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くまクマ熊ベアー  作者: くまなの
クマさん、新しい依頼を受ける

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989 クマさん、学生たちと再開する

「あっ、ルリーナ姉ちゃんです」


 シュリが指さす先を見ると、ルリーナさんが渦の上を通るところだった。

 4つの渦巻きを綺麗に通っていく。


「ルリーナ姉ちゃん、すごい」


 見ているとルリーナさんの後ろからきたボートは渦にハマって、減速してしまう。

 上から見ているから、渦の動きは分かるけど、ボートからの視線だと渦の回転の方向がわかりにくいと思う。

 でも、これって、覚えゲー。

 渦の発生の回転を覚えておけば、渦の発生方向に上手に乗れば、減速せずに渦の上を通り抜けられる。

 そう思って渦を見ていると、渦が止まり、逆回転し始める。


「えっ? 渦が逆回転していない?」

「ああ、昨日マーネ様が時間で渦が逆回転するようにしたと言っていました」


 わたしの疑問にセレイユの父親が説明してくれる。


「そうなんですか?」

「同じ回転方向では、みんな回転に合わせて通るだろうって言って」


 プロペラを2つ付けたのかな。

 でも、確かに、練習で回転方向が分かっていたら、怖くなくなる。ランダム回転なら直前まで、どっち周りに通ればいいのか分からない。

 

