。
でも、まがい物が作られるってことは沼は生きているってことだ。
探知スキルで反応を確認すると、移動している。
数百メートルある沼の中を自由に移動されたら、簡単に破壊することはできない。
それでも、わたしは追いかけ、魔法を放つ。
炎を放とうが、電撃魔法を放っても、探知スキルの反応は消えない。
「まだ、魔石を破壊することはできぬのか?」
カガリさんが声をかけてくる。
「そうは言っても、沼の中を自由に動き回って」
今考えると沼の中にいたときが、最大のチャンスだったのかもしれない。
あの目の前に魔石があったときに、壊せなかったのが悔やまれる。
でも、そんなことを口にすれば、カガリさんを責めることになる。
カガリさんはわたしを助けるために、したことだ。
わたしは大きな沼をあらためて見る。
数百メートルはある沼。
この沼の中を自由に移動されたら、いつまで経っても壊すことはできない。
カガリさんには笑われるかもしれないけど、当初の予定どおりに、沼を全てを蒸発させる?
でも、カガリさんの言うとおりに水源がどこからか流れてきていたら、補給し続ける。却下だ。
どうやったら、壊せる?
どうやったら、逃げられないようにできる?
どうやったら、捕まえることができる?
どうやったら、移動させないようにできる?
「…………」
沼が大きくて、魔石を自由に移動させることができる。
……逃げられる沼が大きいなら、沼を小さくすればいい。
こんな簡単なことに気づかなかった。
あの方法を使えば逃げ場を小さくさせることができる。
問題は、わたしの魔力だ。
初めの方で土魔法で壁を作り、巨大な炎のクマをたくさん作った。
感覚的には魔力は残っている。
でも、不安はある。
「カガリさん!」
「なんじゃ? 倒したのか?」
「まだだよ。このままじゃ、沼が大きいと逃げられて、倒せないから、沼を小さくするよ」
「お主、なにを言っておる」
「ちょっと、着替えるから、引き付けて」
わたしはそう言って、乗っている伸ばした柱の通路を沼の端に移動させる。
スキルの水の水中歩行で沼の上を走ってもいいけど、沼全体を自由に動かせる可能性もあるので、危険を冒すことはない。
後ろで、「着替えるって、説明してから行かんか!」と怒っている声がする。
とりあえず、今は着替えが優先だ。
わたしは岸に移動すると、沼から少し離れる。
そして、簡易クマハウスを作ると、中に入り、白クマ
に早着替えをする。
白クマに着替えが終わると、簡易クマハウスから出る。
これで、魔力の回復速度も上がる。
「お主! 白クマになってどうするつもりじゃ!」
「沼を分断させて、魔石の移動を制限させるつもりだよ」
「分断じゃと?」
わたしは簡単に、これからすることを説明する。
わたしの話を聞いたカガリさんは呆れた表情をする。
沼を蒸発させると同じぐらい、バカな方法だ。
「そんなことができるのか?」
「魔力が少し心配だけど、白クマには魔力回復機能がついているから、なんとかなると思う。もし、魔力が切れたとしても、時間をおけばいいだけだし」
別に一度にしないといけないわけではない。
時間をかけても問題はない作戦だ。
「分かった。じゃが、妾の魔力が少なくなってきておるから、長くは持たんぞ」
「魔力がなくなったら、無理はしないで、離れていいからね」
カガリさんが飛べなくなったら危険だ。
だから、空を飛べるうちに逃げてもらう。
「酒のために死ぬつもりはないから安心せよ」
カガリさんは飛んでいく。
でも、お酒のために無理はしそうだ。
わたしはカガリさんの背中を見送ると走り出す。
「このあたりからでいいかな」
わたしがいるのは沼を分断するのに短い距離になるところ。
横長の長方形の沼を横に分断するより、縦に分断したほうが短い距離になる。
魔力のことを考えて、最短距離になる場所を選ぶ。
わたしは魔力を集め、土魔法で大きなクマを作り出す。
「まずは、一個目」
大きなクマが岸のところに立つ。
わたしはその巨大なクマの頭に跳び乗る。
そして、その巨大クマの隣に巨大クマを作る。
「二個目、三個目、四個目」
わたしは作った巨大クマの隣に巨大クマを作り、その巨大クマの隣に巨大クマを作る。
わたしが考えた方法は巨大クマで沼を分断させて、小さくする方法だ。
沼が小さくなれば、魔石の逃げ場もなくなる。
