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第7話 放課後海

 夏休みも中盤に差しかかっていた。




 午後。




 映像アーカイ部の部室。




 シルヴァはスマホを見ながら首を傾げていた。




「海人気だな」




 ティナが覗き込む。




 クジャも近付いた。




 コメント欄には同じような内容が並んでいる。




『海回やって』




『夏といえば海』




『三人で海行ってほしい』




 分かりやすかった。




 とても。




「行きたいんじゃない?」




 ティナが言う。




「行きたい」




 クジャも頷く。




 シルヴァは立ち上がった。




「行くか」




「軽いね」




「いつも通り」




 三人は笑った。







 翌日。




 電車の中。




 窓の外には青空が広がっている。




 海へ向かう電車は思ったより混んでいた。




 夏休みだからだろう。




 家族連れ。




 友達同士。




 カップル。




 様々な人が乗っている。




「遠足みたいだな」




 シルヴァが言う。




「高校生だけどね」




 ティナが笑う。




「高校生」




 クジャも頷く。




 それだけの会話なのに。




 少し楽しかった。







 海に着いた。




 青い空。




 青い海。




 白い砂浜。




 思わず足を止める。




「海だ」




 シルヴァが呟く。




「海だね」




「海」




 クジャも言う。




 夏だった。




 間違いなく。







 着替えを済ませる。




 シルヴァはラッシュガード。




 ティナは水色を基調とした水着。




 クジャは黒いパーカー付きの水着だった。




 シルヴァは少しだけ驚いた。




 普段見慣れている制服とは全然違う。




「どうしたの?」




 ティナが聞く。




「いや」




 少し考える。




「似合ってるなと思って」




 ティナが固まる。




 数秒。




 動きが止まる。




「ありがとう」




 少しだけ照れたように笑った。




 その様子を見ていたクジャが言う。




「また照れてる」




「照れてない」




「照れてる」




「うるさい」




 シルヴァはよく分かっていなかった。







 海。




 三人は思い切り遊んだ。




 ビーチボール。




 水の掛け合い。




 砂浜。




 どれも高校生らしい遊びだった。




 そして。




 当然のように。




 シルヴァは転んだ。




「痛っ」




「弱い」




 ティナが笑う。




「弱い」




 クジャも言う。




「砂が悪い」




「言い訳」




「言い訳」




 二人同時だった。







 海の家。




 三人は休憩していた。




 冷たい飲み物。




 かき氷。




 潮風。




 どれも気持ちいい。




「生き返る」




 ティナが言う。




「分かる」




 クジャも頷く。




 シルヴァはかき氷を食べながら海を見る。




 夏休み。




 海。




 友達。




 思い返してみる。




 少し前まで。




 こんな夏になるとは思っていなかった。




 部活にも入っていなかったし。




 動画を撮ることもなかった。




 でも今は。




 それが当たり前になっている。







 夕方。




 空が少しずつオレンジ色に染まる。




 三人は波打ち際を歩いていた。




 人も少なくなっている。




 波の音だけが静かに聞こえる。




「楽しかったな」




 シルヴァが言う。




「うん」




 ティナが答える。




「うん」




 クジャも頷く。




 少しだけ静かな時間だった。




「夏休みって早いよね」




 ティナが海を見ながら言う。




「まだあるだろ」




「そうなんだけど」




 ティナは笑った。




「気付いたら終わる気がする」




 クジャも頷く。




「分かる」




 少しだけ静かになる。




 だが。




 シルヴァは笑った。




「じゃあいっぱい遊ぶか」




 ティナも笑う。




「賛成」




「賛成」




 クジャも頷いた。




 夏休みはまだ続く。




 だから。




 思い出もまだ増える。







 夜。




 動画投稿。




 コメント欄はいつもより賑やかだった。




『海回最高』




『夏って感じ』




『この三人好き』




『夕方のシーン良かった』




 そして登録者。




 五十八人。




 それが七十九人になっていた。




「七十九人」




 シルヴァが言う。




「もう少しで百人だね」




 ティナが笑う。




「見えてきた」




 クジャも頷く。




 百人。




 最初は想像もしていなかった数字だった。




 だけど。




 少しだけ現実味が出てきていた。




 映像アーカイ部の夏は、まだ続いていく。

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