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くまクマ熊ベアー  作者: くまなの
クマさん、新しい依頼を受ける

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979 クマさん、賞品の話を聞く

「それで、賞品はなんなのですか?」


 気になっているのかノアが尋ねる。


「強者の部の賞品は賞金です。お金が一番喜ばれますので」


 まあ、お金なら、自分で好きなものが買えるし、現金が一番、喜ばれるかもしれない。

 いらない物をもらっても嬉しくはない。逆に欲しいものなら、やる気が上がる。


「そして、一般部門の賞品は王都旅行券です。しかも、家族全員です」

「王都旅行券?」


 そんなもの?


「はい。宿泊する宿屋から、滞在費も支払います」

「思っていたよりも、しょぼくない?」


 わたしの言葉にセレイユはため息を吐き。

 フィナは「ユナお姉ちゃん……」と呆れた顔をして。

 ノアは「ユナさんに常識は……」と酷いことを呟き。

 ミサは「ユナお姉様ですから」と言う。

 マーネさんは「まあ、あのクマがいればね」と呟く。

 シュリは首を傾げている。 


「ユナは一般常識を学んだ方がいいですよ」

「わたしもそう思います」


 セレイユの言葉にノアまでが同意する。

 その横ではフィナとミサ、マーネさんも頷いている。

 わたしほど、一般常識を持っている人はいないと思うよ。

 ノアやセレイユ、ミサは貴族だから、一般常識なんてないと思うし、マーネさんは王都では偉い人だし、シュリは幼い。百歩譲って、フィナに言われるなら、納得するけど、ノアとセレイユには言われたくない。


「どうして? 普通に王都に行けばいいでしょう」

「普通の人は王都に行く事はありません」

「商人や冒険者、知り合いがいない限り、ほとんどの者は、生まれ育った街から出ることはありません」

「それに遊びで王都に行けるのは裕福な家庭だけです」


 言われてみると、そうかもしれない。

 ティルミナさんと旅行の話をしたとき、一般人には旅行する概念が低い。

 理由としては、お金の問題もあるけど、簡単に仕事を休めないからだ。

 クリモニアからミリーラに海を見に行く人は増えたけど、それまでは旅行に行く人はいなかった。

 新幹線も飛行機も電車も車もない戦国時代に京都に行ったことがある一般人や、江戸時代に江戸に行ったことがある一般人を想像したら、行った事がない人の方が多いと思う。

 今なら、新幹線でも飛行機でも行くことができるけど、昔は簡単なことではない。


「それに、初めて王都に行けば迷います。宿屋の確保も困難な場合もあります。人によっては王都を見学したあと宿屋に戻れない場合もあります。なので、わたしたちのほうで全て用意します」


