978 クマさん、大会の話を聞く
「マーネさん、注意点ってある?」
通常のボートに乗る前に尋ねる。
「初心者用との違いは速度よ。速度が出るから、魔力を流す調整は気をつけることね。怖いと思ったら止めなさい」
どれほどの速度がでるか分からないけど、ジェットコースター並みに出たら、怖いかも。
「あと、曲がり方には注意しなさい。速度が出ている状態で舵輪を大きく曲げると、転覆する可能性が高いわ」
「でも、速度を落としたら、勝てないですよね」
ノアが尋ねる。
「それを見極めるのが練習よ。だから、初めは少しずつ自分なりの速度で曲がる練習をするといいわ」
自分で管理できる速度の把握が必要ってことだ。
それはゲームでも同じだ。
「魔石にはだいたい湖二周分の魔力が入っているわ。だから、二周したら、戻って魔石の交換をしてもらいなさい」
「練習時間は一時間です。それは守ってください」
「はい!」
ノアたちはマーネさんとセレイユの言葉に返事をすると、それぞれがボートに乗り込む。
練習に時間制限があるなら 1秒も無駄にはできない。
ノアたちは通常ボートに乗り換えると、出発してしまう。
そんなノアたちを見ながら、セレイユはマーネさんに声をかける。
「マーネ様、ボートの改良について相談があるのですが、お話する時間はありますか?」
「ボートの改良?」
「ユナのアイデアなんですが」
わたしのアイデアと聞いた瞬間、マーネさんの表情が怪訝そうな顔に変わる。
「変なアイデアじゃないわよね」
「いえ、大会を盛り上げるためです」
「まあ、いいわ。話は後で聞いてあげる。今は、練習する時間なんでしょう。時間がもったいないから、練習に行ってきなさい」
マーネさんの言葉どおりに時間は有限だ。
わたしとセレイユも通常のボートに乗る。
周りをみると、さっそく動かしているノアたちが騒いでいる「あわわわ」「速いです」「魔力の調整が」そんな声が聞こえてくる。
セレイユが「気をつけてくださいね」と叫んでいる。
やっぱり、初心者用のボートとは勝手が違うみたいだ。
初心者用のボートと同じようにハンドルを握り、魔石に魔力を流し、ゆっくりと桟橋から離れる。
桟橋から離れたわたしは、今度は多めに魔力を流してみる。
ブワッと、ボートが動く。
初心者用と発進加速が違う。
スタートダッシュの練習も必要かもしれない。
最高速度が一緒なら、スタートは大切だ。
わたしはそのまま速度を上げる。
ノアたちの声通りに速い。
とりあえず、直線で最高速度を確認する。
初心者用の 1.5倍から2倍は出ていそうだ。
これは面白いかも。
キノコを食べたり、甲羅をぶつけたりはできないけど、いろいろな漫画やゲームの知識を参考にすれば、上手に乗れそうだ
問題は恐怖との勝負になる。
速度を落とさずに曲がれるかどうかだ。
でも、やってみると、それほどの恐怖心はない。
たぶんだけど、くまゆるとくまきゅうの最高速度より遅いから、ボートの速度は怖くない。
ここで、実際の経験が生かされるとは思いもよらなかった。
心地よい風が顔に当たる。
カーブはハンドルを切るだけじゃなく、過去に読んだボート漫画を参考にして体の重心をずらして曲がる。
小島のジャンプ台を使って、高く飛ぶ。水面への着水には衝撃があり、ボートのバランスが崩れる。
着水が難しいね。
失敗すると、速度が落ちる。
最悪の場合は転覆の恐れもある。
ハイリスクだけど、差を付けるポイントだ。
でも、衝撃は思っていたよりもない。
マーネさんって、薬草だけでなく、魔道具作りの天才だね。
速度を上げてカーブを曲がる。
外に膨らむ。
ここはもう少し速度を落とさないとダメみたいだ。
S字コーナーは外から入り、内を通り、抜けていく。
まさか、S字コーナーまで作り込んでいるとは思わなかった。
面白い。
リアルゲームだ。
大人の人はこんなリアルな車を運転しているんだね。
それが走り屋の原点かもしれない。
まあ、走り屋は漫画の世界だから許されるけど、現実だと傍迷惑でしかないので、やめてほしいものだ。
わたしは魔石の魔力が尽きるまで、走り続ける。
何度か、魔石を交換したわたしは、そろそろ練習時間も終わりなので、桟橋まで戻ってくる。
ボートから降りると、体が揺れる。
思っていたよりも疲れているみたいだ。
今はクマ装備ではなく、水着だということに気づく。
だから、ちょっとした運動でも疲れる。
それだけ、ボートに乗るのが楽しかったってことかもしれない。
このままでは、明日の朝は筋肉痛で動けなくなるかもしれない。
わたしは回復魔法を自分にかける。
筋肉疲労が回復する。
たぶん、これで大丈夫なはずだ。
一応、筋肉を伸ばす運動をする。
そんなことをしていると、ボートに乗ったセレイユが戻ってくる。
「ユナ、上手すぎです。本当に初めて乗ったんですよね?」
「初めてだよ」
「信じられません。初めてで、あんなに上手に操作できるなんて」
それはゲームや漫画の知識があったおかげと、くまゆるとくまきゅうに乗り慣れて、速度の恐怖心もなかった。
やっぱり、知識や経験は役に立つ。
わたしとセレイユがそんなやりとりをしていると、フィナたちも戻ってくる。
「楽しかったです」
「はい」
「もう、時間なのが残念です」
ミサ、フィナ、ノアの順にボートを降りてくる。
ノアとミサは残念そうにするけど、フィナは満足な顔をしている。
ボートで楽しんだと思えば、十分だ。
それに、なんでもそうだけど、長時間の練習は体の負担になる。
シュリもマーネさんと一緒に楽しんだようで、楽しそうにしていた。
ボートを降りると、ボートを管理している人が魔石の交換を始める。
次の人が乗る準備かもしれない。
「それでは着替えましょう」
わたしたちが小屋で着替えて、外に出ると。入れ違いに女性が数人、小屋に入っていく。
「これから練習でしょうか?」
ノアが小屋に入っていく女性を見ながら、尋ねる。
隣にある小屋では男性が入っていく姿もある。
「わたしたちが練習していた間も、他の人が練習していました」
「とても、上手でした」
「でも、子供がいませんでした」
「子供の練習は違う時間なんです」
「そうなの? それじゃ、ノアたちは練習しちゃダメだったの?」
「いえ、保護者がいる場合は練習可です。ちなみに今回はわたしが保護者です」
子供だけで練習は、もしもの場合に困る。だから、保護者など監視する人が必要ってことだろう。
「大人はいつでも可。時間があるときに練習ができるわ。もちろん予約は必要だけどね。子供は保護者がいる場合か、昼過ぎの時間。そして、3時過ぎは学生たちの練習時間になるわ」
まあ、学生は今頃、勉強中だ。
学校が終わってから練習するみたいだ。
「でも、そんなに練習してまで頑張るものなの?」
思っていたよりも参加人数が多い?
