第3話 初めてのコメント
最初の動画を投稿してから三日が経った。
放課後。
シルヴァは部室の扉を開けるなりパソコンへ向かった。
ティナが不思議そうに見る。
「どうしたの?」
「いや」
シルヴァは少しだけ気まずそうに頭をかく。
「ちょっと気になる」
何が気になるのか。
ティナもクジャも分かっていた。
動画だった。
最初に投稿した動画。
『学校に犬がいた』
その再生数が気になって仕方なかった。
ティナは笑う。
「見てみようか」
三人はパソコンの前に集まった。
動画を開く。
再生数。
17回。
決して多くはない。
だがゼロではなかった。
「17回」
シルヴァが呟く。
少し嬉しい。
誰かが見てくれた。
それだけで十分だった。
「コメントも来てる」
ティナが画面を指差した。
シルヴァは目を見開く。
「マジ?」
初めてのコメント。
三人は少し緊張しながら開いた。
『犬かわいい』
部室が静かになる。
そして。
三人同時に笑った。
「犬だもんな」
「犬だったね」
「犬」
間違いなかった。
あの日の主役は犬だった。
もう一件あった。
『次の動画も楽しみにしてます』
今度は少し静かになる。
誰かが。
次を待っている。
たった一人かもしれない。
それでも嬉しかった。
ティナが笑う。
「期待されちゃったね」
「そうだな」
シルヴァも笑った。
クジャは小さく頷く。
「撮る」
その一言で決まった。
次の動画を撮ろう。
もっと面白いものを。
もっと楽しいものを。
三人は部室を飛び出した。
だが。
現実はそう甘くない。
校庭を歩く。
廊下を歩く。
中庭を歩く。
何も起きない。
本当に何も起きない。
「平和だな」
シルヴァが言う。
「平和だね」
「平和」
クジャも頷く。
十分後。
何もない。
二十分後。
まだ何もない。
「動画終わったな」
シルヴァが言う。
「終わったね」
ティナも言う。
「終わった」
クジャも言う。
その時だった。
チャイムが鳴る。
放課後終了。
三人は顔を見合わせた。
そして笑う。
結局。
今日は何も撮れなかった。
だがそれも少し面白かった。
部室へ戻る。
シルヴァは窓際の席へ座った。
夕日が差し込む。
ティナは机に突っ伏している。
クジャは編集ソフトを開いていた。
「次はちゃんと撮ろう」
シルヴァが言う。
「賛成」
ティナが答える。
「賛成」
クジャも頷く。
次こそ。
何か面白いことを見つける。
三人はそう決めた。
その時。
パソコンの画面が更新される。
登録者。
1人。
三人は固まった。
「増えた」
ティナが言う。
「増えたね」
クジャも言う。
シルヴァは少し笑った。
知らない誰か一人。
それでも。
映像アーカイ部にとっては大きな一歩だった。
夕焼けの旧校舎。
三人の放課後は続いていく。




