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くまクマ熊ベアー  作者: くまなの
クマさん、新しい依頼を受ける

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985 クマさん、いろいろと手伝う

 ボートで出発する3人を見送る。


「まさか、セレイユの父親まで来るとは思わなかったよ」

「セレイユ様が、いろいろと提案したのが理由みたいです」

「ノアとミサはどこまで話を聞いているの?」

「一応、ここに来るまでに話はお聞きしましたが、ユナさんの提案は採用するそうです」

「ノアお姉様が、10歳以上の部でも採用してくださいと言ったりしていましたが」

「そんなことを言ったの?」

「わたしだって、加速するボートに乗りたいです」

「乗るのは自由じゃない?」

「大会で競いたいです」

「それは、流石に」

「でも、セレイユ様が危険があるので、10歳以上の部では止めた方がいいと進言して」

「いろいろとあって、セレイユのお父様と今回のイベントの主催を管理するバードさんが実際にボートに乗って判断することになったんです」

「それと、渦を発生させる場所もコースを回って確認したいと言っていました」


 まあ、加速するボートも渦を発生する魔道具を設置する場所も実際にボートに乗り、コースを把握したほうがいい。

 言葉や地図を見ただけでは分からないことも多い。

 言葉や地図は、あくまで参考資料だ。


 わたしたちがノアとミサから話を聞いていると、セレイユたちが戻ってくる。


「面白い、採用」


 セレイユの父親がボートから降りた一言目がそれだった。


「はい、面白いです。どうして、思いつかなかったのか」


 バードさんもセレイユの父親の言葉に同意する。


「魔石は一つって概念に囚われ過ぎたみたいだな」

「確かに、コスト面を考えて、魔石を増やす考えは初めから無くしていました」


 もちろん、お金を使わないで楽しいことが一番いい。

 だからと言ってお金を使わないで、つまらないものをやるのは違う。


「それじゃ、10歳以上の部でも」


 ノアが嬉しそうに尋ねる。


「ノアール嬢には申し訳ないが、セレイユの提案通りに、10歳以上の部ではなしにさせてもらう」

「そんな」

「まだ、ボートに乗り慣れていない年齢だ。そんな子供たちを加速させるボートに乗せるわけにはいかない」


 まあ、そうなるよね。

 ゴーカートでブーストをつけるようなものだ。

 今回に限っては、セレイユとセレイユの父親が正しい。


「問題は一般の部ですな」


 バードさんが少し悩みながら言う。


「一般の部に参加する人は魔力の扱いにも慣れている人もいますが、今回、初めて乗る人もいます。悩みどころですな。盛り上がるのは間違いないのですが」

「マーネ殿、魔石の準備の方は?」

「ユナが手伝ってくれているから順調よ。問題があるとしたら、使い切った魔石に魔力を補充する人員ぐらいね」


 魔石は使えば、魔力は消耗する。

 魔石の仕組みは分からないけど、時間が経てば自動で魔石の中の魔力は回復する。

 大気中にある魔力でも吸っているんじゃないかとわたしは思っている。

 でもそれには時間がかかる。

 わたしのお風呂のお湯を出す魔石も1日1回しか使わないから、ほぼ交換の必要はない。

 砂漠の街にある水は出し続けているけど。

 ムムルートさん曰く、魔法陣やピラミッドの力で魔力を集めているんじゃないか、とのことだ。

 だから、急いで魔石に魔力を入れるなら、人力で入れないとダメになる。


「1つのボートに魔石が4つ。レースは10台。40個の魔石」

「事前にその3倍の数はほしい」

「本来なら、冒険者ギルドに依頼し、魔力を持つ冒険者に頼むところだが」

「その冒険者が参加しますからね」


 参加するなら、仕事は受けられない。

 まあ、レースを走る合間にできなくはないと思うけど。

 微妙なところだ。


「ですが、この面白いアイデアを使わないのはもったいないです」

「……それなら、試しに学生だけの部を作って、そこはOKにしたら」

「学生の部ですか?」

「学園からも参加する人はいるんだよね? 学生で参加する人なら、魔力の扱いにも慣れているでしょう」

「確かにそうですね」

「それに学生だけにすれば、人数も絞れる。大会を見ている人は盛り上がる。今回は来年は参加したいと思ってくれる人の布石にすればいいんじゃないかな」

「確かに、そうですね」

「学生たちなら、セレイユの口添えがあれば、どうにでもなるでしょう」


 旗取りの案を出したときにセレイユは自分で言っていた。セレイユはこの街の領主の娘で、学園では慕われている。


「ユナの思考がどうなっているか、頭の中を見てみたいですね」

「怖いことを言わないでよ」


 話し合いの結果。

 10歳以上の部と一般の部は現状維持。

 強者の部には加速する魔石が取り付けられ、渦も採用。

 そして、新たに学生の部が作られる。その学生の部は強者の部と同じルールが採用される。

 現在、申し込んでいる学生は自動的に学生の部に回されるとのことだ。

 そして、改めて、学生たちに募集をかけるとのこと。

 ちなみに、その代わりに旗取りは不採用になった。

 理由としては、ボートがメインでなく、魔法がメインになってしまうこと。

 ただ、面白い案だったので、来年には採用したいとのこと。

