960 クマさん、毒沼と戦う その3
わたしはクマの空気玉を動かし、シャボン玉が空にぷかぷかと浮かぶ感じに移動させる。
毒沼の中は紫色に濁っている感じで、遠くを見ることはできない。
でも、液体生物は襲ってこないから沼の中は平和なものだ。
今までの生物は沼の中に取り込めば死んでいたけど、わたしは違う。クマの空気玉の中で生きている。
毒沼生物も、自分の体の中で生きているとは想像もしてないのかもしれない。
想像する知能があるのか疑問だけど。
わたしはクマボックスから水が入った小樽とコップとお菓子を出し、水分補給と栄養補給しながら「no data」のところに向けて進む。
それにしても、面倒臭い生物もいたものだ。わたしだから、どうにか対処はできるけど、普通の冒険者だったら無理じゃない?
どう考えても倒せるとは思えない。
剣などの物理攻撃は無意味に等しい。
魔法使いを集めて、先ほどわたしがやったように炎の魔法で蒸発させるぐらいしか思いつかない。
わたしが普通の冒険者だったら、どうやって倒すか考えながら進む。
もちろん、そんな答えがでるわけがなく。
「そろそろだと思うけど」
「no data」の反応が近くになってくる。
探知スキルはスキルの地図同様に拡大も縮小もできない。
スマホの地図みたいに拡大できるようにしてほしいものだ。
「no data」の反応が探知スキルの中央にくる。
探知スキルはわたしを中心に表示されるので、このあたりのはずだ。
さて、鬼が出るか蛇が出るか。
ただ探知スキルの反応が魔物の体の中心を指しているだけなら、なにもない可能性もある。
周囲を見る。
「なにも見えない」
毒沼は濁っていて、数メートル先は見えない。
ならば、綺麗にすればいい。
わたしは魔力を集め、水を作りだし、放出する。
放出された水はクマの空気玉の外へ流れる。
綺麗な水は正面の汚い水を押し出し、綺麗な水に替わる。
正面は綺麗な水になり、視界がクリアになる。
「……あれはなに?」
少し離れたところに変なものがある。
いや、なにがあるのかは分かる。
ただ、目の前にあるものが異様なのだ。
「魔石が集まっている?」
魔石の集合体と言うべきか。
様々な魔石がくっつくように1つの塊となっていた。
その魔石の塊は異様な雰囲気が漂っている。
すぐに壊せとわたしの直感がいっている。
氷の槍を作りだし、魔石の塊に向けて投げる。
氷の槍はクマの空気玉を突き抜け、魔石に向かう。
氷の槍が魔石にぶつかり、魔石はバラバラと散らばる。
そのバラバラになった魔石の中央から紫色の魔石が現れる。
あれが、本体の魔石!?
これが「no data」の正体?
本体の魔石が見えたと思った瞬間、散らばった魔石が吸い寄せられるようにくっつき、元の魔石の塊に戻る。
あの中心にある魔石が他の魔石を集めている。
あの中心にある魔石を壊さないとダメだ。
わたしは無数の氷の槍を作りだす。
氷の槍を放とうとしたとき、濁った水が流れてくる。
わたしが放出した綺麗な水は汚い毒沼に変わる。
見えなくても、この目の先に魔石はある。
わたしは無数の氷の槍を放つ。
でも、衝撃を感じない。
見えないけど、氷の槍が空を切った感じだけが伝わってくる。
探知スキルで確認する。「no data」の文字は移動していた。
つまり、逃げられた。
そして、分かったことがある。
魔石が動いたことで探知スキルの表示も動いた。
つまり、探知スキルは魔石を認識しているってことだ。
だから、魔物が大きくても小さくでも、探知スキルの反応は変わらなかった。
通常でもキングサイズでも、同じ表示。
魔石を持っていない動物は探知スキルに反応はしない。
金死蝶も魔石がないから反応しなかった。
神様も探知スキルの説明書でも付記してくれたらよかったのにと、今更に思ってしまう。
もっとも、ゲームするときに説明書を読まずに始めてしまう自分には言われたくはないと思うけど。
でも、探知スキルが魔石に反応するってことは、「no data」のところに向かえば、あの魔石があるってことだ。
だが、問題点があるとしたら、クマの水中呼吸は地上と違って、速く移動はできない
歩く速度ぐらいだ。
それとも、上手に扱えば、もっと速く移動できるのかな?
ここに来るまで、色々と確かめたけど、速く移動はできなかった、
ただ、スキップする感じで移動すると、空気玉も跳ねる感じで、少しだけ速度が上がった。
クマの格好でスキップなんて、人前じゃ絶対にできない。
でも、歩くよりは全然速いので、わたしはスキップしながら、「no data」に向かう。
それにしても、あの魔石の集合体はなんだったんだろう。
考えられるのはこの沼に取り込まれた魔物たちの魔石ってことぐらいだ。
中心にあった紫色の魔石は拳ほどで、少し大きめだったけど、クラーケンの魔石ほどの大きさはなかった。
でも、魔石の集合体の大きさはクラーケンの魔石の大きさを超えていた。
もしかして、巨大生物になる前触れじゃないよね?
