第11話 文化祭準備
九月中旬。
二学期が始まって数週間が経っていた。
放課後。
ホームルームが終わった瞬間。
教室の空気が変わる。
「文化祭どうする?」
「クラス展示だって」
「模擬店やりたい」
あちこちからそんな声が聞こえてきた。
文化祭。
高校生にとっては大きなイベントだ。
シルヴァも少しだけわくわくしていた。
◇
放課後。
映像アーカイ部。
部室へ入るなりティナが言った。
「文化祭だね」
「文化祭」
クジャも頷く。
シルヴァは椅子に座りながら笑った。
「動画ネタの宝庫だな」
それは間違いなかった。
文化祭準備だけでも動画になる。
本番も動画になる。
ネタには困らない。
◇
コメント欄を確認する。
すると。
『文化祭動画楽しみ』
『学校イベント見たい』
『準備風景とか見たい』
すでに期待されていた。
「早いな」
シルヴァが笑う。
「楽しみにされてる」
ティナも嬉しそうだった。
「撮るしかない」
クジャも頷く。
◇
その日から。
三人は文化祭準備の様子を撮り始めた。
教室。
廊下。
体育館。
どこも慌ただしい。
段ボールを運ぶ生徒。
ポスターを描く生徒。
出し物の練習をする生徒。
学校全体が少し浮かれている。
そんな雰囲気だった。
◇
シルヴァはカメラを回す。
「文化祭って感じだな」
「分かる」
ティナが笑う。
「分かる」
クジャも言う。
普段と同じ学校なのに。
少しだけ違って見える。
それが文化祭だった。
◇
しばらく撮影していると。
廊下の向こうから見覚えのある人物が歩いてきた。
水色の髪。
落ち着いた雰囲気。
生徒会長。
水瀬遥だった。
「こんにちは」
ティナが挨拶する。
「こんにちは」
遥も微笑む。
シルヴァは少し驚いた。
普段あまり話す機会がないからだ。
「文化祭準備ですか?」
遥が聞く。
「動画用です」
ティナが答える。
遥は少し考えた後。
「頑張ってください」
そう言って去っていった。
短いやり取りだった。
だが。
動画にはしっかり残った。
◇
夕方。
部室。
撮影した映像を確認する。
文化祭準備の映像は思った以上に面白かった。
何か特別な事件があったわけではない。
でも。
高校生の日常が詰まっている。
「いいな」
シルヴァが言う。
「いいね」
ティナも頷く。
「いい」
クジャも満足そうだった。
◇
編集。
投稿。
コメント。
いつもの流れ。
動画のタイトルは。
『文化祭準備が始まりました』
シンプルだった。
◇
投稿後。
コメント欄。
『文化祭楽しそう』
『青春してるな』
『こういう日常好き』
『本番も楽しみ』
三人は画面を見ながら笑った。
そして登録者。
百人。
それが百十二人になっていた。
「増えたな」
シルヴァが言う。
「少しずつね」
ティナが笑う。
「順調」
クジャも頷いた。
◇
窓の外。
夕焼け。
文化祭まであと少し。
映像アーカイ部の二学期は、これからもっと忙しくなりそうだった。