 少し残念だけど、難しいのは確かだ。

 話が終わると、ノアが口を開く。


「あのう、セレイユ様は学生なので、学生の部に参加すると思いますが、ユナさんはどっちに参加するのですか?」


 確かに、言われてみればそうだ。


「わたしは一般の部? もしくは強者の部になるのかな? でも、それだとセレイユと勝負ができないね」

「ユナには学生の部に参加してもらいますよ」


 セレイユが悩むこともなく答える。


「わたし、学生じゃないよ」

「王都の学生として参加すれば問題ありません」

「そんな嘘を? いいの?」

「ユナ、このイベントの主催者は誰だと思っているんですか?」

「それは、セレイユの父親?」


 わたしは近くにいるセレイユの父親に目を向ける。


「はい、わたしの父です。父が了承すれば、問題ありません。ですよね、お父様?」

「許可しよう」


 この場で、わたしも学生の部に参加することになった。

 職権乱用だと思うけど。

 まあ、わたしも一般の部に出るよりは、加速がある部のほうがいい。なにより、セレイユと勝負がしたいからね。


「急いで人集めをしないといけませんね。人が集まらなかったら、盛り上がりませんから」


 セレイユは学園に行って、募集すると言う。


「それなら、ユナさんにポスターを描いてもらったら、どうですか?」


 ノアが変なことを言い出す。


「ポスターですか?」

「はい。クリモニアでリバーシのイベントをやったとき、ユナさんがポスターを描いたんです。そしたら、目を引き、参加者が増えたんです」

「ユナ、あなたは絵も描けるのですか?」

「まあ、上手じゃないけど」

「とユナさんは言っていますが、もの凄く上手です」

「はい、ユナお姉様の絵は可愛らしいです」

「ユナ姉ちゃんの絵は上手だよ」


 ノアの言葉にミサとシュリまでが同意する。

 これって、わたしの仕事が増えるってことだよね。

 わたしは断ろうとして、みんなを見る。

 ノアたちが輝く目でわたしを見ている。

 セレイユまでが、絵が見たいと訴えている。

 断ることができない雰囲気だ。


「えっと、学園のポスターだけでいいんだよね」

「描いてくださるのですか?」

「描くよ。描けばいいんでしょう」

「ありがとうございます」


 ノアやミサ、フィナにシュリ、それにセレイユも目を輝かせているんだから、断れないでしょう。

 わたしって、いつから、こんなに優しくなったんだろう。

 でも、その答えは目の前にある。

 フィナたちが嬉しそうにしている表情が答えだ。


 そして、湖の地図を開き、渦巻きの設置場所を決め、イベントの方針も決まると、わたしたちは動く。

 セレイユの父親とバードさんはルールの変更の告知をする。

 セレイユは学園に向かうことになる。

 ノアとミサは話し合った結果、セレイユの父親に勉学のため、付き添う許可をもらっていた。


「将来を背負う貴族令嬢たちの頼みです。このようなイベントのものでよければ、構いませんよ」


 今回のことも勉強の1つになるのかもしれない。

 フィナとシュリは、引き続き、わたしとマーネさんのお手伝いをする。

 そして、順調に魔石の複写を終えたわたしはセレイユの家に一度帰る。


「それじゃ、わたしたちは戻るけど、なにかあったら、セレイユの家にいるから、連絡をちょうだい」

「ありがとう。助かったわ」


 わたしは、フィナとシュリを連れてセレイユの屋敷まで戻ってくる。

 屋敷にはセレイユもセレイユの父親も戻っていなかったけど、昼食は用意してくれていたので、わたしたちは遅めの昼食をいただく。

 そして、昼食をいただいたわたしは部屋にもどってくると、ポスターを描くことにする。

 テーブルの上に紙とペンを取り出す。


「フィナ、シュリ、なにかポスターのアイデアってある?」

「アイデアですか?」

「ボートに乗っているところ!」


 シュリが普通のアイデアを言う。って言うか、それぐらいしかない?


「学生さんに向けたポスターなんですよね。それなら、加速ボタンですか? それが分かるポスターを描くとか? 面白いと思って、参加してくれるかもしれません」


 確かに、ボートのルールが変わったことや、楽しいことを描いたほうがいいかもしれない。

 わたしは少し考える。

 一枚のポスターに入れるの難しくない?

 …………ポン。

 一枚が難しいなら、複数枚描けばいい。とりあえず、下書きを描いてみることにする。

 わたしは1枚目に前を走るボートに乗る人が後ろを見て、笑っているシーンを描く。

 そして、2枚目には後ろのボートに乗っている人がほくそ笑みながら、ハンドルにある魔石に触れる。

 3枚目、ボートが加速して、前のボートに並ぶ。前のボートに乗っている人は驚きの顔をする。

 4枚目、後ろにいたボートが前のボートを追い抜き、ゴールする瞬間を描く。


「こんな感じでどうかな」

「ユナお姉ちゃん、凄く分かりやすいです」

「うん、面白い」


 4コマ漫画を参考にしたポスターだ。

 フィナとシュリから好評を得たので、わたしは清書していく。




グタグタ感がありましたが、ルールが決まりました。

初めから学生の部だけにすればよかったかもしれませんが、当初はフィナとノアを参加させたい気持ちがあり、当初は考えがありませんでした。


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