 迷う? と一瞬思ったけど。スマホの地図アプリは存在しないし、わたしも、ノアやミサが案内してくれなかったり、クマの地図がなかったら、迷っていたと思う。

 王都に行くってことは、地方の人がスマホや観光案内の地図を持たずに初めて東京に行くようなものだ。

 わたしは都内に住んでいたけど、スマホなしで地方に迷わずに行けるかと聞かれたら、無理かもしれない。


「宿屋の確保から、観光案内まで。どこに行きたいのか、なにを見たいのか、なにを食べたいのか。王都に詳しい者が案内します」


 確かに、それなら安全に王都を見回れる。

 一種の観光ガイドみたいなものかな。


「それと、仕事がある場合はお父様が交渉して、休みをもらえるようにしますので、そこも喜ばれています」


 街の領主様に、交渉されたら、雇い主も断れないよね。


「至れり尽くせりだね。でも、両方とも賞金の方が喜ばれるんじゃない?」


 お金は万能だ。

 お金があれば、大半のことはできる。

 欲しいものも買えるし、王都にも行ける。なんだったら、王都以外にも行ける。


「お父様も初めはそれも考えたらしいのですが、住民たちに知見を広げて、街のために少しでも役に立ってくれたらと言っていました」


 王都で美味しいものを食べ、それを街で行ってもいい。

 服を見て、ファッションを学んでもいい。

 確かに、勉強になるかもしれない。


「それと賞金にしてしまうと、冒険者たちも、一般の部に参加してしまうので……」


 冒険者なら、自分たちで王都に行くことができるから、王都旅行の賞品よりはお金を選ぶってことだろう。

 わたしも賞品が王都旅行だったら、賞品目当てで参加しようとは思わない。


「賞品一つ、考えるだけでも大変だね」

「苦労したのはお父様ですが」


 セレイユは微笑みながら答える。

 でも、リバーシ大会のときと似ているかもしれない。

 わたしも、あのときは賞品について、いろいろと考えたからね。


「そして、レースが上手な人も一般の部でなく、強者の部に参加する人もいます」


 賞品が目当てでなく、名誉、強い人とレースをしたい人もいるってことだろう。

 本当に強者の部なんだね。


「そんな理由で、一般の賞品は王都旅行となっています。両親のために頑張る子供たちもいます」

「ちなみに、わたしとセレイユが参加する部は?」


 まさか、強者の部とか言わないよね?


「一般の部です。もしかして、強者の部がよかったですか? もちろん、今からで変更はできますよ」

「一般の部でいいよ。わたしもセレイユも今日、初めてボートに乗ったんだから。でも、わたしたちが優勝したら」


 わたしがそう言った瞬間、セレイユが笑う。


「ユナ、今日初めてボートに乗ったのに、優勝するつもりでいるのですか?」

「そんな気持ちで参加するつもりでいるよ。勝負には勝ちたいからね」


 優勝を目指す気持ちで戦わないと、上位にいけないからね。

 これはゲームイベントでもそうだ。

 優勝を目指すのか、ベスト10以上を目指すのでは、優勝を目指すほうが上位に行ける。


「ふふ、そうですね。勝負する前から、負ける話はよくないですね。もし、ユナやわたしが優勝するようなことがあれば辞退すればいいかと」

「それで、いいの?」

「構いませんよ。次点で順位がよかった人に賞品が渡るようにします。大会のイベントの主催者を誰と思っているのですか?」


 確かに、言われてみればそうだね。

 そのあたりは自由になりそうだ。


「それじゃ、わたしが優勝しても、辞退します」


 話を聞いていたノアが手を上げながら答える。


「わたしもです」

「わたしも」

「わたしも、じたいするよ」


 ミサ、フィナ、シュリまでが宣言する。


「ふふ、ありがとうございます。それでは、みなさん、優勝目指して、頑張りましょう」


 そんな話をしながら、屋敷に戻ってくる。

 戻ってきたわたしはクマの格好に戻る。

 落ち着く。

 絶対に呪いの装備だよね。

 ちなみに、わたしがクマの格好でないことをマーネさんに話したら、納得していた。「ユナの格好は目立つからね。一緒にいると恥ずかしいし」と言われた。そんなことを思っていたんだ。


