第13話 文化祭当日(前編)
文化祭当日。
朝。
校門の前にはすでに多くの人が集まっていた。
生徒。
保護者。
卒業生。
そして近隣の人たち。
普段の学校とは全く違う景色だった。
シルヴァは校門を見上げる。
大きな看板。
文化祭の文字。
少しだけ緊張した。
「始まったな」
隣ではティナも空を見上げている。
「始まったね」
クジャも頷いた。
「始まった」
高校生活初めての文化祭。
三人とも少しだけ浮かれていた。
◇
教室へ向かう。
昨日まで準備していた装飾は無事完成していた。
クラスメイトたちも楽しそうだ。
「おー」
シルヴァが思わず声を上げる。
昨日見ていたはずなのに。
完成すると全然違って見える。
「文化祭っぽい」
ティナが笑う。
「文化祭」
クジャも言った。
◇
映像アーカイ部も撮影を開始する。
校内はどこを歩いても賑やかだった。
模擬店。
展示。
ゲームコーナー。
ステージ発表。
普段静かな廊下ですら騒がしい。
「全部撮りたいな」
シルヴァが言う。
「無理」
ティナが即答する。
「無理」
クジャも続いた。
◇
三人は校内を歩き回った。
焼きそばを売るクラス。
お化け屋敷。
写真展示。
射的。
色々な場所を見て回る。
どこも楽しそうだった。
撮影しながら。
食べながら。
笑いながら。
時間が過ぎていく。
◇
中庭。
三人はベンチに座って休憩していた。
人の声が遠くから聞こえる。
空は綺麗に晴れていた。
「思ったより忙しいな」
シルヴァがジュースを飲みながら言う。
「撮る場所多いからね」
ティナも笑う。
「多い」
クジャも頷く。
文化祭は想像以上だった。
◇
その時だった。
校内放送が流れる。
『これより体育館ステージを開始します』
歓声が聞こえた。
「行く?」
ティナが聞く。
「行くか」
シルヴァが立ち上がる。
「行く」
クジャも続いた。
カメラを持って体育館へ向かう。
◇
体育館。
すでに多くの生徒が集まっていた。
軽音楽部。
ダンス部。
有志発表。
文化祭ならではのステージだった。
三人は後ろの席に座る。
カメラを回す。
歓声。
拍手。
音楽。
どれも文化祭らしい。
「すごいな」
シルヴァが言う。
「すごいね」
ティナも頷く。
「すごい」
クジャも言った。
◇
発表が終わる。
三人は体育館を出た。
外は少しだけ夕方の色になっている。
気付けばかなり時間が経っていた。
それだけ楽しかったのだろう。
◇
校舎へ戻る途中。
人混みの中。
ティナが少し遅れる。
シルヴァは振り返った。
「大丈夫か?」
「え?」
「人多いし」
自然な一言だった。
だが。
ティナは少しだけ笑う。
「大丈夫」
そう答えながら歩き出した。
クジャはそれを見ていた。
「青春」
「うるさい」
今日も即答だった。
◇
文化祭はまだ終わらない。
むしろこれからだった。
夕方。
校舎をオレンジ色の光が照らす。
三人はカメラを持ったまま歩いていく。
高校一年生の文化祭。
その一日はまだ続いていた。




