第4話 放課後ゲーセン
登録者が一人になった翌週。
放課後。
シルヴァは部室のパソコンを見ていた。
「これ多くないか?」
ティナが隣から画面を覗く。
「何が?」
「コメント」
クジャも近付いてくる。
画面には同じような内容が並んでいた。
『ゲーセン回やってほしい』
『ゲームセンター行こう』
『ゲーセン企画見たい』
思った以上に多い。
もちろん大人気というほどではない。
そもそも登録者はまだ一人だ。
だがコメント欄には確かに書かれていた。
「本当だ」
ティナが言う。
「多い」
クジャも頷く。
シルヴァは立ち上がった。
「行くか」
「軽いな」
「いつも通り」
三人は笑った。
◇
学校帰り。
駅前商店街。
その先にあるゲームセンターへ向かう。
シルヴァは少しだけテンションが高かった。
「来たことあるの?」
ティナが聞く。
「見るだけなら」
「悲しい」
「悲しい」
クジャまで追撃してくる。
シルヴァは少しだけ悔しかった。
◇
ゲームセンター。
自動ドアが開く。
電子音。
ゲーム音楽。
クレーンゲーム。
音楽ゲーム。
格闘ゲーム。
思った以上に賑やかだった。
「おお……」
シルヴァの目が輝く。
「子供みたい」
ティナが笑う。
「子供」
クジャも言う。
否定できなかった。
◇
最初に向かったのはクレーンゲームだった。
狙うのは大きなぬいぐるみ。
百円を投入する。
アームが動く。
持ち上がる。
落ちる。
「嘘だろ」
「知ってた」
「知ってた」
即答だった。
シルヴァは納得できない。
「まだ一回目だから」
だが。
五百円後。
結果は変わらなかった。
「難しくないか?」
「今気付いた?」
「六回目」
クジャの言葉が刺さる。
シルヴァは真顔になった。
◇
次に向かったのは音楽ゲーム。
ティナが興味深そうに画面を見ていた。
「やる?」
シルヴァが聞く。
「やる」
即答だった。
ゲームが始まる。
流れてくるノーツ。
軽快な音楽。
そして。
ティナは意外と上手かった。
「上手いな」
シルヴァが驚く。
「上手い」
クジャも頷く。
ティナは少しだけ得意そうだった。
「ふふん」
その顔が少し面白くて。
二人は笑った。
◇
気付けば時間は過ぎていた。
シルヴァはクレーンゲームに負け続け。
ティナは音楽ゲームで盛り上がり。
クジャはその様子を撮影していた。
「いい映像」
クジャが言う。
「撮るな」
「撮る」
即答だった。
◇
帰り際。
三人はプリクラ機の前で立ち止まった。
「撮る?」
シルヴァが言う。
「記念に?」
ティナが聞く。
「あり」
クジャが頷く。
決まりだった。
◇
プリクラの中。
三人は並ぶ。
シルヴァは変顔。
ティナは笑顔。
クジャは少し困った顔。
フラッシュが光る。
そして完成した写真を見て。
三人は同時に吹き出した。
「誰だこれ」
「盛れすぎ」
「別人」
ゲームセンター中に響きそうなほど笑った。
◇
帰り道。
夕焼けが街を赤く染めていた。
三人は少しだけ歩く速度を落とす。
シルヴァはプリクラを見つめた。
たった一枚の写真。
それなのに。
今日一日のことを思い出せる気がした。
「残るんだな」
思わずそう呟く。
「何が?」
ティナが聞いた。
「こういうの」
プリクラを見せる。
「昔の写真とか見ると、その時のこと思い出すだろ」
ティナは少しだけ写真を見る。
クジャも覗き込んだ。
「記録だから」
クジャが言う。
映像アーカイ部らしい答えだった。
「じゃあ捨てられないね」
ティナが笑う。
「捨てない」
「私も」
クジャも言った。
夕焼けの中。
三人は少しだけ笑った。
◇
その日の夜。
動画は投稿された。
コメントも増えた。
再生数も少しずつ伸びた。
そして。
登録者は一人から二十三人になった。
数字だけ見れば小さい。
だけど。
三人にとっては十分大きかった。
映像アーカイ部の放課後は。
少しずつ前へ進んでいた。




