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第6話 放課後花火

 夏祭りから数日後。




 夏休みはまだ続いていた。




 午後の部室。




 シルヴァはスマホを見ながら椅子を揺らしていた。




「また来てるな」




 ティナが覗き込む。




 クジャも近付いた。




 コメント欄。




『手持ち花火回やって』




『夏祭りの続き見たい』




『花火やれ』




 分かりやすかった。




「好きだな」




 ティナが笑う。




「好き」




 クジャも頷く。




 シルヴァは立ち上がった。




「行くか」




「軽いな」




「いつも通り」




 三人は笑った。







 夕方。




 近所のスーパー。




 花火売り場の前で三人は立ち止まる。




 色々な種類の花火が並んでいた。




 シルヴァの目が少し輝く。




「いっぱいあるな」




「子供」




 ティナが言う。




「知ってた」




 クジャも続く。




 シルヴァは負けない。




「ロマンだろ」




「分からなくはない」




「分かる」




 クジャが即答した。




 結局。




 三人は大量の花火を抱えてレジへ向かった。




「買いすぎじゃない?」




 ティナが言う。




「必要経費」




 シルヴァは真面目な顔で答えた。




 クジャは小さく笑っていた。







 夜。




 河川敷。




 風が気持ちいい。




 昼間の暑さも少しだけ和らいでいた。




 三人は花火を並べる。




「始めるか」




「おー」




「おー」




 ライターに火を付ける。




 最初の花火が光り始めた。




 シュウウウ。




 小さな光が夜を照らす。




 夏祭りの大きな花火とは違う。




 手の届く距離にある花火だった。




「綺麗だな」




 シルヴァが言う。




「綺麗だね」




 ティナも頷く。




「綺麗」




 クジャも言った。







 しばらくして。




 三人は花火を楽しんでいた。




 線香花火。




 噴出花火。




 手持ち花火。




 どれも思った以上に楽しい。




 ティナは笑顔だった。




 クジャも珍しく少し楽しそうに見える。




 シルヴァはそんな二人を見ていた。




「楽しい?」




 何となく聞く。




 ティナはすぐに頷いた。




「楽しい」




 即答だった。




「良かった」




 シルヴァも笑う。




「シルヴァは?」




「楽しい」




 こちらも即答だった。




 ティナが少しだけ笑う。




 その様子を見ていたクジャがぽつりと言った。




「青春」




「うるさい」




 ティナが返す。




「何が?」




 シルヴァだけ分かっていない。




 クジャは肩をすくめた。







 最後は線香花火だった。




 三人並んで座る。




 静かな夜。




 小さな火が揺れている。




 パチ。




 パチパチ。




 誰も喋らない。




 ただ花火を見ていた。




 やがて。




 一つ。




 また一つ。




 火が消えていく。




「終わるな」




 シルヴァが言う。




「終わるね」




 ティナも答える。




「終わる」




 クジャも頷く。




 少しだけ寂しい。




 でも嫌な気分ではなかった。




 楽しい時間だったからだ。







 最後まで残ったのはティナの線香花火だった。




 なかなか落ちない。




「強いな」




 シルヴァが言う。




「強い」




 クジャも言う。




 ティナは少し得意そうだった。




「勝った」




「何に?」




「何かに」




 三人は笑った。







 部室へ戻る。




 クジャが編集を始める。




 映像が少しずつ動画になっていく。




 シルヴァはその様子を眺めていた。




 河川敷。




 花火。




 笑うティナ。




 無表情なクジャ。




 そして自分。




 何気ない夏の一日だった。




 でも。




 ちゃんと残る。




 動画として。




 思い出として。







 投稿後。




 コメント欄には反応が並んでいた。




『線香花火いいな』




『夏を感じる』




『この三人好き』




『癒やされた』




 三人は画面を見ながら笑った。




 登録者は四十一人から五十八人になっていた。




「増えたな」




 シルヴァが言う。




「増えたね」




 ティナも笑う。




「順調」




 クジャが頷く。




 夏休みはまだ終わらない。




 映像アーカイ部の思い出も、まだ増えていく。

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