983 クマさん、マーネさんの手伝いをする その1
「えっと、なにをしたらいいのかな? ボートの試運転なら任せて」
ボートの運転はゲームみたいで楽しい。
だから、頼まれれば断ることはない。
「それもいいけど、ユナには今回の件の発案者としての責任をとってもらうわ」
「責任? それなら試運転でボートに乗ったけど」
「それで終わりとは言わないわよね。それに自分から手伝うって言ったんだから」
「……わたしにできることなら」
それしか言うことができない。
「それじゃ、お言葉に甘えて手伝ってもらいましょうか。こっちに来て」
「えっと、その前にボートに乗らないなら、着替えてきてもいい?」
ボートには乗らないらしいので、わたしは着替えてくる。
セレイユもいないので、クマの格好に戻る。
「それで、なにをすればいいの?」
「ユナには魔石に魔法陣を付与するのを手伝ってもらうわ。誰かさんが魔石をたくさん持ってきてくれたからね」
「わたしじゃなくて、セレイユだけどね」
「どうせ、ユナが用意したものでしょう。あまりにも時間が早すぎるもの」
見抜かれている。
「でも、わたし、魔法陣を魔石に付与なんてやったことがないよ」
そもそも、どうやって魔石に魔法陣を付与? 刻むのかもしれない。
わたしが出来るのはクマの魔法陣ぐらいだ。
他の魔法陣に関しては全然分からない。
「ユナさんでも、できないことがあるんですね」
ノアが少し驚いた顔をする。
できないほうが多いよ。
「わたしでも、できるなら、手伝うけど」
「そうね。方法はいくつかあるけど、今回は複写で行っているから、ユナでもできるわ」
「複写?」
「まあ、見てもらったほうが早いわね」
そう言って、マーネさんが作業しているテーブルに移動する。
テーブルの上にはいろいろな物が置いてある。
マーネさんは椅子に座り、テーブルの上にあった紙を手にする。
「まず、この紙は魔力が込められた紙よ」
その紙には図形や文字っぽいのが描かれている。
「魔力が込められた紙?」
「いろいろな用途で使われるけど、今回は魔法陣に使うと思ってくれたらいいわ」
魔力紙、異世界の定番だね。
この世界では見たことがないけど、漫画とかでは契約をするときに使われたりする。
そんな漫画ででてくるような魔力紙を使うとのことだ。
「それじゃ、その紙に書かれた魔法陣が、加速する魔法陣?」
「ええ、そうよ。右から弱、中、強になっているわ」
わたしには区別がつかない。
スキルの異世界言語でも魔法陣に描かれている文字っぽいのは分からない。
「ユナには、この魔法陣を魔石に複写してもらうわ」
複写ってことはコピーするってことだ。
「その描かれた魔法陣を魔石に描くの? いや、無理だから」
そんな複雑な魔法陣を魔石に書き写すなんてできない。
今更だけど、漫画やアニメに出てくる魔法陣ってどうやって出現しているのかな。
頭の中で魔法陣をイメージして、魔力で魔法陣を作っている?
あの一瞬で?
それとも頭の中に登録されているとか?
頭の中っていうよりは杖なのかもしれない。
あの魔法使いが持っている杖にいろいろな魔法を発動させる魔法陣が登録されていて、魔力を込めると魔法陣が発動するとか?
でも、杖も何も持っていない魔法使いが魔法陣を作っていることもあるから、謎だ。
クマの魔法陣はスキル名を思い浮かべると、その魔法陣ができる。
クマの魔法陣は勝手に神様が登録してくれたけど、現実問題、頭の中に魔法陣を登録ってできないよね?