あと、考えたのが沼が繋がっていなければ、魔石がない側の沼は液状化の魔物は作り出せないのでは? と仮説を立てた。
もし、液体状の魔物を作り出すことができなければ、危険度も下がる。一石二鳥となる作戦だ。
それに魔法で作った巨大クマは強度も高いから、ちょっとした攻撃では壊れない。
大蛇が噛み砕けなかったぐらいだ。
まあ、あのときは大蛇の口に入れたクマは魔力を注入し続けたからってこともあるけど。
それでも、クマの効果で簡単に壊すことはできない。
「もう一個」
沼の中から、次から次へとクマがそびえ立ち、沼を分断していく。
白クマが魔力を回復させてくれている。
魔石がどっちに移動したとしても、沼は半分になる。
だから、慌てる必要はない。
わたしはゆっくりとクマの道、クマロードを作っていく。
沼の中にそびえ立つクマたち。
ガッチリとくっつき、隙間もない。完全に沼を半分に分断させる。
そして、クマの道は完成する。
反対側の岸まで来られた。
振り返る。
「ふぅ」
壮大だね。
クマの道が完成した。
これで、沼を半分に分断することができた。
魔石の反応はわたしから見て、右側にある。
そして、液体状のまがい物が出現するのも右側だけ。
左側の沼は静かなものだ。
カガリさんが右側にいるから、液体状の生物を作っていないのかもしれないけど、分断していけばわかることだ。
カガリさんが沼を引きつけている間に次の分断と行きますか。
わたしはクマの道を戻り、真ん中まで移動する。
ここから、横へと新しく巨大なクマの道を作り出す。
これが完成すれば、沼の大きさは四分の一になる。
探知スキルで確認しながら巨大クマを作っていく。
魔石が左右のどちらに移動しても、問題はないが。
一番気をつけないといけないことは、巨大クマを越えて、大きい沼がある方へ、移動することだ。
一応、クマは高くそびえ立っているが、沼がそびえ立ったら、超えられない高さではない。
ただ、そのときは狙い撃ちをさせてもらうつもりだ。
だから、魔石の位置は重要になってくる。
カガリさんは岸寄りで戦ってもらっているため、魔石もその近くに移動している。
人手があれば、もう少し楽なんだけど。
もし、くまゆるとくまきゅうに毒耐性があれば、くまゆるとくまきゅうに監視させることもできたんだけど。現状ではくまゆるとくまきゅうに毒耐性があるかどうかは分からない。
とりあえずは、今はできることをする。
巨大沼の中にクマの橋が作られていきます。
※6月5日にくまクマ熊ベアーのコミカライズ14巻と文庫版13巻が発売しました。
店舗購入特典もあります。詳しいことは活動報告にてお願いします。
※7月3日にくまクマ熊ベアー外伝~ユナのよりみち手帖~ 5巻が発売予定です。
※コミックPASH!neoでコミカライズの「くまクマ熊ベアー 」が7月1日まで100話無料公開中です。
※コミックPASH!neoでコミカライズの「くまクマ熊ベアー 今日もクマ日和」が7月1日まで全話無料公開中です。
お時間がありましたら、よろしくお願いします。
PASH! BOOKS 10周年記念 POP UP SHOPにて販売されましたグッズがFuuuuオンラインショップにて販売が開始されました。
気になるグッズがありましたら、よろしくお願いします。
※毎月28日は【ふたばの日クーポン】の日らしく。
ショップサイトにあるクーポンコードを入力すると10%になります。
くわしくはFuuuuオンラインショップにて、お願いします。
※PRISMA WING様より
くまクマ熊ベアーぱーんちのフィギュアが9月に発売予定です。
※くまクマ熊ベアー ユナ ミタクルブロックコラボフィギュアの再販が決まりました。
※予約期間:2026/04/01(水)~2026/09/30(水)まで
活動報告にて、書籍23巻の書き下ろし、店舗購入特典の書き下ろしのリクエストを募集中です。
参考にしたいと思います。リクエストがあれば活動報告にて、よろしくお願いします。
22巻の発売の情報はもう少しお待ちください。
※誤字を報告をしてくださっている皆様、いつも、ありがとうございます。
一部の漢字の修正については、書籍に合わせさせていただいていますので、修正していないところがありますが、ご了承ください。




