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くまクマ熊ベアー  作者: くまなの
クマさん、新しい依頼を受ける

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1005/1014

981 クマさん、改良したボートに乗る

 わたしたちはマーネさんがいるボート小屋までやってくる。

 中に入るとボートがたくさん並んでいる。


「マーネ様、いますか?」

「こっちよ」


 声がする方へ行くと作業台でマーネさんが仕事をしている姿があった。


「なにしにきたの? 今は忙しいから構ってあげられないわよ」

「魔石を持ってきました。それと、この子たちがマーネ様の仕事を見たいと言うので、邪魔はしませんので、見学をしてもよろしいでしょうか?」


 マーネさんは少し考える。


「そうね。邪魔をしないならいいわよ。それから、そこらにあるものに触らないでくれるなら」

「もちろんです」

「ユナとセレイユは、ついでだから、完成したら乗って感想をちょうだい。調整をしたいから」

「分かりました」

「分かりましたって、セレイユは貴族の令嬢でしょう。そんな危険な実験をしちゃダメでしょう」

「危険な物をマーネ様がお作りになったりはしないでしょう」

「当たり前でしょう。わたしを誰だと思っているのよ」

「えっと、天才薬師?」


 わたし的にはそっちのほうがイメージが強い。


「それも、そうだけど、魔道具作りの天才でもあるのよ」


 天才薬師は否定しないんだ。

 まあ、マーネさんの部屋には訳が分からない魔道具が転がっていた。


「それでも失敗するかもしれないから、試し乗りなんだけど」

「…………」


 みんなの視線がマーネさんに集まる。


「まあ、危険と思ったら、やめて戻ってきて」


 それが試し乗りだ。

 わたしとセレイユは了承する。


「それで、今はなにをしているのですか?」

「魔石に短時間で魔力を放出する魔法陣を刻んでいるのよ」

「つまり、ブーストってことだね」

「問題は時間ね。何秒ぐらいがいいのか分からなかったから、何個か作っているところ」


 確かに、時間を聞かれても答えることはできない。

 あの加速アイテムのキノコって一瞬? 1秒ぐらい?


「秒数を変えることできるの?」

「できるわよ。ただ時間と速度は反比例するわよ」

「えっと、それはどういう意味ですか?」


 ノアが尋ねる。


「簡単に言えば、速度が上がる時間が短ければ、ボートは物凄く速くなる。でも、時間が長くなれば、最高速度は下がっていくってことよ」

「最高速度が速すぎても危険ですね」

「安全面には考慮しているけど、絶対はないからね。だから、あなたたちに試しに乗ってもらって、感想を聞きたいのよ」

「分かりました」

「それじゃ、水着に着替えてきて、その間に魔石をボートに取り付けておくから」


 そうだよね。ボートに乗るってことは水着に着替えるってことだ。


「あっ、水着は……」


 セレイユは気づく。

 水着は洗濯して、干してある。


「家に戻るか、近くのお店で水着の購入をしないと」

「水着ならあるから大丈夫だよ」

「そういえば、シェリーちゃんがユナお姉ちゃんのために、たくさん、水着を作っていました」

「海に行ったとき、毎日違う水着を着ていましたね」


 フィナの言葉にノアも思い出したように言う。

 そう、わたしは水着を何着も持っている。

 数が多くて、海では着ていない水着もある。


「セレイユも着られるものがあると思うから」

「それでは、ありがたく使わせていただきますね」


 本当なら水着に着替えるのは抵抗はある。

 でも、加速するボートに乗ってみたいと、元ゲーマー心が訴えている。

 わたしはセレイユを連れて、小屋の中にある小部屋で水着に着替える。


「こんな、可愛い水着をわたしが」


 セレイユはビキニを着ている。サイズ的にワンピースタイプの水着はダメそうだったので、ビキニになった。

 シェリーが気を利かせて、わたしが成長したときの水着を作ってくれていた。

 その水着はセレイユにちょうどいいサイズだった。

 分かっていたけど、わたしより……。


 水着に着替えたわたしたちは、小部屋から出て、マーネさんのところに向かう。


「準備はできているわよ。説明するから、しっかり聞きなさい」


 わたしとセレイユはボートに近づく。


「とりあえず、適当に取り付けただけだから、魔石の位置は気にしないで。魔力が流しにくいと思うけど、それは我慢してね」


 舵輪には魔石が新しく3つ付けられている。


「簡単に説明すると、左から右に行くに連れて、秒数が長くなっているわ。秒数が長くなる代わりに、速度は下がる」


 先ほど聞いた話だ。


「回数は、それぞれ一回なんですよね」

「魔力を一気に放出するからね」

「魔力を自分で入れたりしたら?」

「対応済みよ。魔石の注入は裏面からしかできないようにしてあるから。ユナやセレイユのように魔力が多い者が何度も魔力を補充して、何回も使えたら、卑怯だからね」


 流石に対処済みだったみたいだ。


「でも、逆に魔力が多い人を集めて、自由に何度でも使えるようにしたら、面白いかもね」


 戦略が増えるし。


「なにを言っているのよ。もし、ユナが使ったら、全部、最高速度を出しっぱにするでしょう」


 人のことをなんだと思っているかな。

 でも、考えてみると、やりかねないので、言い返すことができない。


 わたしとセレイユはボートに乗り込む。

 それをノアたちは羨ましそうに見ている。


「また、ボートに乗れるなんて、羨ましいです」

「わたしも乗りたい」

「残念だけど、あなたたちは見学よ」

「そうですね。もしものことがありましたら、ノアたちの両親になんと言ったらいいか分かりませんからね」

「まあ、わたしたちが乗って、安全だったら」

「本当ですか?」

「まあ、大会で採用されましたら」


 わたしとセレイユの言葉にノアたちは嬉しそうにする。


「それじゃ、試し運転と行きますか」

「そうですね」


 魔石に魔力を流し、ボートが動き出し、岸から離れる。

 そして、人がいないところまでやってくると、

 普通にボートを動かす。

 そのまま現状の最高速度まで上げる。

 そして、次に右側から魔石を確かめていくことにする。

 つまり、時間は長いが加速が遅い順だ。

 魔石に魔力を流してみる。

 グッと速度が上がる。

 心の中で秒数を数える。

 そして、一定時間で元の速度に戻る。

 15秒ぐらい?

