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第10話 新学期

 九月。




 新学期初日。




 久しぶりの教室は少し騒がしかった。




 夏休みの思い出を話す声。




 宿題の話。




 日焼けした生徒。




 いつもより賑やかだった。




 シルヴァは窓際の席に座りながら欠伸をする。




 夏休みの生活リズムは簡単には戻らない。




「眠い」




 前の席からティナが振り返った。




「分かる」




 クジャも後ろの席から言う。




「分かる」




 三人とも同じだった。







 放課後。




 授業が終わる。




 シルヴァは立ち上がった。




「行くか」




「行くか」




 ティナも立つ。




「行く」




 クジャも続く。




 いつもの流れだった。




 気付けばそれが当たり前になっていた。







 旧校舎三階。




 映像アーカイ部。




 久しぶりの部室。




 数週間前まで毎日のように来ていた場所なのに、少し懐かしく感じる。




 ティナが椅子に座る。




「なんか落ち着くね」




「分かる」




 クジャも頷く。




 シルヴァはパソコンを開いた。




 何気なくチャンネルを確認する。




 登録者。




 百人。




 まだちゃんと百人だった。




「減ってないな」




「失礼だね」




 ティナが笑う。




「失礼」




 クジャも言う。







 コメント欄を眺める。




 最近は少しずつコメントも増えていた。




 その中で。




 あるコメントが目に入る。




『学校紹介してほしい』




『部室見たい』




『映像アーカイ部ってどんな部活?』




 シルヴァは画面を見せた。




「これどうだ?」




 ティナが読む。




 クジャも覗く。




「ありかも」




 ティナが言う。




「あり」




 クジャも頷いた。




 確かに。




 今まで自分たちのことをちゃんと紹介したことがない。







 カメラを回す。




 久しぶりの自己紹介動画だった。




「こんにちは」




 シルヴァがカメラを見る。




「映像アーカイ部です」




 ティナが続ける。




「三人です」




 クジャも言う。




 その後。




 部室紹介。




 機材紹介。




 普段の活動。




 今まで投稿した動画。




 色々話した。




 特別なことはない。




 でも。




 それが映像アーカイ部だった。







 撮影が終わる。




 ティナは椅子にもたれる。




「百人かぁ」




 ぽつりと呟く。




 シルヴァも少し考える。




 最初は本当に何もなかった。




 動画一本。




 登録者ゼロ。




 そこから始まった。




 今でも大きなチャンネルではない。




 だけど。




 少しだけ前に進んだ気がする。







 クジャが編集を終える。




 投稿。




 コメント。




 再生数。




 いつもの流れ。




 だけど。




 部室の空気は少しだけ違った。




 夏休みが終わったからかもしれない。




 新学期が始まったからかもしれない。




 それでも。




 三人は変わらない。




 これからも動画を撮る。




 これからも思い出を残す。




 映像アーカイ部だから。







 帰り道。




 夕焼けが校舎を染めていた。




 シルヴァは空を見上げる。




 夏は終わった。




 でも。




 放課後はまだ続く。




 映像アーカイ部の二学期が始まった。

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