第10話 新学期
九月。
新学期初日。
久しぶりの教室は少し騒がしかった。
夏休みの思い出を話す声。
宿題の話。
日焼けした生徒。
いつもより賑やかだった。
シルヴァは窓際の席に座りながら欠伸をする。
夏休みの生活リズムは簡単には戻らない。
「眠い」
前の席からティナが振り返った。
「分かる」
クジャも後ろの席から言う。
「分かる」
三人とも同じだった。
◇
放課後。
授業が終わる。
シルヴァは立ち上がった。
「行くか」
「行くか」
ティナも立つ。
「行く」
クジャも続く。
いつもの流れだった。
気付けばそれが当たり前になっていた。
◇
旧校舎三階。
映像アーカイ部。
久しぶりの部室。
数週間前まで毎日のように来ていた場所なのに、少し懐かしく感じる。
ティナが椅子に座る。
「なんか落ち着くね」
「分かる」
クジャも頷く。
シルヴァはパソコンを開いた。
何気なくチャンネルを確認する。
登録者。
百人。
まだちゃんと百人だった。
「減ってないな」
「失礼だね」
ティナが笑う。
「失礼」
クジャも言う。
◇
コメント欄を眺める。
最近は少しずつコメントも増えていた。
その中で。
あるコメントが目に入る。
『学校紹介してほしい』
『部室見たい』
『映像アーカイ部ってどんな部活?』
シルヴァは画面を見せた。
「これどうだ?」
ティナが読む。
クジャも覗く。
「ありかも」
ティナが言う。
「あり」
クジャも頷いた。
確かに。
今まで自分たちのことをちゃんと紹介したことがない。
◇
カメラを回す。
久しぶりの自己紹介動画だった。
「こんにちは」
シルヴァがカメラを見る。
「映像アーカイ部です」
ティナが続ける。
「三人です」
クジャも言う。
その後。
部室紹介。
機材紹介。
普段の活動。
今まで投稿した動画。
色々話した。
特別なことはない。
でも。
それが映像アーカイ部だった。
◇
撮影が終わる。
ティナは椅子にもたれる。
「百人かぁ」
ぽつりと呟く。
シルヴァも少し考える。
最初は本当に何もなかった。
動画一本。
登録者ゼロ。
そこから始まった。
今でも大きなチャンネルではない。
だけど。
少しだけ前に進んだ気がする。
◇
クジャが編集を終える。
投稿。
コメント。
再生数。
いつもの流れ。
だけど。
部室の空気は少しだけ違った。
夏休みが終わったからかもしれない。
新学期が始まったからかもしれない。
それでも。
三人は変わらない。
これからも動画を撮る。
これからも思い出を残す。
映像アーカイ部だから。
◇
帰り道。
夕焼けが校舎を染めていた。
シルヴァは空を見上げる。
夏は終わった。
でも。
放課後はまだ続く。
映像アーカイ部の二学期が始まった。