わたしがいろいろと考えていると、マーネさんは笑う。
「ふふ、そんなお願いはしないわよ」
マーネさんはテーブルの奥にあった炊飯ジャーぐらいの大きさの四角い箱に手を伸ばすと手前に持ってくる。
「これを使って、魔石に複写をしてもらうわ」
「その箱は?」
「簡易的な複写機よ」
マーネさんは箱の蓋を開ける。
「二重底になっているわ」
マーネさんは二重底を見せてくれる。
「ここに魔法陣が描かれた紙を入れる。ちゃんと紙は中央に置いてね」
そして、二重底の蓋を置く。二重底の蓋はガラスのようになっている。
そのガラスにも魔法陣らしきものが書かれている
「この二重底の蓋の上に魔石を置く。この魔石もちゃんと中央に置いてね」
マーネさんは丁寧に魔石を真ん中に置く。
「魔石を置いたら蓋を閉める」
マーネさんは魔石を箱に入れると蓋を閉める。
「そして、箱の上にある魔石に魔力を流す」
マーネさんは蓋の上にある魔石に触れる。
すると、箱の上にある魔石が光り、箱の四方についてた魔石も光る。
「全ての魔石が光って、5秒ほどで光が消えるわ。消えたら箱を開けて、魔石を取り出す」
マーネさんは箱の蓋を開けると、魔石を取り出す。
「これで紙に描かれていた魔法陣が魔石に転写されたわ」
マーネさんは魔石を渡してくれる。
受け取ったわたしは魔石を見る。
「紙に描かれていた魔法陣が、ちゃんと魔石に合わせた大きさで複写されるんだね」
紙より魔石のほうが小さい。
でも、ちゃんと魔石に合わせて、魔法陣が描かれている。
「中に入れた魔石の大きさを把握して、ちゃんと合わせて複写をしてくれるのよ」
凄い。
「思ったよりも簡単だね。てっきり、魔石に直に描くかと思ったよ」
「今でもやるわよ。でも、技術が発展して魔石に直に描くことは減ったけど」
「こんなに便利なものがあるのに、今も魔石に直に描くことなんてあるの?」
「自分の魔力を込めながら描くことで、自分の魔力でしか反応しないようにしたりするメリットがあるのよ。でも、今回は不要だから、この方法を使うわけ。なにより数が多いからね」
確かに、かなりの数の魔石を作らないといけない。
「了解。あと、注意することはある?」
「魔力が消耗するけど、ユナなら大丈夫よね」
まあ、魔力はある。
「あと、インクの補充ね。その横の小瓶にインクが入っているから、インクが無くなりそうになったら補充して」
見るとテーブルの上に小さい小瓶が置いてある。
「特殊なインクだから、こぼしたりしないでね」
「特殊なインク?」
「魔法陣に魔力が流れるようにするインクよ。そのインク、作るのが少し面倒なのよ」
補充の場所は蓋の上にあった魔石を外した下だった。
「それじゃ、試しにやってみて」
マーネさんは立ち上がり、席を譲ってくれる。
わたしはマーネさんが座っていた椅子に座る。
そして、先ほどマーネさんがやったとおりに、開いている箱の中に魔石を置く。そして、蓋を閉め、蓋の上にある魔石に魔力を流す。
すると箱にある四方にある魔石が光る。
そして、数秒すると消える。
わたしは蓋を開けて、魔石を取り出す。
ちゃんと魔石に魔法陣が描かれているようだ。
「でも、これって、魔石に魔法陣を描いたら、再利用はできないね」
「インクなんだから、消せば別の用途にも使えるわよ」
消せるんだ。
それなら、使わなくなっても再利用はできる。
「それじゃ、数は均等になるように作ってね」
まあ、当たり前だ。三つずつ魔石をはめる予定なのだから。
「何個ぐらい作れば」
「そんなこと知らないわよ。交換とか考えても、少ないよりはたくさん作ったほうがいいでしょうね」
大は小を兼ねるって言葉がある。
多くても、困ることはない。
困るのは作る人だ。
つまり、わたしだ。
「これって、マーネさんの仕事なの?」
「違うわよ。わたしの仕事は魔法陣の作成。この仕事は本来はイベント主催者が用意するの」
つまり、この仕事はセレイユの父親たち主催者ってことだ。
だから、魔石の用意もする予定だった。
「でも、現状ではセレイユたちも慌てているから、どうなるか分からないから、ユナが手伝ってくれると言うなら、そのほうが安全でしょう」
もしかすると、余計なことを言ってしまったかもしれない。
マーネさんが大変だと思って、手伝いを申し出たけど、失敗だったかも。
でも、わたしが言い出したことだし、イベントは失敗してほしくないので、手伝うことにした。
「そんなわけだから、わたしはマーネさんを手伝うから、ノアたちは遊んできていいよ」
ノアはフィナたちを見てから、マーネさんを見る。
「マーネ様、わたしたちにも手伝えることはありますか?」
「はい、わたしたちにもできることがありましたら、手伝いたいです」
「わたしもです」
