↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
竜星は廻る。  作者: 雅也
弐.蠱蟲蠢蠢

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

42/45

2-4

 カシーヤの裏路地に一つの影が歩く。幽鬼の如き凶相は簒奪者マジャドのものだった。


 左腕の傷口は深く、肩は辛うじて繋がっている状態、そのはずだったが、外目(ほかめ)にはその傷のほとんどが塞がっていた。


 外装骨格(パラシトゥスアルマス)により、神経、血管、筋繊維が繋げられているのだ。今は体に馴染み切っていないが、直に外装骨格(パラシトゥスアルマス)は肉体と同化していく。


 しかし、それでもその表情には疲労が色濃く映り、満身創痍の有り様だった。


 マジャドの進行方向から革靴の音が路地裏に反響する。


「漆黒双刃(ケジャルタ)」


 街路灯と月明かりのもとに暗い黒色の肌の男が姿を現した。丸刈りの頭にはサイドに二本の剃り込みがある。全身はブラックのスーツ、シャツ、ネクタイで統一されており、高い身長としなやかな立ち姿は黒豹を思わせた。


 その手には柄の両端に片刃がついた特殊な剣が握られている。その双刃剣は、刃の湾曲した形状から弓のようでもあった。


「随分勝手をしてくれたな、翠玉簒奪(フロンデューラ)」


 叱責ではあったが、漆黒双刃(ケジャルタ)の声は低く落ち着いている。


「ふん、吾輩がどこで何をしようと貴様らには関係ないわ」


 対するマジャドの方が感情的ですらあった。


「確かに君と教団の契約はそういうものだが、それは任務に関わりがない場合に限っての話だ。ホワイトベル・ファミリーと先んじて交戦し、あまつさえ敗北するなど執行者にあるまじき失態だとは思わないか、マジャド・アズィーム・アル=ラシード」


「敗北? 勘違いをするなよ、小僧。貴様の手助けなどなくとも、吾輩はあのまま逃げ遂(おお)せておったわ」


「ふぅ、まあそういうことにしておこう」


 漆黒双刃(ケジャルタ)はわざとらしくため息を吐いた。


「……それに次の作戦は君は参加しなくてもいい」


「何?」


「負傷した君を無理に前線に出す必要はないということだ。ゆっくり体を休めてくれ給え」


 マジャドは一瞬怪訝な様子を見せたが、すぐに得心したように頷いた。


「そうか、今回はあ(・)の(・)女(・)がいたのだったな」


「ああ、故に全て問題はない。私たちが何をせずともこの都市は陥落する。私としては少々退屈な結末となりそうだが、あえて最適解を打たないというのも趣味ではなくてね」


 漆黒双刃(ケジャルタ)が静かに笑う。


「かつて国一つを滅ぼした魔性、“傾国”の業を存分に振るってもらうとしよう」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。