 これは運要素が高まっていく。

 ゲームとしてありだけど、レースとしてはどうなんだろう。

 実力が反映されない。


「ユナさん、どうしたのですか? そんなに考えて」

「えっと」


 わたしが考えている事を話した。


「確かに、実力があるのに運で負けるのは悔しいですね」

「あの渦を見て、そのあたりの線引きが難しいなと思って」


 元は渦の強さを変えたら運要素が入って、面白いかもと提案したのはわたしだ。


「まあ、それを考えるのが主催者の我々の仕事ですな」

「そもそも、全員が満足する案なんてないよ。誰かしら文句を言う人はいるから。その声を小さくするのが主催者の仕事だね」

「難しいです」


 セレイユの父親とわたしの言葉にノアは考え込む。多い意見を選べば、少ない意見は消される。少ない意見を選べば、多い意見が消える。

 両方の意見が共存できるならいいけど。共存できないなら、片方をとるしかなくなる。

 こればかりは仕方ないことだ。


 直進だけのレースとカーブだけのコース。

 子供と大人。男と女。うどん屋とラーメン屋。

 肉屋と魚屋。

 海と山。

 剣と魔法。

 水と油。

 無料と有料。


 共存できるものもあるけど、どっちかを選ぶのは難しい部分もある。

 こればかりは仕方ないことだ。


 それから、わたしはセレイユの父親と行動するノアとミサと別れ、学園に向かう。

 学園が終わる頃、セレイユに来て欲しいと頼まれていた。

 そのときは、ちゃんと私服か、王都の制服で来るように言われているので、渋々と私服に着替えている。


「あっ、ユナだ」

「本当だ」


 校舎の近くを歩いていると、学生服を着た女の子たちが、わたしに気付き、駆け寄ってくる。


「えっと……」


 なんとなく覚えがある。


「……交流会で戦った」

「そういえば名乗っていなかったわね。わたしはアンヌ」

「わたしはクレルよ」


 長い髪を後ろでリボンで結んでいるのがアンヌで、髪が肩ぐらいまでの女の子がクレル。


「それで、そっちの女の子たちは?」

「わたしが住んでいる街の子だよ。ボートのイベントに参加するから、一緒に来たんだよ」

「フィナです」

「シュリだよ」

「わたしはアンヌ」

「わたしはクレルよ。よろしくね。ユナには学園の交流会のときに、やられたのよ」


 2人は、わたしに自己紹介したようにフィナとシュリにもする。


「ノア様から、交流会のお話は聞いています。ユナお姉ちゃんが、参加したって」

「ノアール様を知っているの?」

「その、お友達なので」


 フィナは貴族の令嬢のノアを友達と言っていいのか、悩んだ感じだったけど。ちゃんと言えた。


「ノアール様とお友達?」


 アンヌは少し驚く。


「今回のボートのイベントもノアに誘われたからだよ」

「ユナ、ボートのイベントに参加するのよね」

「うん、まあ、一応」

「それじゃ、ユナにリベンジできるのはノアール様のおかげってことね。ノアール様に感謝しないと」


 結果的にそうなるのかな。


「ふふ、ユナはボートを乗るのは初めてよね」

「昨日、乗ったよ」

「つまり、昨日が初めてってことね。わたしは3年よ」

「つまり、わたしたちが有利!」

「交流会の借りは返すわ」


 アンヌとクレルは宣言する。


「えっと、素人相手に言っていて恥ずかしくない?」


 相手が初めてやるゲームに「俺(わたし)、このゲーム3年やっているから、負けない」と言っているようなものだ。


「思わないよ。だって、相手はユナよ」

「それに、今回のボートイベントのルール改正はユナの案なんでしょう。セレイユ様から聞いたわよ」

「つまり、ユナはルールを熟知しているってことでしょう。ボートの操作はわたしたちが有利だけど、新しいルールに関してはユナのほうが有利ってことだから、手加減はしないわよ」


