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くまクマ熊ベアー  作者: くまなの
クマさん、新しい依頼を受ける

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1012/1014

988 クマさん、参加者から話を聞く



 わたしたちは湖のボート乗り場にやってくる。

 すると、冒険者らしい人から一般の人までたくさんいた。

 らしいと言うのは、みんな水着だからだ。

 武器も防具もつけていない。

 なので、冒険者っぽいと言うのがわたしの感想だ。


「すげえ、なんだ。あの加速」

「追い抜いたとき、最高の気分だな」

「追い抜かれたときは最低の気分だけどな」

「でも、3つしかないのは残念だな。10個ぐらい付けてほしい」

「それじゃ、お前はずっと使いっぱなしだろう。3つしかないのは頭を使えってことだろう」

「そうよ。3つとも速度が違うんだから、どのタイミングで使うか、使いどころを考えて、使えってことでしょう。あなたみたいになにも考えずに最初に使って、最後に追い抜かれて負けるのが目に浮かぶわ」


 女性が辛辣な言葉を発する。

 プロポーションがいいけど、女性も冒険者かな?

 水着だと分かりにくい。

 わたしはアンズの父親を思い浮かべる。

 この世にがたいがいい宿屋の亭主もいる世界だ。

 なので、一般人の可能性もある。


「でも、ジャンプ台は爽快だった」

「着水に失敗して、ボートが転がっていた奴もいたな」


 冒険者たちは笑う。

 それって、笑いどころなのかな。

 失敗したら怪我をするよ。

 でも、話を聞く感じ、好評みたいだ。

 会話を盗み聴きをしているとセレイユの父親が冒険者っぽい人たちに向けて歩き出す。


「少しいいかい」

「誰だ」


 肉付きのよい男性がセレイユの父を見て、怪訝そうにする。


「なにを言っているんだよ。この街の領主様だよ」


 女性が男性に向かって肘鉄をする。


「申し訳ありません」

「いや、いいんだ。領主とはいえ、全ての住民がわたしの顔を知っているとは思っていない。それで、聞きたいことがあるんだが、いいかい」

「はい」

「今回の件、ルールをいきなり変えてしまったことを謝罪する。でも、少しでも楽しいイベントになればと思ってしたことだ。許してほしい」

「初めは時間もないのに、ルールを変えるのかと思ったのですが、このボートに乗って、ルール変更にも納得しました」

「はい。とっても楽しいです」


 冒険者っぽい人たちは、丁寧に受け答えをする。


「それで、乗ってみた感じはどうだったかい? 今年は無理だが、改善できる箇所があれば、来年には改善したいと思っている。なにか意見があったら聞かせてほしい」


 冒険者っぽい人たちは顔を見合わせる。


「そうですね。よい改良だと思います。あの一瞬だけど加速して、追い抜くのは爽快です」

「でも、抜かれるのは、気持ちよくありませんが」


 それは仕方ない。

 競争で追い抜くのは、誰だって気持ちがいい。

 逆に抜かれたら、悔しいし、気分がいいものではない。

 でも、それが勝負だ。


「領主様、加速のボタンを、もっとたくさんつけてください」

「それをしたいのは山々だが、魔石の数と、魔力を充填する人材も足らない」

「そうですか」


 男性冒険者は残念そうにする。


「まだ、改良点はあると思うが、今年はこれで行う予定だ。危険もあるかもしれないが、君たちなら大丈夫だと判断した」

「そうですね。あの加速する魔石を使う場所を間違えると危険ですね」

「それはバカがすることだよ。ちゃんとした場所で使えばいいだけさ」


 女性の言うとおりだ。

 なんでも使い場所がある。


「イベントが終わったあと修正箇所の要望があったら、言ってほしい。できるかどうかは分からないが、来年に向けて検討したい」

「分かりました」

「それじゃ、怪我をしないように練習をしてくれ」


 セレイユの父親は会話を打ち切ると歩き出す。


「他の人にも聞きたいが、その前に、ボートが走っているところが見える場所に移動しよう」


