第6話 放課後花火
夏祭りから数日後。
夏休みはまだ続いていた。
午後の部室。
シルヴァはスマホを見ながら椅子を揺らしていた。
「また来てるな」
ティナが覗き込む。
クジャも近付いた。
コメント欄。
『手持ち花火回やって』
『夏祭りの続き見たい』
『花火やれ』
分かりやすかった。
「好きだな」
ティナが笑う。
「好き」
クジャも頷く。
シルヴァは立ち上がった。
「行くか」
「軽いな」
「いつも通り」
三人は笑った。
◇
夕方。
近所のスーパー。
花火売り場の前で三人は立ち止まる。
色々な種類の花火が並んでいた。
シルヴァの目が少し輝く。
「いっぱいあるな」
「子供」
ティナが言う。
「知ってた」
クジャも続く。
シルヴァは負けない。
「ロマンだろ」
「分からなくはない」
「分かる」
クジャが即答した。
結局。
三人は大量の花火を抱えてレジへ向かった。
「買いすぎじゃない?」
ティナが言う。
「必要経費」
シルヴァは真面目な顔で答えた。
クジャは小さく笑っていた。
◇
夜。
河川敷。
風が気持ちいい。
昼間の暑さも少しだけ和らいでいた。
三人は花火を並べる。
「始めるか」
「おー」
「おー」
ライターに火を付ける。
最初の花火が光り始めた。
シュウウウ。
小さな光が夜を照らす。
夏祭りの大きな花火とは違う。
手の届く距離にある花火だった。
「綺麗だな」
シルヴァが言う。
「綺麗だね」
ティナも頷く。
「綺麗」
クジャも言った。
◇
しばらくして。
三人は花火を楽しんでいた。
線香花火。
噴出花火。
手持ち花火。
どれも思った以上に楽しい。
ティナは笑顔だった。
クジャも珍しく少し楽しそうに見える。
シルヴァはそんな二人を見ていた。
「楽しい?」
何となく聞く。
ティナはすぐに頷いた。
「楽しい」
即答だった。
「良かった」
シルヴァも笑う。
「シルヴァは?」
「楽しい」
こちらも即答だった。
ティナが少しだけ笑う。
その様子を見ていたクジャがぽつりと言った。
「青春」
「うるさい」
ティナが返す。
「何が?」
シルヴァだけ分かっていない。
クジャは肩をすくめた。
◇
最後は線香花火だった。
三人並んで座る。
静かな夜。
小さな火が揺れている。
パチ。
パチパチ。
誰も喋らない。
ただ花火を見ていた。
やがて。
一つ。
また一つ。
火が消えていく。
「終わるな」
シルヴァが言う。
「終わるね」
ティナも答える。
「終わる」
クジャも頷く。
少しだけ寂しい。
でも嫌な気分ではなかった。
楽しい時間だったからだ。
◇
最後まで残ったのはティナの線香花火だった。
なかなか落ちない。
「強いな」
シルヴァが言う。
「強い」
クジャも言う。
ティナは少し得意そうだった。
「勝った」
「何に?」
「何かに」
三人は笑った。
◇
部室へ戻る。
クジャが編集を始める。
映像が少しずつ動画になっていく。
シルヴァはその様子を眺めていた。
河川敷。
花火。
笑うティナ。
無表情なクジャ。
そして自分。
何気ない夏の一日だった。
でも。
ちゃんと残る。
動画として。
思い出として。
◇
投稿後。
コメント欄には反応が並んでいた。
『線香花火いいな』
『夏を感じる』
『この三人好き』
『癒やされた』
三人は画面を見ながら笑った。
登録者は四十一人から五十八人になっていた。
「増えたな」
シルヴァが言う。
「増えたね」
ティナも笑う。
「順調」
クジャが頷く。
夏休みはまだ終わらない。
映像アーカイ部の思い出も、まだ増えていく。