 屋敷に戻ってきたわたしとセレイユはマーネさんとボートのことを話し合う。

 フィナたちは、ボートの練習で疲れたのか、くまゆるとくまきゅうと一緒に昼寝をしている。


「それで、ボートの改良ってなに?」


 セレイユがわたしが話したことをマーネさんに説明する。


「瞬間的に速度アップね」

「可能でしょうか」

「可能よ。問題点があるとしたら、魔石の使用量が増えるってことね。そのブーストの回数を増やせば、魔石のコストは2倍、3倍となるわよ」


 ゲームに登場する加速が上がるキノコは無料で手に入れることができるけど、魔石は無料ではない。


「そのあたりはお父様と相談ですね」

「でも、盛り上がるかもしれないわね。差が開くと、つまらないからね」

「あと、そのことだけど、距離が開いた場合、後ろのボートが少し速くなることとかできないかな。少しずつ距離が縮まって行くと思うんだけど」

「う〜ん、難しいわね」

「それじゃ、加速板は?」

「加速板?」

「できるか分からないけど、ある場所を通ると、速度が一瞬だけ上がる場所だよ。その場所を通ると速くなるから、前との距離が縮まると思うけど」

「ですが、前の人も、その加速板に乗れば変わらないのでは?」

「そうだけど、ジャンプ台の手前に置くとか? 今日の練習でジャンプ台を使ったけど、着水が難しかったから、テクニックが必要だと思うんだよね。そこで、差が縮まったり、離れたりするかなと思って、もし差があっても、見にきている人も綺麗なジャンプを見れば、楽しめるし」


 技術を競うスポーツもある。

 スノーボードとか、何回転するとか、綺麗なジャンプをするとか。

 まあ、今回は普通にジャンプ台を飛ぶだけだけど、この世界なら十分に盛り上がると思う。


「でも、さきほどのブーストと同じでは?」

「言われてみれば、そうかも」

「でも、いいアイデアと思うわよ。できるかできないかで言えば、魔法陣を設置しておけばいいから可能ね」

「コースが変わりますから、そのあたりもお父様と相談ですね」

「だけど、ユナ、そんなアイデアが思いつくなんて凄いわね」


 ゲームやスポーツを参考にしただけだ。

 わたしが考えた訳じゃない。過去の先人たちが考え、作り上げたものだ。

 でも、そんなことは説明はできないので、「たまたまだよ」と言っておく。


「あと、セレイユとも話したんだけど、重量問題があるかなと思ったかな。体重が軽い人が有利でしょう」

「体重を公表すれば、参加する女性が減りますから」

「だから、参加する前に体重を量って、体重が軽い人には重りをつけるとか? もちろん、体重は非公開、重りも非公開、体重の管理は女性にすれば、問題は少なくなるかと」


 わたしも体重を量る人が女性だったら、ギリギリ許せると思う。

 でも、わたしの考えにマーネさんの口から予想外の言葉が出てくる。


「それなら不要よ。前回、わたしも重量の差は気になったから、ボートの総重量が一定になるようなっているわ」


 マーネさんの話では、重量問題は前々から気になっていたとのこと。

 それで、今回のボートには総重量が決められているとのことだ。

 総重量が何キロなのかは教えてくれなかったけど、例を出してくれた。

 総重量が100キロだった場合。体重とボートを合せた重さが100キロになるとのこと。

 ただし、重くはできるけど、軽くはできないので、体重が重い人は、総重量100キロを超えたら、プラスになるとのことだ。


「そんなことができるんだね」

「犯罪者を逃亡させないように作られたものよ。体に重たいものがついていたら、逃げられないでしょう」


 ああ、漫画などで、囚人が足に丸い重りがついているのを見たことがある。あれと同じことかな。

 あの和の国で再会した黒男にはついていなかったのかな?


「だから、一定の重さまでボートが重くなるように設定してあるわ。だから体重では、去年よりは差が出ないはずよ」


 ボートと人の重量が同じなら、本当にテクニックの差になる。



適当に書くのはよくない。

賞品を決めるのは苦労しました。

冒険者などの荒くれ者たちと一般人を分かるのが予想外に理由付けが考えるのが大変でした。

冒険者(一般人の荒くれ者)だって、一般の部に参加してもいいですからね。


※まどか☆マギカの映画を観てきました。面白かったです。そのため一日投稿が遅れました。(言い訳です)


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※22巻の発売の情報はもう少しお待ちください。


※誤字を報告をしてくださっている皆様、いつも、ありがとうございます。

 一部の漢字の修正については、書籍に合わせさせていただいていますので、修正していないところがありますが、ご了承ください。

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― 新着の感想 ―
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>「強者の部の賞品は賞金です。お金が一番喜ばれますので」 >「そして、一般部門の賞品は王都旅行券です。しかも、家族全員です」 ところで、「10才以上14歳以下」の部の賞品は何なのでしょう?。 ユーフ…
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