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第29話 雪の日

 一月中旬。




 朝。




 シルヴァはカーテンを開けて固まった。




 外が白かった。







 雪。




 それも思ったより積もっている。







「マジか」




 思わず呟く。




 冬らしい景色だった。







 学校へ向かう。




 通学路。




 屋根。




 公園。




 全部白い。




 いつも見ている景色なのに別の場所みたいだった。







 教室へ入る。




 すでにみんな雪の話をしている。




 窓際には人だかり。




 グラウンドを眺めているらしい。







「雪だ」




 ティナが言う。







「雪だな」







「雪」







 クジャも頷く。







 高校生になっても雪は少し特別だった。







 放課後。




 映像アーカイ部の部室。




 三人は当然のように窓の外を見ていた。







「やるか」




 シルヴァが言う。







「やるね」







「やる」







 全員同じことを考えていた。







 校庭。




 まだ雪が残っている。




 誰かが作った小さな雪だるまも見える。







 三人はカメラを持って外へ出た。







「寒っ」




 ティナが肩を縮める。







「寒い」







「寒い」







 クジャも言う。







 冬だった。







 シルヴァは雪を集め始める。




 ティナも手伝う。




 クジャは撮影している。







「撮るだけ?」




 シルヴァが聞く。







「記録係」







 クジャが答える。







「便利な言葉だな」







 だがその数分後。




 クジャも普通に雪を転がしていた。







「記録係」




 ティナが言う。







「休憩中」







 クジャは真顔だった。







 三人は笑う。







 雪だるまは少しずつ大きくなる。




 頭。




 胴体。




 枝の腕。







 完成。







 少し歪だった。




 だが。




 三人らしい雪だるまだった。







「いいな」




 シルヴァが言う。







「いいね」







「いい」







 クジャも頷く。







 その時だった。







 ティナが雪玉を投げる。







 命中。







「冷たっ!」







 シルヴァが叫ぶ。







 ティナは笑っている。







「やった」







「戦争だな」







 シルヴァは雪玉を作る。







 ティナが逃げる。







 クジャが撮る。







 そして巻き込まれる。







「痛い」







「ごめん」







「ごめん」







 三人は笑った。







 夕方。




 雪は少しずつ溶け始めていた。




 空はオレンジ色。




 冬の夕焼けだった。







 三人は完成した雪だるまを見る。







「明日にはないかな」




 ティナが言う。







「たぶんな」




 シルヴァが答える。







「たぶん」




 クジャも頷く。







 少しだけ寂しい。




 でも。




 動画には残る。




 写真にも残る。




 だから大丈夫だった。







 部室。




 編集。




 投稿。




 タイトル。




『雪の日』







 コメント欄。




『雪だるま可愛い』




『青春してるな』




『雪合戦好き』




『こういう日常回最高』




『冬って感じ』







 登録者数。




 六百二十三人。




 ↓




 六百七十八人。







「増えたな」




 シルヴァが言う。







「雪強いね」




 ティナが笑う。







「人気」




 クジャも頷く。







 窓の外。




 冬の夜空。




 映像アーカイ部の冬はまだ続いていた。

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