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第30話 放課後こたつ

 一月下旬。




 冬。




 とにかく寒い。







 放課後。




 映像アーカイ部の部室。




 シルヴァは机に突っ伏していた。







「寒い」







 ティナがため息をつく。







「最近それしか言ってない」







「寒いからな」







 クジャも頷く。







「寒い」







 珍しく意見が一致した。







 暖房は付いている。




 だが旧校舎は寒い。




 窓際は特に寒い。







 その時だった。







 クジャが部室の隅を指差す。







「ある」







「何が?」







 シルヴァとティナが見る。







 そこには。







 小さなこたつがあった。







 部室の備品らしい。




 かなり昔から置かれているのだろう。




 普段は布が掛かっていたので気付かなかった。







「こたつだ」







「こたつだね」







「こたつ」







 三人は近付く。







「使えるのか?」







 コンセントを差す。







 数分後。







 暖かい。







「神だ」




 シルヴァが言った。







「早い」







「早い」







 二人が言う。







 だが。




 気持ちは分かる。







 三人はこたつに入る。







 暖かい。







 本当に暖かい。







「出たくない」




 シルヴァが言う。







「分かる」







「分かる」







 全員同意だった。







 数分後。







 誰も動かない。







 完全にダメになっていた。







 ティナはこたつに顔を乗せている。




 クジャは半分眠そう。




 シルヴァも動く気がない。







「動画は?」




 ティナが聞く。







「撮ってる」







 クジャがカメラを指差す。







 ちゃんと回っていた。







「えらい」







「えらい」







 今日も仕事はしているらしい。







 外は寒い。




 部室は暖かい。




 それだけだった。







 シルヴァは天井を見る。







「ここ住めるな」







「住まない」







「住まない」







 即否定された。







 だが。




 少しだけ本気だった。







 その時。




 ティナがみかんを取り出した。







「なんで持ってるんだ」







「冬だから」







 意味は分からない。







 だが。




 こたつとみかんは相性が良かった。







 三人で食べる。







「うまい」







「うまいね」







「うまい」







 平和だった。







 本当に平和だった。







 気付けば夕方。




 窓の外はオレンジ色だった。







「そろそろ帰る?」




 ティナが言う。







 誰も動かない。







「帰る?」







 誰も動かない。







「帰る」







 クジャが言った。







 それでも誰も動かない。







 三人は笑った。







 結局。




 さらに十分こたつに入っていた。







 部室。




 編集。




 投稿。




 タイトル。







『放課後こたつ』







 コメント欄。




『分かる』




『こたつは出られない』




『みかんで笑った』




『平和すぎる』




『この回好き』







 登録者数。




 六百七十八人。




 ↓




 七百三十五人。







「七百人超えた」




 シルヴァが言う。







「順調だね」




 ティナも笑う。







「順調」




 クジャも頷いた。







 窓の外。




 冬の夕焼け。




 部室のこたつ。




 そして三人の笑い声。







 映像アーカイ部の放課後は。




 今日もゆっくり続いていた。

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