 確かに、みんなよりルールを熟知している。

 だからと言って、ボートの操縦は昨日、乗っただけだ。


「それと、あのポスター、ユナが描いたって本当? 凄く上手だったけど」

「あの加速ボタン? セレイユ様に説明を聞いたけど、ポスターがあったから分かりやすかったわ」


 あの4コマ漫画風のポスターが役にたったみたいだ。


「それで、みんなはこれからボートに乗りに行くの?」

「そうだった。早くいかないと。ユナはどうしてここに? ユナも練習?」


 学生の部の練習は学園が終わった後の時間になる。

 他の部の練習はできない。

 だから、学生の部に参加予定のわたしも練習をするなら、この時間になる。


「その前にセレイユに会いに来たんだけど。どこにいるか知っている?」

「セレイユ様なら、参加する人たちに説明するために、ボートのところにいるはずよ」

「わたしたちは、用事があったので、これから行くところです」

「ユナも一緒に行きましょう」


 わたしはアンヌとクレルを同行者に追加して、ボート乗り場にやってくる。

 ボート乗り場には水着に着替えた学生たちがいた。

 その中にはセレイユの姿もある。

 でも、女の子しかいない。

 男の子がいない。


「セレイユ!」


 声をかけるとセレイユが振り向く。


「ユナ!」

「結構、人がいるね」


 10人ぐらいの女の子たちがいる。

 しかも、湖を見ると、すでにボートに乗っている女の子たちもいる。


「ええ、20人ほど集まったわ」

「そんなに?」

「あのポスターのおかげと、あらためてユナが参加すると知った子たちが参加してくれることになったのよ。初日でこれだから、もっと増えるかもね」


 わたしの名前で参加者が増えるのは、なんとも言えない気持ちになるけど、ポスターの効果があるのは嬉しい。


「女の子だけ?」


 男の子たちがいない。


「女子と男子で時間をずらして練習をすることになっているんですよ」


 クレルが答える。


「ボートの数も限りがありますし、水着姿を恥ずかしがる女の子もいます。イベントのときは仕方ありませんが、練習のときは分かれてすることになっています」


 少し離れた場所からボートに乗っている水着姿を見られるのはいいけど、近くで、男の人にジロジロ見られるのは、わたしも嫌だ。


「セレイユ様、わたしたちも着替えてきますから、新しいボートについて教えてくださいね」

「ユナ、行きましょう」


 わたしはアンヌとクレルに引っ張られるように着替え室(仮)がある小屋に移動する。

 そして、ボートに乗るため、水着に着替えることになる。


「ユナって、細くて綺麗ね」

「でも、胸が……」

「女の素晴らしさは、胸の大きさで決まるものではありません」


 わたしの代わりにクレルが代弁する。ちなみにクレルの胸が控えめで、アンヌは……大きい。


「でも、男は見るわよ」

「そんな男はこちらから願い下げです」


 まあ、それにはクレルに同意だ。

 水着に着替えたわたしたちは、セレイユのところまでやってくる。

 フィナとシュリは楽しそうにボートを見ている。


「いいのですか?」

「やった」


 2人が喜んでいる。


「どうしたの?」

「ボートの練習を終えたら、お二人をボートに乗せる話をしていたんです。お二人が加速するボートに乗りたいと言うので」


 複数人乗れるボートはある。

 でも、そのボートには加速の魔石がついていないはずだ。

 加速付きは、あくまで大会用だ。

 そのことを言うと。


「マーネ様がシュリちゃんたち加速のボートに乗れない子のためにボートに魔石を取り付けてくれたんですよ」


 マーネさん、仕事し過ぎでは? それとも、ボートに加速の魔石を取り付けるように指示を出しただけとか?


「でも、大丈夫なの?」

「危険な場所で使わなければ大丈夫ですよ」


 フィナとシュリは、わたしたちが練習を終わるまで見学することになった。


「それじゃ、残りの皆さんにも説明しますね」


 セレイユは遅れて来た人たちに説明をする。


「ポスターを見て知っている人もいると思いますが、ボートが速くなる魔石が3つつけられました。それぞれ、右側から、加速の速度が弱、中、強となっています。それと反比例するように時間が長く、普通、短いとなっています」

「つまり、弱は加速は弱いけど時間は長くて。強は加速は強いけど、時間は短いってこと?」


 女子生徒の1人が尋ねる。


「はい、魔石の籠められている魔力量は同じですので、反比例するようになっています」

「どこで使えばいいの?」

「自由です。好きな場所で使ってください」

「好きな場所?」

「みなさんのボート操作の技量次第では、どこでも使えます。ゆっくり通る場所を加速して、相手との距離を縮めるのもいいですし、前を走る相手が使ったから、離されないように使うのも自由です。走り方は人によって異なります。カーブが得意な者、ジャンプが得意な者、競り合いに強い者。いろいろとあると思います。そして、今回は魔道具で渦を発生させています。そこで使う方法もあります」

「渦って、ぐるぐる回っているやつ?」

「はい、そうです。ボートの操作が難しいですが、上手に加速を使えることができれば、相手との距離を広げたり、縮めたりできます。どこで使うかは友達と相談しても構いませんし、1人で考え、自分だけのものにしても構いません」


 友達と情報を共有すれば、情報は増える。でも、その分、相手も強くなる。

 1人なら、情報は自分だけのもの。でも、情報量は減る。

 まあ、相手の走っているところを見て、それを参考にする方法もある。


「加速する魔石の交換は自分たちで行ってください。魔力の挿入も各自でお願いします。魔力が少ない人はわたしが魔力を挿入しますので、言ってください」


 参加する人たちは魔法の交流会に参加していた人たちがほとんどだ。なので、魔力はあるので、それぞれが魔石に魔力を入れることになったらしい。でも、全員ではないので、補佐的にセレイユや魔力が多い子が手伝うことになったらしい。



学生たちのリベンジですね。


※新作、「殺された魔法少女、異世界に行く」の連載を始めました。

お時間がありましたら、こちらもよろしくお願いします。

くまゆるとくまきゅう、出てきます。(名前が同じだけのクマです)


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※22巻の発売の情報はもう少しお待ちください。


※誤字を報告をしてくださっている皆様、いつも、ありがとうございます。

 一部の漢字の修正については、書籍に合わせさせていただいていますので、修正していないところがありますが、ご了承ください。

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― 新着の感想 ―
タイトルの再開は再会では?
>そのときは、ちゃんと私服か、王都の制服で来るように言われているので、渋々と私服に着替えている >「あっ、ユナだ」 【クマ服】のユナしか識らない相手が、【クマ服】ではないユナを「ユナ」と認識できない…
>そのときは、ちゃんと私服か、王都の制服で来るように言われているので、渋々と私服に着替えている ユナが、ドレスや水着、王都の学園の制服、和の国からの荷物に在った着物や浴衣、それにセレイユに着せられた…
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