もっとも、すでに巨大沼の生物になっているけど、
でも、 倒しても無報酬かと思ったけど、大量の魔石が手に入りそうだ。
そう思ったのも一瞬で。
「でも、魔物を倒すには魔石を破壊しないとダメだよね」
そうなるとやっぱり、今回の戦いは無報酬になりそうだ。
こんな魔物は放置できないし、ゴジールさんのお酒の材料のため。カガリさんに美味しいお酒を飲んでもらうためと、割り切ろう。
わたしはスキップしながら、「no data」のところへ向かう。
決して、ルンルン気分でスキップしているわけではないことは言っておく。
そして、少し時間はかかったけど、近くまでやってくる。
反応は目の前だ。
先ほどと同じように水魔法で汚い水を押し出す感じで、水を放つ。
紫色の濁った水が押し出され、綺麗な水になる。
そこには先ほどの集合体の魔石が現れる。
無数の氷の槍を作り出し、破壊の準備は万全にする。
そして、氷の槍を放とうとした瞬間、クマの空気玉が揺れる。
「なに?」
クマの空気玉が波打つように激しく揺れる。
洗濯機の中にいるようだ。
氷の槍を放つ事ができなかった。「no data」が離れていく
なんなのよ。
うぅ、気持ち悪い。
三半機能が狂う。
衝撃を受けて、転がったときも目が回ったし、流石にクマ装備でも、守ってくれないみたいだ。
このままでは最悪なことになる。
先ほど食べたお菓子が……。
女の子として尊厳を保たないと。
わたしはクマの空気玉を上昇させる。
でも、揺れて、上手に浮上できない。
わたしは土魔法でクマの空気玉を包むようにして、その土を沼の下に伸ばす。
沼の奥下に到着すると土魔法がクマの空気玉を押し上げてくれる。
そのまま一気に上昇する。
そして、毒沼から無事に脱出する事ができた。
柱は安全な場所まで伸びる。
「もう、なんなの」
もう少しで倒せたのに。
わたしは柱の上に立ち、周囲を確認する。
「カガリさん?」
上空には大人姿のカガリさんが、毒沼と戦っている姿があった。
カガリさんは空を飛び、毒沼に攻撃をしている。
その度に、毒沼は大きく揺れる。
もしかして、カガリさんが毒沼に攻撃を仕掛けたから、沼が動き出したみたいだ。
「カガリさん!」
声をあげると、カガリさんがわたしに気づく。
「やっぱり、お主、生きておったか」
「勝手に殺さないでよ。でも、やっぱりって?」
「お主のクマたちが心配はするが、悲しんでいる様子はなかった。お主が死ねば、あのクマたちは泣くじゃろう。でも、泣かずに、心配しておった」
くまゆるとくまきゅうには心配させたみたいだ。
「でも、カガリさんは?」
「お主が生きていると分かっても、沼に取りこまれたのじゃぞ。ほっとおくわけにはいかぬじゃろう」
「もしかして、助けに来てくれたの?」
「お主に妾の酒のために死なれたら、サクラになんと言ってよいのか分からぬ」
まあ、自分の酒のために戦って死んだとは言えないよね。
助けに来てくれたのは嬉しいけど、もう少しで魔石を破壊できた気持ちもある。
「それで、この沼はなんなんじゃ?」
「カガリさんでも分からないの?」
「初めはスライムかと思ったのじゃが」
わたしもそう思った。
「違うの?」
「分からん」
カガリさんはそう言って、液体状のヴォルガラスを火の魔法で倒す。
探知スキルでも「no data」で分からない。
神様でも分からないことはあるみたいだ。というか、普通の魔物は名前は表示されるけど、特別な魔物は「no data」と表示される。
分からないのか、わざとなのか分からない。
ただ、今後「no data」と表示されたら、気をつけないといけない。
「じゃが、どうやって倒すかのう」
「そのことだけど」
わたしは毒沼の中でのことを話す。
「魔石の集合体か……」
「それを壊せば、倒せると思うんだけど」
「お主、それが分かっていて、目の前にして、壊せなかったのか?」
「攻撃を仕掛けようとしたときに、誰かさんが沼と戦い始めて、沼が動き出して、攻撃ができなかったんだよ」
わたしを助けるために戦い始めてくれたから、言うつもりはなかったけど。
「それはすまなかったのう」
「でも、わたしを助けるためだったんでしょう」
だから、強く文句は言えない。
カガリさんの優しさだ。
わたしを助けに来てくれた行動が嬉しいから。
「それに、倒す方法はあると分かっているんだから、楽でしょう」
「そうじゃのう」
わたしとカガリさんは、盛り上がる毒沼に目を向ける。
960話にして、探知スキルのシステムが判明しました。
探知スキルは魔石に反応します。どの魔物の魔石なのか探知スキルが判別します。
なのでキングだろうが、普通のサイズだろうが、同じ名前の魔物の名前が表示されます。
「no data」は神様でも知らない魔物。もしくはわざと表示させていないのかもしれません。
この辺りの設定は、途中で思い付いたもの(そうは言ってもかなり昔。この作品も10年続いているので)だったのですが、一人称作品では説明する機会がなく、960話にして、ユナが気付いた感じになりました。まあ、この設定がなくても、なにも問題はないのですが。普通の魔物はそんなに大きくないですし、探知スキルの表示画面も拡大もできないので、魔物の体のどこに魔石があるか判断することもできないので。戦いにおいては無意味なものです。でも、今回の沼のような魔物なら、およその位置に魔石があると分かることは戦闘で有利になるのは間違いないです。
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活動報告にて、書籍23巻の書き下ろし、店舗購入特典の書き下ろしのリクエストを募集中です。
参考にしたいと思います。リクエストがあれば活動報告にて、よろしくお願いします。
22巻の発売の情報はもう少しお待ちください。
※誤字を報告をしてくださっている皆様、いつも、ありがとうございます。
一部の漢字の修正については、書籍に合わせさせていただいていますので、修正していないところがありますが、ご了承ください。




