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ダイレイス魔法国

ぇー、久しぶりの投稿になりました。お待たせして申し訳ありません。


約一カ月の時間が経ってしまいました……。うぅ、筆が遅くて申し訳なく。


今回の投稿に合わせ、1話と2話を加筆修正してあります。


今後も少しずつ以前の話を修正していきますので、よろしくお願いします(礼)





 イーリスがアイリスの姿で王子に迫られてから、一週間の時間が立っていた。


 その間、レンフィールドの態度が問題になっている。


 アイリスを、一心に見つめているのだ。


 他の候補達とのお茶の時間でも。


 何回か開かれた夜会の時にも。


 あまつさえ、イーリスと二人でする事になったお茶会の時は、あからさまにアイリスにだけ話しかけていた。


 それで、他の候補達が色めき立たないはずが無い。


 むしろそれでレンフィールドが嫌われるならともかく、イーリスに非難が集中するあたり腹が立つ。


 何が、侍女を使って王子を取り込もうとしている、だ。


 迷惑しているのは此方だと言うのに。


 イーリスも立場上、アイリスを叱らなくてはならないし、それでアイリスを下げると今度は王子に睨まれる。


 どうしろというのだ。

 

「いっそレンフィールド殿下を暗殺出来れば話は簡単なんだけどな……」


「イーリス様っ! 滅多な事を仰らないでくださいっ!」


「そうだ、誰が聞いてるんだかわからないんだがら――いや、大丈夫なのか、イーリス嬢の場合は」


「まぁ、この部屋を探ってるのは全部うちの息が掛ってる物たちですし……。それ以外が入りこもうとしても、忍んだ時点でうちの猫たちに狩られてます」


「アイリスの言うとおり、この部屋って今現在だと多分陛下のお部屋より警備が厳重なのよね……。ちょっと問題かしら。アイリス、陛下の傍に二人配置しておいて」


「かしこまりました」


 すぐに連絡してまいります、と一礼してアイリスが部屋を出ていく。


 王子の気配を感じたら逃げるように、と伝える事も忘れない。


 本当に、もう面倒くさい。


「……そんなにすぐに増やせるものなんですか?」


「ええ、ある程度は。それにしても……はぁ。本当に、どうしたものやら」


「そういえば、この前仰っていた対策とやらはどうなったのですか? 確か、アイリスさんの妹を呼ぶ、と」


「ああ、それは……。ちょっと難航していて。……キース様とカイル様はご存知ですか? 傭兵国が再び此方に兵を出そうとしている話を」


 その言葉に、二人の近衛騎士たちは深く頷いた。


「まだ確定の話ではないですが、確かに出兵の準備をしていると情報が入ってきています。やはり目的は、アークジュエルですか」


「ええ。そしてその真偽を確かめ、さらに詳細な情報を得るためにカミジールは今全力を挙げてるんです」


「……つまり、此方に割く余裕は殆どない、と」


「そうですね。他の三国経由で入ってくる間諜を特定、始末するのに暗殺ギルドや盗賊ギルドまで全力で働いている状況です。そしてこれは不確定情報なのでまだ誰にも話してもらいたくは無いのですが、傭兵国と共謀して魔法国が挙兵するという話まで出てきているんです」


「魔法国が……っ!?」


「東西二面の挟み撃ち、ですか。厄介ですね……。東からの物量戦、西からの大規模魔法戦。これは、今までの歴史から見ても類が無いですから」


「ええ。傭兵国と魔法国に限らず、周囲四国は互いに中が悪いですからね……。いがみ合ってると言っていいと思います。ですが、それ以上にアークジュエルが目障りだ、という事でしょう」


 ダイレイス魔法国。


 国名の通り魔法の研究が非常に盛んな国で、高名な魔法使いを何人も排出している国である。


 魔法が盛んな理由は、建国の歴史にと非常に狭く痩せた領土が理由としてあげられる。


 ダイレイスの建国王は当時ユーレスト神聖国に属していた貴族の一人で、そもそも領土自体がユーレストの国土だったのだ。


 ラファエル・ジス・ダイレイス。


 ユーレストの魔法院で院長を代々務めていた貴族の出であった彼は、三十歳の時に祖国に反旗を翻して自信の領土をダイレイス魔法国と名乗り、王として君臨しようとした。


 その背景には、法術を至上とし魔法を下術と蔑む神聖国の風土が有ったと言う。


 ラファエルは天才と呼ばれる魔法使いだったが、だからこそ他の法術師たちに苛められ、蔑まれた。


 それを疎んじて独立し、当時のアークジュエル王家が支援した事もあり無事に独立できたのだ。


 しかし、ダイレイスの土地は枯れていた。


 不毛の地であると言い変えても良い。


 独立と共にユーレストで迫害されていた魔法使いが集ったダイレイスでは、自分たちの土地を肥沃にするための研究が非常に盛んにおこなわれる事となる。


 必然的に魔法研究の最前線となり、同時に科学的な栽培法などでも他国を圧倒するほどの発展を見せた。


 技術や知識が発展すればそれを求める者たちが訪れるのは当然であり、さらに発展していくと言う好循環が生まれる。


 『都市部では魔法が使えない』というエウロパ大陸独特の法則により、都市部以外の土地が少なかったダイレイスは非常に苦労したようだが、高層型の住居を考案し建設する事で都市部を減らし自給量を上げようとした。


