208話 詭弁
「どうして…って?」
「だって、そうじゃないですか…? 三時間ですよ? 待ち合わせの時間に遅れるってレベルじゃないです…」
「うん、それは確かにそうだね…」
「寒いし、お腹も空くだろうし、喫茶店の予約にも間に合わなかったし… なんの連絡もなくずっと…ずっとほうったらかしにされて… どうして…」
継人に話してて涙が出てきた
どういう気持ちで継人は待っていたんだろう?
わたしが遅れたことでどれだけ継人を不安な気持ちにさせていたんだろう…
そんな感情が一気にわたしを襲って…涙が溢れた
「うーーーん… なんだろ? 重命さんが約束を破る人じゃないって思ってたってだけじゃ納得できないかな?」
「そ、そんな…!? まだ数回しか会ってないんですよ? なんでそんなこと言えるんですか…」
継人の答えに思わずびっくりした
そんな根拠もない思い込みで三時間だよ…
「重命さんマジメだから⋯」
「重命さんはどう思ってるの?」
「どうって…? わたしは永久さんを三時間も待たせてしまって申し訳ないって… ごめんなさいって…」
「でも、重命さんは悪くない…よね? ちゃんと事故を目撃した責任を果たした…だよね?」
「は、はい…」
わたしは受話器を握ったまま頷く
「僕はね…」
「僕は重命さんは[来る]と思った… そう思う自分を信じた。 だから待っていたのは重命さんのせいじゃない… 僕が僕を信じた…、つまり待っていたのは僕のせいなんだよ。」
詭弁だ…そう思った
だけど継人らしいって思えた
目一杯の継人の優しさ
自分のとった行動にきちんと意味を持たせることで誰のせいにもしない
この年齢でこんなにできた人だったっけ…
継人の知ってるようで知らない一面を見たような気持ちになる…
「⋯⋯⋯三時間もなにしてたんですか… どこにも行けずにじっと待ってたんですか…」
わたしは気になっていたことを矢継ぎ早に聞く
「ベンチで本を読んでたよ。 僕は本を読み出すと周りが見えなくなるって言われるくらい集中しちゃうんだ。 もし重命さんが来てても気づかなかったかもしれないな…」
「わたしんちに電話しようと思わなかったんですか…」
「それは少し思ったよ… だけどすぐに考え直した」
「どうして?」
「だってほら、もし僕が重命さんが待ち合わせ場所に来てないことをご両親に伝えたら、どうなると思う?」
「どうなるって… あっ!」
「そう、きっとご両親は心配するだろう… だったら僕は重命さんが来るのを信じてる僕を信じるしかなかった…ってこと」
「⋯なんて、かっこいいこと言ってるようだけど自分ちには電話したけどね? オレ宛に電話かかってこなかった?って… アハハ」
どこまでが冗談かわからないけど笑う継人の声
わたしに気を使わせまいとする配慮だったとしても、
わたしはやっぱりホッとしてた
そこまで考えてくれてたんだって…




