第14話 文化祭当日(後編)
夕方。
文化祭は終わりに近付いていた。
朝から賑やかだった校内も、少しずつ落ち着き始めている。
それでも。
まだ楽しそうな声はあちこちから聞こえていた。
◇
映像アーカイ部の三人は最後の撮影を続けていた。
校庭。
中庭。
廊下。
朝から見てきた景色が少しずつ変わっていく。
文化祭の終わりが近付いている。
そんな空気が漂っていた。
「終わるな」
シルヴァが言う。
「終わるね」
ティナも答える。
「終わる」
クジャも頷いた。
◇
校内放送が流れる。
『文化祭終了まで残り十分です』
その瞬間。
あちこちから残念そうな声が上がる。
三人も少しだけ静かになった。
楽しい時間は早い。
文化祭も同じだった。
◇
最後に。
三人は屋上へ向かった。
普段は立ち入り禁止だが、文化祭期間だけ解放されている。
夕焼けが街を照らしていた。
遠くまで見渡せる。
風が気持ちいい。
「綺麗だな」
シルヴァが呟く。
ティナもフェンス越しに街を見た。
「うん」
クジャも隣に立つ。
しばらく誰も喋らなかった。
ただ景色を見ていた。
◇
高校一年生。
初めての文化祭。
春に出会った三人。
まだ半年も経っていない。
それなのに。
もうずっと一緒にいる気がした。
「入ってよかったな」
シルヴァがぽつりと言う。
「何が?」
ティナが聞く。
「映像アーカイ部」
ティナは少し笑った。
クジャも小さく頷く。
「私も」
「私も」
二人とも同じだった。
◇
夕焼けの中。
三人はカメラを回した。
文化祭の締めの映像。
特別な言葉はない。
でも。
それで良かった。
映像アーカイ部らしかったからだ。
◇
文化祭終了。
校内放送が流れる。
同時に大きな拍手が起きた。
どこからともなく歓声も聞こえる。
三人も拍手した。
文化祭は終わった。
だけど。
嫌な終わり方ではない。
楽しかったからだ。
◇
夜。
部室。
クジャが編集している。
今日だけで撮った映像はかなり多かった。
「長くなりそう」
ティナが言う。
「なる」
クジャが答える。
シルヴァは完成した動画を眺めた。
朝の校門。
模擬店。
体育館。
夕焼け。
全部入っている。
文化祭そのものだった。
◇
動画投稿。
タイトル。
『文化祭でした』
シンプルだった。
でも。
それで十分だった。
◇
数時間後。
三人はコメント欄を見ていた。
『文化祭楽しそう』
『青春すぎる』
『屋上のシーン良かった』
『文化祭回神だった』
『高校生に戻りたい』
たくさんのコメントが並んでいる。
そして。
登録者数。
百二十六人。
↓
百五十八人。
「増えたな」
シルヴァが言う。
「増えたね」
ティナも笑う。
「順調」
クジャも頷いた。
◇
帰り道。
夜風が吹く。
文化祭は終わった。
夏も終わった。
でも。
二学期はまだ続く。
映像アーカイ部の放課後も。
まだまだ続いていく。
高校一年生の秋が、静かに始まろうとしていた。




