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第12話 文化祭前日

 文化祭前日。




 学校全体がいつもより騒がしかった。




 教室には段ボール。




 廊下には装飾。




 どこを見ても準備中だった。




 授業もどこか上の空。




 先生ですら少し楽しそうに見える。




 文化祭前日の独特な空気だった。







 放課後。




 映像アーカイ部の三人も準備風景を撮影していた。




 カメラ越しに見る学校は少し違って見える。




 昨日まで普通だった廊下。




 普通だった教室。




 それが少しずつ文化祭仕様になっていく。




「明日なんだな」




 シルヴァが言う。




「早いね」




 ティナが答える。




「早い」




 クジャも頷いた。







 三人は校内を歩く。




 体育館ではステージ準備。




 中庭では看板作り。




 各クラスも最後の仕上げに入っていた。




 忙しそうだ。




 でもみんな楽しそうだった。




「文化祭って感じするな」




 シルヴァが言う。




「するね」




「する」




 クジャも頷く。







 夕方。




 準備も終盤に差し掛かる。




 三人は自分たちの教室へ戻った。




 クラスメイトたちは最後の確認をしている。




 そんな中。




 ティナが脚立に乗って装飾を付けていた。




 だが。




 少し高い。




 手が届きそうで届かない。




「んー……」




 背伸びをする。




 それでも届かない。




 すると。




 後ろから手が伸びた。




 シルヴァだった。




 ひょいと飾りを受け取る。




「ここ?」




「え?」




「この辺でいい?」




「う、うん」




 あっさり届いた。




 身長差だった。




 シルヴァはそのまま飾りを取り付ける。




「終わり」




「ありがとう」




「どういたしまして」




 それだけだった。




 本当にそれだけ。




 だが。




 ティナは少しだけ視線を逸らした。




 クジャはそれを見ていた。




「青春」




「うるさい」




 即答だった。




 シルヴァだけ何も分かっていない。







 気付けば外は夕焼けだった。




 準備も終わる。




 教室には達成感が漂っていた。




 誰かが拍手をする。




 それにつられて拍手が広がる。




 文化祭前日。




 毎年ある光景。




 でも。




 高校一年生の今年は一回しかない。







 映像アーカイ部の三人は部室へ戻った。




 撮影した映像を確認する。




 準備風景。




 笑顔。




 失敗。




 雑談。




 どれも文化祭らしかった。




「いい動画になりそう」




 ティナが言う。




「なる」




 クジャも頷く。




 シルヴァは映像を見ながら笑った。




 何気ない準備の日。




 でも。




 後から見返したら。




 きっと思い出になる。




 映像アーカイ部はそういう部活だった。







 動画投稿。




 タイトル。




『文化祭前日』




 シンプルだった。







 夜。




 コメント欄。




『前日の雰囲気好き』




『明日楽しみだな』




『文化祭回待ってる』




『青春してる』




 三人はコメントを見ながら笑う。




 登録者は百十二人。




 百二十六人になっていた。




「地味に増えてるな」




 シルヴァが言う。




「ありがたいね」




 ティナも笑う。




「ありがたい」




 クジャも頷いた。







 帰り道。




 夜風が少し涼しい。




 明日は文化祭。




 高校生にとって特別な一日。




 そして。




 映像アーカイ部にとっても特別な動画の日だった。




 少しだけ期待しながら。




 三人は家路についた。

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