 わたしたちは橋の上に移動する。

 橋の下をボートが通る。


「あそこに渦が回っています」


 フィナが指差す先には渦が等間隔に4つ回っている。

 しかも、同じ回転ではない。右、左、右、左と回転している。

 まさか、マーネさん、逆回転を作っているとは思わなかった。


「この橋の上から見えるように設置した」


 橋の柵の高さは1mほど。

 子供のフィナたちでも見える。


「渦の上をボートが通ったよ」


 シュリが柵の上から乗り出す。


「シュリ、そんなに乗り出すと危ないよ」


 フィナがシュリの体を引っ張る。


「大丈夫だよ。落ちたりしないよ」


 シュリはフィナに引っ張られないように体の重心を前に動かす。

 その瞬間、フィナの力が緩み、シュリの体が前に移動する。

 落ちると思った瞬間、セレイユの父親がシュリの服を掴んでいた。


「危ない。ちゃんとお姉ちゃんの言うことは聞くんだよ」

「ごめんなさい」


 シュリはちゃんと謝る。


「でも、当日は興奮した人が、前のめりになって落ちたりするかもしれないな」

「あと、ボートを見たくて、後ろから押されるかも」

「観客席も見直さないといけないな」


 引きこもりのわたしは行ったことがないから、分からないけど。

 アイドルの野外コンサートでは、少しでも近くでみようとして、後ろから押されたりするのかな?

 まあ押されて怪我をしていたら、ニュースになるから、そんなことはないのかな。


「でも、橋での対応策なんてあるのですか?」


 ノアが尋ねる。


「思いつくのは、後ろに簡易的な柵を作ることだな」

「前でなく後ろですか?」

「自分の意志とは関係なく、後ろから押されるのが一番危険だ。だから、橋から見える人数は制限をつけて、一列のみにするのが妥当になるかと」

「もしくは子供限定にしてもいいかも。子供なら頭ぐらいしか柵から出てないでしょう。そして、その子供の後ろから大人が覗く事もできるし」


 わたしはセレイユの父親の案に付け足す。


「確かにそうですね。大人が前にいたら、後ろにいる子供は見ることができません」

「なるほど、確かに、その案を採用しましょう」


 わたしとノアの言葉に、セレイユの父親は簡単に決めてしまう。


「警備する者も注意をしやすい」


 ちゃんと見学するルールを決めておけば、ダメと言える。

 一番ダメなのは、曖昧なことだ。

 どっちが悪いとかでの、トラブルの原因にもなる。


「人気な場所があれば、予約制にしてもいいし」

「予約ですか?」

「見るに適した場所って、みんなそこから見たいものでしょう」

「そうですね。ユナさんの活躍が見える場所で見たいです」

「つまり、人気の場所があれば取り合いになる。取り合いになればトラブルになる。最悪、喧嘩にもなる」

「ユナさん、よくわかりますね。去年も争いがありました」


 セレイユの父親が去年のことを話してくれる。


「だから、初めから誰が見るか決めておけばいいかと。応募の人数が多かったら、抽選にしたりとか。あと、お金持ち優遇はしたくないけど、お金もとってもいいし」


 指定席みたいなものだ。


「お金を取るのですか?」

「自分の子供のためにいい場所で見たい親もいるでしょう」

「いると思いますが」

「イベントを開催するにはお金がかかる。街を盛り上げるためと言っても、資金は有限。どこかしらお金の回収をしてもいいかと思うけど」

「街の税金で行うつもりでしたが、そういう考え方もあるのですね」

「もちろん、それでもいいと思うよ。でも、使えるお金は決まっているでしょう。だから、ボートに魔石は一つだけって固定観念が植え付けられて、魔石を複数付ける考えが思いつかなかった」

「お金の上限は決まっていましたので」


 お金は勝手に増えるものではない。

 錬金術でもないかぎり、お金は増えない。

 どこかで、お金を増やすことは必要だ。


「だから、お金が取れるとこからはとってもいいかと」

「ユナさんなら、あとはどこからお金を取りますか?」


 ノアが尋ねてくるけど、変な知識を入れて、あとでクリフに怒られないかな?