 あくまで、心の中で数えた秒数だ。

 次に隣の真ん中の魔石に触れてみる。

 グッと速度が上がる。

 ボートの前が上がる。

 体の重心を前にして、ボートの上がりを防ぐ。

 速度は一個目の魔石より速い。

 秒数は10秒ほど。

 次は最後の魔石だ。

 時間は短いけど、一番加速がある。

 わたしは直進になる場所で魔石に触れる。

 すると、二個目の魔石以上にグイッとボートが加速し、ボートの前が持ち上がる。

 体を前のめりにして、ボートの上がりを押さえる。

 速い。

 でも、すぐに加速は止まる。

 感覚的に5秒ほど。

 15秒、10秒、5秒って感じみたいだ。

 これを組み合わせたら、ゲームみたいで面白いかも。

 ただ、操作性が難しくなるので、大会で使えるかどうかが問題だ。

 それを判断するのは、わたしじゃなくて、大会の関係者たちだ。


 3つの加速を確認したわたしはマーネさんがいるところまで戻ってくる。


「ユナさん、どうでしたか?」


 ノアが出迎えてくれる。


「面白かったよ」

「うぅ、わたしも乗りたいです」

「わたしも乗ってみたいです」


 ノアとミサの言葉に、フィナも小さく頷いている。

 シュリは、「わたしは乗れないもん」と口を尖らせている。


「どうだったかしら?」


 マーネさんがやってくる。


「凄かったよ」


 語彙力がない。

 わたしはボートを下りながら、もう一度答える。


「使いどころしだいでは面白いかもね」

「どの魔石がよかった?」

「全部」


 わたしは思ったことを、そのまま伝える。


「全部じゃ、どれを使ったらいいか分からないでしょう」

「使いどころが違うから、全部でいいんじゃないかな」

「使いどころ?」

「加速の話をしたと思うけど、ジャンプ台では一番加速がある魔石を使うといいかも。今回は確かめていないけど、着水でテクニックの差が出る」


 速い速度でジャンプ台を飛べば、距離は伸びる。

 でも、それと同時に着水が難しくなる。

 そこは、テクニックの差が出て、盛り上がる。


「ゆるやかなカーブなら、速度は遅いけど秒数が長い魔石を使って、コーナーを少し速度を上げて曲がる。速度が上がる分、コーナーリングのテクニックが要求される。もし、失敗すれば、外に膨らんで抜かれたりするけど。テクニック次第では前との差が縮まったり、後ろとの差を広げたりすることもできる。もし、相手がカーブで使ったなら、自分は直進で使うって方法もあるから、本人次第?」


 カーブは手堅く曲がり、直線で差を縮める方法もある。

 実際問題、どっちに使えばタイムが速くなるか分からない。

 それに本戦なら、左右にボートがいる可能性もある。その場の判断になるかもしれない。相手が使ったから、自分も使うとか?


「それじゃ、真ん中の魔石は?」

「それが、一番自由度が高いかも? 手堅く直進でもいいし、ジャンプに不安がある人は、一段階加速を落とした魔石を使えばいいし、カーブに自信がある人なら、一段階速い魔石を使ってもいいし」

「それなら、全部、真ん中の魔石にしたら?」

「それじゃ、相手が、どの魔石が残っているか分かっちゃうでしょう。本戦では10人、決勝では9人が同時に走るでしょう。種類があれば、駆け引きに使ったりできるでしょう」

「……?」

「えっと、つまり、直進で隣に走っているボートがいきなり速くなる。でも、それは、どの加速の魔石を使ったかは分からない」

「つまり、それが駆け引きってことね。でも、ユナ、たったの一回乗っただけで、そこまで把握したの? わたしはどの魔石がいいのか選んでもらうつもりだったのに」


 ゲームで経験したとは言えない。

 ジャンプ台で加速を使うのか、コーナーで加速を使うのか、直進で加速を使うのか。なにかしらの操縦で失敗したときに速度が落ちたときに、使う方法もある。

 使うところは自由だ。




今後の投稿について


申し訳ありません。

母が腰を骨折し、介護が必要になり、

立ち上がるのも大変で、治るのも時間がかかるそうです。

書く時間が減ると思いますので、投稿は不定期にさせていただきます。

投稿しましたら、X(旧Twitter)で報告させていただきます。


くまなの

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― 新着の感想 ―
ネタバレになったら拙いので、少し前の話への感想に。 これ、もしかしたらレースが終了した後に、何か『事件』が発生して、ユナが『本気』で湖をボートで横断するような事になるのでは? そしてその時、『加速の…
接触事故が増えそうだな某カートゲームみたいに重量級に当てられた軽量級のようは事態はどうするんだろ
レースの駆け引きの展開が楽しめるフラグ発生(^^;)
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