第30話 放課後こたつ
一月下旬。
冬。
とにかく寒い。
◇
放課後。
映像アーカイ部の部室。
シルヴァは机に突っ伏していた。
◇
「寒い」
◇
ティナがため息をつく。
◇
「最近それしか言ってない」
◇
「寒いからな」
◇
クジャも頷く。
◇
「寒い」
◇
珍しく意見が一致した。
◇
暖房は付いている。
だが旧校舎は寒い。
窓際は特に寒い。
◇
その時だった。
◇
クジャが部室の隅を指差す。
◇
「ある」
◇
「何が?」
◇
シルヴァとティナが見る。
◇
そこには。
◇
小さなこたつがあった。
◇
部室の備品らしい。
かなり昔から置かれているのだろう。
普段は布が掛かっていたので気付かなかった。
◇
「こたつだ」
◇
「こたつだね」
◇
「こたつ」
◇
三人は近付く。
◇
「使えるのか?」
◇
コンセントを差す。
◇
数分後。
◇
暖かい。
◇
「神だ」
シルヴァが言った。
◇
「早い」
◇
「早い」
◇
二人が言う。
◇
だが。
気持ちは分かる。
◇
三人はこたつに入る。
◇
暖かい。
◇
本当に暖かい。
◇
「出たくない」
シルヴァが言う。
◇
「分かる」
◇
「分かる」
◇
全員同意だった。
◇
数分後。
◇
誰も動かない。
◇
完全にダメになっていた。
◇
ティナはこたつに顔を乗せている。
クジャは半分眠そう。
シルヴァも動く気がない。
◇
「動画は?」
ティナが聞く。
◇
「撮ってる」
◇
クジャがカメラを指差す。
◇
ちゃんと回っていた。
◇
「えらい」
◇
「えらい」
◇
今日も仕事はしているらしい。
◇
外は寒い。
部室は暖かい。
それだけだった。
◇
シルヴァは天井を見る。
◇
「ここ住めるな」
◇
「住まない」
◇
「住まない」
◇
即否定された。
◇
だが。
少しだけ本気だった。
◇
その時。
ティナがみかんを取り出した。
◇
「なんで持ってるんだ」
◇
「冬だから」
◇
意味は分からない。
◇
だが。
こたつとみかんは相性が良かった。
◇
三人で食べる。
◇
「うまい」
◇
「うまいね」
◇
「うまい」
◇
平和だった。
◇
本当に平和だった。
◇
気付けば夕方。
窓の外はオレンジ色だった。
◇
「そろそろ帰る?」
ティナが言う。
◇
誰も動かない。
◇
「帰る?」
◇
誰も動かない。
◇
「帰る」
◇
クジャが言った。
◇
それでも誰も動かない。
◇
三人は笑った。
◇
結局。
さらに十分こたつに入っていた。
◇
部室。
編集。
投稿。
タイトル。
◇
『放課後こたつ』
◇
コメント欄。
『分かる』
『こたつは出られない』
『みかんで笑った』
『平和すぎる』
『この回好き』
◇
登録者数。
六百七十八人。
↓
七百三十五人。
◇
「七百人超えた」
シルヴァが言う。
◇
「順調だね」
ティナも笑う。
◇
「順調」
クジャも頷いた。
◇
窓の外。
冬の夕焼け。
部室のこたつ。
そして三人の笑い声。
◇
映像アーカイ部の放課後は。
今日もゆっくり続いていた。