「わたしも!」
ノアの言葉にミサ、フィナ、シュリも声をあげる。
マーネさんはノアたちを見る。
「そうね。それじゃ、2人はユナを手伝ってあげて。魔石の用意、魔法陣が複写された魔石の仕分けをユナが一人でするのは大変でしょう」
確かに、誰かが補佐をしてくれるなら、わたしは複写するだけに集中ができる。
魔石を受け取って、魔法陣を複写して、その魔石を渡す。
流れ作業的な感じになれば楽だ。
「残りの2人はセレイユのところに行って、状況確認をお願い。緊急性があれば報告を。なければ、セレイユの手伝いを」
「それなら、わたしとミサがセレイユ様のところに行きましょう。フィナとシュリはユナさんのお手伝いをしてください」
ノアは即座に適材適所に人材を配置する。
貴族のセレイユの相手をするのは自分とミサのほうがいいと判断したんだと思う。
いつものノアならわたしの手伝いを選ぶはずだから。
こうやってノアを見ると、上に立つに相応しい貴族に成長していると思う。
傲慢で我が儘な貴族にならないで、このまま成長してほしいものだ。
「ユナさん、その目はなんですか?」
「目?」
「たまに、わたしがいいことをすると、お母様が同じ目をします」
「ああ、分かります。わたしのお母様もします」
ノアの言葉にミサも同意する。
「ユナお姉ちゃん、たまにお母さんみたいな目で、見ることがあります」
フィナにまで言われる。
「そんな目で見ていないよ。ノアがちゃんと指示を出していたから、偉いなと思っただけだよ」
「ユナはあなたたちの成長が嬉しいだけよ。大人は子供が正しく成長しているのを見ると嬉しいものなのよ。だから、許してあげなさい」
見た目は子供、中身は大人のマーネさんが言う。
ノアも納得? したのかミサを連れて、小屋から出ていった。
漫画やアニメに登場する魔法使いの魔法陣ってどうやって作られているのだろうか。
手をかざすと、手に前に魔法陣ができたり、自分の周りの地面に魔法陣ができたり、前々から不思議と思っていたけど、この設定を細かく組み込むと話が面倒くさいことになりそうですね。
作者も深くは考えていませんので。
※しばらくは投稿は5日おきとさせていただきます。
※本日、くまクマ熊ベアー外伝の新しい話がコミックPASH!neoにて、投稿されました。よろしくお願いします。
※「くまクマ熊ベアー」のコミカライズが読める「コミマガ」のアプリが始まりました。ちなみに他社作品の有名作品も読めますので、よろしくお願いします。あと、お気に入りに入れていただけると嬉しいです。
※くまクマ熊ベアー10周年です。
原作イラストの029先生、コミカライズ担当のせるげい先生。外伝担当の滝沢リネン先生がコメントとイラストをいただきました。
よかったら、可愛いので見ていただければと思います。
リンク先は活動報告やX(旧Twitter)で確認していただければと思います。
※PRISMA WING様よりユナのフィギュアの予約受付中ですが、お店によっては締め切りが始まっているみたいです。購入を考えている方がいましたら、忘れずにしていただければと思います。
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くまクマ熊ベアー発売元であるPASH!ブックスが10周年を迎え、いろいろなキャンペーンが行われています。
詳しいことは「PASH!ブックス&文庫 編集部」の(旧Twitter)でお願いします。
※投稿日は4日ごとの22時前後に投稿させていただきます。(できなかったらすみません)
※休みをいただく場合はあとがきに、急遽、投稿ができない場合はX(旧Twitter)で連絡させていただきます。(できなかったらすみません)
※PASH UP!neoにて「くまクマ熊ベアー」コミカライズ公開中(ニコニコ漫画、ピッコマ、pixivコミックでも掲載中)
※PASH UP!neoにて「くまクマ熊ベアー」外伝公開中(ニコニコ漫画、ピッコマ、pixivコミックでも掲載中)
お時間がありましたら、コミカライズもよろしくお願いします。
【くまクマ熊ベアー発売予定】
書籍21巻 2025年2月7日発売しました。(次巻、22巻、作業中)
コミカライズ13巻 2025年6月6日に発売しました。(次巻14巻、発売日未定)
コミカライズ外伝 4巻 2025年8月1日発売しました。(次巻5巻、未定)
文庫版12巻 2025年6月6日発売しました。(次巻13巻、発売日未定)
※誤字を報告をしてくださっている皆様、いつも、ありがとうございます。
一部の漢字の修正については、書籍に合わせさせていただいていますので、修正していないところがありますが、ご了承ください。




