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第9話 夏休み最終日

 夏休み最終日。




 旧校舎三階の部室には、いつもと同じ三人が集まっていた。




 だが。




 少しだけ空気が違う。




 理由は簡単だった。




 明日から学校だからだ。




「終わるな」




 シルヴァが机に突っ伏す。




 ティナは苦笑した。




「終わるね」




 クジャも頷く。




「終わる」




 夏休み。




 始まる前は長く感じた。




 だが。




 終わる時はあっという間だった。







 シルヴァはスマホを見る。




 登録者数。




 九十七人。




 あと三人。




 本当にあと少しだった。




「惜しいな」




 シルヴァが言う。




「惜しいね」




 ティナも画面を覗く。




「惜しい」




 クジャも頷いた。




 百人。




 ほんの少し前まで想像もしていなかった数字だった。







 その日。




 三人は特別な企画をするわけではなかった。




 夏休み最後の日を。




 いつも通り過ごした。




 校庭を歩く。




 中庭へ行く。




 購買を覗く。




 誰もいない教室を見る。




 ただそれだけ。




 だが不思議と楽しかった。




 動画のネタになりそうなものを探しながら。




 三人は学校を歩いた。







 夕方。




 校庭のベンチ。




 三人は並んで座っていた。




 オレンジ色の空。




 少し涼しい風。




 夏の終わりを感じる景色だった。




「結構遊んだな」




 シルヴァが言う。




「遊んだね」




 ティナも笑う。




「遊んだ」




 クジャも頷く。




 夏祭り。




 花火。




 海。




 肝試し。




 どれも楽しかった。




 動画にも残った。




 思い出にもなった。




「来年も楽しみだな」




 シルヴァが言う。




「まだ一年生だけどね」




 ティナが笑う。




「気が早い」




 クジャも言う。




 三人は笑った。







 夜。




 部室。




 今日の動画を投稿する。




 タイトルはシンプルだった。




『夏休み最終日』




 投稿ボタンを押す。




 いつもの作業。




 いつもの放課後。




 いや。




 今日は放課後ではなく夏休みだった。




 でも。




 もうすぐ終わる。







 しばらくして。




 シルヴァが画面を見たまま固まった。




「おい」




 ティナが顔を上げる。




「何?」




 クジャも見る。




 シルヴァは画面を指差した。




 登録者数。




 九十九人。




「あ」




 ティナが声を漏らす。




「あ」




 クジャも言う。




 あと一人。




 本当にあと一人だった。




 三人は何となく画面を見続ける。




 沈黙。




 数秒。




 数十秒。




 そして。




 通知音が鳴った。




 ピロン。




 三人は同時に画面を見る。




 登録者数。




 百人。




 ちょうど百人だった。




 部室が静かになる。




 誰もすぐには喋らなかった。




 ただ画面を見ていた。




 最初の動画。




 再生数十七回。




 登録者一人。




 そこから始まった。




 大きな数字ではない。




 有名でもない。




 それでも。




 三人にとっては大切な数字だった。




「百人だな」




 シルヴァが言う。




「百人だね」




 ティナも笑う。




「百人」




 クジャも頷いた。




 三人は顔を見合わせる。




 そして。




 笑った。







 窓の外。




 夏の夜空。




 明日から新学期。




 夏休みは終わる。




 でも。




 映像アーカイ部は終わらない。




 動画も。




 放課後も。




 まだ続いていく。




 だから。




 次の思い出も残していこう。




 旧校舎三階の部室には、今日も三人の笑い声が響いていた。

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