「わたしも参考として聞きたいです」


 ミサにまで言われる。


「屋台を募集して、人が集まる場所の場所代をもらうとか?」

「場所代ですか?」

「人が集まれば物が売れる。誰も人がいない場所で物は売りたくないでしょう」


 山奥で商売しても人はこない。

 都内で商売する方が人が来る。

 だから、人が集まる場所の家賃などのテナント料は高い。


「イベント一つやるだけでも大変なんですね」

「仕事に楽なことはないよ。まあ、部下に仕事を放り投げて、上が楽する方法もあるけど」


 わたしみたいに。

 わたしの店の管理はティルミナさんに任せてある。

 卵の管理も商業ギルドとの話し合いも。

 料理に関してはモリンさんとアンズに任せてある。

 わたしはなにもしていないのに、売り上げの一部が入ってくる。


「そんな上司は嫌ですね」


 うぅ!

 わたしは心にダメージを受けた。


「わたしたち貴族は指示を出す立場ですが、街のために頑張ってくれる人に、そんなことはしたくないです」 


 うぅ! うぅ!

 さらに心に追加ダメージを受ける。


「フィナもシュリも嫌ですよね」

「はい。無理を言われても困ります」

「うん!」


 うぅ! うぅ!

 連続で心にダメージを受ける。


「ユナさん、どうかしたのですか?」

「みんなの言葉が心に突き刺さったんだよ。わたしがいかに、とんでもないオーナーだったかと」

「ユナさんが、とんでもないオーナーですか?」


 わたしは自分が思っていることを話した。

 すると、みんなが笑い出す。


「ユナお姉ちゃんが、ちゃんとお店のために頑張っていることは知っています。困ったことがあればちゃんと考えてくれます」

「そうです。とんでもないオーナーとは、困ったこともすべて放り投げることです」


 フィナとノアが擁護してくれる。


「お母さん、ユナお姉ちゃんに相談すれば、解決してくれるから、助かるって言っていました」

「モリンおばちゃんとカリン姉ちゃんも同じことを言っていたよ」

「わたしは、ユナさんが、どのように店の経営をしているかは分かりません。でも、店で働く子供たちを見れば、無理やりに働かせたり、無理強いをさせていないことは分かります」


 シュリとミサも擁護してくれる。


「みんな、ありがとう」


 少し、嬉しい。

 そんな様子を見ていたセレイユの父親は笑っていた。



冒険者たちからは好評のようです。

次回、学生たちと再開です。


※新作、「殺された魔法少女、異世界に行く」の連載を始めました。

お時間がありましたら、こちらもよろしくお願いします。

くまゆるとくまきゅう、出てきます。(名前が同じだけのクマです)


※7月3日にくまクマ熊ベアー外伝~ユナのよりみち手帖~ 5巻が発売しました。

※6月5日にくまクマ熊ベアーのコミカライズ14巻と文庫版13巻が発売しました。

店舗購入特典もあります。詳しいことは活動報告にてお願いします。


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クーポンの配布方法:購読者にメールでクーポンコードを配布するそうです。

くわしくはFuuuuオンラインショップにて、お願いします。


※PRISMA WING様より

くまクマ熊ベアーぱーんちのフィギュアが10月に発売予定です。


※22巻の発売の情報はもう少しお待ちください。


※誤字を報告をしてくださっている皆様、いつも、ありがとうございます。

 一部の漢字の修正については、書籍に合わせさせていただいていますので、修正していないところがありますが、ご了承ください。

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