第29話 雪の日
一月中旬。
朝。
シルヴァはカーテンを開けて固まった。
外が白かった。
◇
雪。
それも思ったより積もっている。
◇
「マジか」
思わず呟く。
冬らしい景色だった。
◇
学校へ向かう。
通学路。
屋根。
公園。
全部白い。
いつも見ている景色なのに別の場所みたいだった。
◇
教室へ入る。
すでにみんな雪の話をしている。
窓際には人だかり。
グラウンドを眺めているらしい。
◇
「雪だ」
ティナが言う。
◇
「雪だな」
◇
「雪」
◇
クジャも頷く。
◇
高校生になっても雪は少し特別だった。
◇
放課後。
映像アーカイ部の部室。
三人は当然のように窓の外を見ていた。
◇
「やるか」
シルヴァが言う。
◇
「やるね」
◇
「やる」
◇
全員同じことを考えていた。
◇
校庭。
まだ雪が残っている。
誰かが作った小さな雪だるまも見える。
◇
三人はカメラを持って外へ出た。
◇
「寒っ」
ティナが肩を縮める。
◇
「寒い」
◇
「寒い」
◇
クジャも言う。
◇
冬だった。
◇
シルヴァは雪を集め始める。
ティナも手伝う。
クジャは撮影している。
◇
「撮るだけ?」
シルヴァが聞く。
◇
「記録係」
◇
クジャが答える。
◇
「便利な言葉だな」
◇
だがその数分後。
クジャも普通に雪を転がしていた。
◇
「記録係」
ティナが言う。
◇
「休憩中」
◇
クジャは真顔だった。
◇
三人は笑う。
◇
雪だるまは少しずつ大きくなる。
頭。
胴体。
枝の腕。
◇
完成。
◇
少し歪だった。
だが。
三人らしい雪だるまだった。
◇
「いいな」
シルヴァが言う。
◇
「いいね」
◇
「いい」
◇
クジャも頷く。
◇
その時だった。
◇
ティナが雪玉を投げる。
◇
命中。
◇
「冷たっ!」
◇
シルヴァが叫ぶ。
◇
ティナは笑っている。
◇
「やった」
◇
「戦争だな」
◇
シルヴァは雪玉を作る。
◇
ティナが逃げる。
◇
クジャが撮る。
◇
そして巻き込まれる。
◇
「痛い」
◇
「ごめん」
◇
「ごめん」
◇
三人は笑った。
◇
夕方。
雪は少しずつ溶け始めていた。
空はオレンジ色。
冬の夕焼けだった。
◇
三人は完成した雪だるまを見る。
◇
「明日にはないかな」
ティナが言う。
◇
「たぶんな」
シルヴァが答える。
◇
「たぶん」
クジャも頷く。
◇
少しだけ寂しい。
でも。
動画には残る。
写真にも残る。
だから大丈夫だった。
◇
部室。
編集。
投稿。
タイトル。
『雪の日』
◇
コメント欄。
『雪だるま可愛い』
『青春してるな』
『雪合戦好き』
『こういう日常回最高』
『冬って感じ』
◇
登録者数。
六百二十三人。
↓
六百七十八人。
◇
「増えたな」
シルヴァが言う。
◇
「雪強いね」
ティナが笑う。
◇
「人気」
クジャも頷く。
◇
窓の外。
冬の夜空。
映像アーカイ部の冬はまだ続いていた。