「賞品目当てで参加する人が多いかと。イベントを盛り上げるために賞品がいいですから」
「賞品?」
「クマさんのぬいぐるみ?」
賞品と聞いて、シュリがそんなことを言い出す。
「クマのぬいぐるみですか」
フィナたちがリバーシ大会のことをセレイユに話す。
「そんな大会を開いたのですね」
「景品はお店の食べ放題チケットとくまゆるちゃんとくまきゅうちゃんのぬいぐるみでした」
「ぬいぐるみ、大人気でした」
ノアとミサがリバーシ大会を思い出しながら答える。
「ふふ、残念ながら、賞品はクマのぬいぐるみではないですよ」
シュリは残念そうにするけど、くまゆるとくまきゅうのぬいぐるみなら持っているでしょう。
それに、欲しいならあげるよ。
「それでは、賞品はなんなんですか?」
ノアが尋ねる。
「とりあえず、それぞれの部門で違います」
「部門って、そんなにあるの?」
リバーシ大会でも年齢別で分けていた。
「はい、体格差がありますから、ありますよ。まず全ての部門では男女で分かれています。内訳は10才以上14歳以下。15歳以上が一般の部」
感覚的には高校生以上が大人の部類に入るのかな。
「一般の部、ってそれ以外もあるの?」
「強者の部です」
「強者の部?」
「表向きは強者の部と言っていますが、実際は冒険者や荒くれ者たちが参加する部です」
「そんなのがあるの?」
「えっと、全ての冒険者ではないのですが、危険な操縦をする冒険者もいますので……」
暴論かもしれないけど、冒険者は乱暴な人が多い。
デボなんとかみたいな冒険者が参加したら、一般人は困るね。
感覚的に一般車が暴走車とレースをするようなものだ。
もちろん、ルリーナさんやギルみたいに優しい冒険者がいることは知っている。
「初めてのときは、冒険者も一般人も一緒にやって、大変だったとお父様が言っていました。当時のわたしは、それどころではなかったので、気にもしていませんでしたので、どれほど酷かったのかまでは、話でしか聞いた事がありませんが。クラスメイトからの話を聞いても、酷かったらしいです。それで、部門分けをする事になって、強者の部が作られたと聞いています」
リバーシ大会と違って、レース大会では冒険者や乱暴者がいたら、危険だ。
もし、リバーシ大会で、対戦相手を脅迫する人がいたら、わたしが対処したけど、ボート大会では、そうはいかない。
「それじゃ、割り振りはそれだけ?」
「はい。これ以上の部門を増やすと管理ができなくなりますので」
「重量別はないんだね」
「流石に、そこまではありません」
ボクシングや柔道には体重別がある。
でも、ボートレースでは聞いたことがない。
うろ覚えだけど、ボートレースは軽いほうが有利だから、減量する選手がいるのを防ぐために、体重が軽い選手には重りを付けるとか、漫画に描いてあったような。
「それに体重別を作ると、いろいろと問題がおきますので。特に女性に……」
セレイユは少し言い難そうにいう。
確かにそうだよね。
体重なんて乙女の秘密だ。
体重別にしたら、自分の体重を公表していると同じだ。
そんなことをしたら、参加人数が減ってしまうと思う。
そう考えると体重が軽い人が有利かもしれない。
気軽に書き始めたものだけど、書いてみると、いろいろと面倒くさいことに気付きました。
もし、ルールが変わったら、ごめんなさい。
※次回の投稿、まどかマギカの映画を見に行こうと思うので、投稿が一日遅れるかもしれません。そのときは、ご了承ください。まどかマギカの映画、楽しみ。
※前回の話、変な二重書きがあり、申し訳ありませんでした。(投稿してから2時間ほどで修正済み。指摘してくださった皆様、ありがとうございます)
他の文章ソフトで書いたものをコピペをしたのですが、そちらのほうは二重書きになっておらず。
どうして、あのようになったか、原因が分からず。
たぶん、なにかしらの操作ミスだと思います。ご迷惑をおかけしました。