 当初はそれで何の問題も無かった。


 元の所属国であるユーレストとの仲は悪いままであったものの、その他の隣国とは良好な関係を築いていたのだ。


 四代前の王までは。


 三代前――ダイレイスからすれば五代目の治世で、そのバランスが崩れた。


 魔法こそが至上の技であると、過去自分たちがされた迫害を忘れたかのように王が魔法以外の技術を迫害し始めたのだ。


 同時に一部のエリート魔法使いたちがその思想に染まり、それから魔法国の何恥じない魔法至上思想が国全体に広がっていく。


 魔法使いでない者は人ではない。


 当時の王が言ったそのセリフは、今でも魔法国に根づいてしまった思想であり、他国から反面教師として見られている言葉だ。


 五代目の時代に魔法技術をより高めたダイレイスは、六代目の時代に他国へ侵攻していく。


 元々不仲だったユーレストは勿論のこと、肥沃な土地を求めてアークジュエルにも侵攻してきたのだ。


 結果として恩を仇で返されたとアークジュエルは激怒。ユーレストと同調してダイレイスを撃退する事に成功する。


 六代目はそれで失脚し、七代目――即ち前王は先の騒乱で生じた亀裂を修復するように、ユーレストとアークジュエルに対して友好政策を打ち出した。


 七代目が崩御して代変わりしてからすでに五年。


 前王の政策を引き継いで友好的な関係を保ってはいたが、それはどうやら表向きの話だったらしい。


「幸いなのは技術国と神聖国は動く気配を見せていない、という事ですね。この上周囲四国に同時攻撃を受けるなんて話になったら笑えませんし」


「しかし、イーリス様。そうは言っても、今仰った事になる可能性は決して低くないのではないでしょうか」


「その通りですよ、カイル様。だからこそ、そうならないように動くのが我々です」


「……諜報国の腕の見せ所って奴か」


 今更の話だが、アークジュエルは諜報国と呼ばれている。


 今の王になってからは一度も戦争が無かったために大部分の国民は自覚が薄いが、アークジュエルが平和を保っている背景にはその圧倒的な情報収集能力が挙げられるのだ。


 実の所それだけの力を持つようになったのはカミジールが国に重用され、安定して質の良い間諜を育てられるようになったのが大きい。


 無論それ以前からも他国に比べて情報収集に重きを置いていたが、専門の育成機関などは無かった。


「神聖国が魔法国に、技術国が傭兵国と争いになるのを後押しするわけですね?」


「ええ。実際に戦争にならなくても、その気配がある、というだけで十分牽制になりますからね。上手く行けば戦争自体も回避できるかもしれませんし」


 周囲四国間の関係が良くないのも、アークジュエルが悟られないように手を廻しているからだ。


 結局の所、自国が一番大事にあのである。


「……お嬢様、殿下を警護する人数を増やしてきました。そして――法務大臣がいつ事を起こそうとしているのかも判明しました」


 戻ってきたアイリスが報告と同時に新しい情報を持ってきた。


 ここ一週間、法務大臣の動きは無い。


 侍女の配置換えをしたと言う話もないし、手の物を王城へ潜り込ませたと言う事も無いのだ。


 つまり、自らの手で暗殺を企てるか、あるいは既に王城にいる法務大臣派准貴族の令嬢――侍女を使って起こすかと手が絞られている。


 キースとカイル、二人の頼もしい護衛に視線を向けると、双方ともに真面目な顔で頷きを返す。


 それを見た後で、アイリスに報告を促した


「決行は明日の夜会で。標的はシーリン・イフ・ルフーナ様です」


「シーリン様だと!?」


「正妃候補の大本命ですか。これは……最悪の展開ですね」


「……アイリス、暗殺の手段は分かってる?」


 驚愕の声を上げる騎士たちと異なり、イーリスは難しい顔をしながら問いかける。


「今の所特定はできていませんが、恐らく毒殺かと。なので販路を監視しながら、動向を探るよう指示を出しています」


「ん、ならいいわ。それにしても毒殺、か……。アイリス、明日の夜会にどれくらい忍びこませる事が出来るかしら?」


「……現在城内にいる手の者たちを総動員したとしても、自由に動かせるのは十人が限度ですね。それ以上は怪しまれますし」


「そうよね……。うん、もうこうなったら、仕方が無いわね。毒を食らわば皿までと言うか――どうせいつかはばれるしばらさなきゃいけなかったんだから、それが少し早まったと思えば問題ないか」


 自分の思考の中で勝手に自己完結していると、カイルが不思議そうな声で問いかけてくる。


 一体何がですか、と。


「……リンスミート殿下を、此方の陣営に引き入れます。『真実の目』の力を使って、暗殺者を割り出す為に」






というわけで、第十四話をお送りしました。


国内の陰謀だけでなく、国外もきな臭い中、はたしてイーリスはどう動くのでしょうか。

作者もいまだに展開に迷ってます。

おかしいなぁ、ラブコメだったはずなのに。どこで間違った。


次回は、ついになぜか人気なリンスミート君の出番です。まだほとんどしゃべってないくせいに、第一王子がアレな成果人気なんですよね、彼。


それでは、次回はできるだけお待たせしないようにできればいいなと思いつつ


失礼しますね

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