第28話 初詣
一月一日。
新年。
冬の空気は冷たい。
吐く息は白い。
◇
午後。
駅前の待ち合わせ場所。
シルヴァは先に来ていた。
黒いコート。
マフラー。
完全防寒だった。
◇
「お待たせ」
声が聞こえる。
振り返る。
ティナだった。
白いコートに赤いマフラー。
普段の制服とは少し雰囲気が違う。
◇
「寒いな」
シルヴァが言う。
◇
「寒いね」
ティナも頷く。
◇
その直後。
「寒い」
クジャが現れた。
黒いコート。
黒いマフラー。
いつも通りだった。
◇
「新年だな」
シルヴァが言う。
◇
「新年だね」
◇
「新年」
◇
今年最初の会話だった。
◇
三人は神社へ向かう。
人は多い。
参拝客の列が続いている。
屋台も出ていた。
少しだけお祭りみたいだった。
◇
「思ったよりいるな」
シルヴァが言う。
◇
「初詣だし」
◇
「初詣」
◇
三人は列へ並んだ。
◇
少しずつ進む。
冬の空。
神社の鐘の音。
新年らしい空気だった。
◇
やがて。
参拝の順番が来る。
三人は手を合わせる。
◇
今年も楽しく過ごせますように。
◇
シルヴァはそう願った。
◇
何を願ったのかは誰も聞かない。
それもなんとなくのルールだった。
◇
参拝を終える。
◇
「次」
クジャが言う。
◇
「おみくじだな」
◇
「おみくじだね」
◇
三人はおみくじ売り場へ向かった。
◇
結果。
◇
シルヴァ。
吉。
◇
クジャ。
吉。
◇
ティナ。
大吉。
◇
「勝った」
ティナが少し得意そうだった。
◇
「勝負だったのか」
シルヴァが言う。
◇
「勝負」
クジャも頷く。
◇
ティナはおみくじを開く。
色々書いてある。
健康運。
学業運。
金運。
◇
そして。
恋愛運。
◇
ティナの視線が少しだけ止まる。
◇
『身近な人との縁を大切に』
◇
一瞬だけ。
本当に一瞬だけ。
シルヴァを見る。
◇
「どうした?」
シルヴァが聞く。
◇
「なんでもない」
ティナはすぐ視線を戻した。
◇
クジャは見ていた。
◇
「青春」
◇
「うるさい」
◇
即答だった。
◇
シルヴァは意味が分かっていない。
今年も変わらないらしい。
◇
三人は屋台を回る。
たこ焼き。
たい焼き。
甘酒。
◇
結局。
食べ歩きになった。
◇
「動画撮ってる?」
ティナが聞く。
◇
クジャはカメラを向ける。
◇
「撮ってる」
◇
「さすが」
◇
三人は笑った。
◇
夕方。
神社を出る。
空は少しずつオレンジ色になっていた。
◇
「今年もよろしく」
ティナが言う。
◇
「よろしく」
シルヴァも答える。
◇
「よろしく」
クジャも頷く。
◇
新しい一年。
映像アーカイ部の一年。
また新しい思い出が始まる。
◇
夜。
動画投稿。
タイトル。
『初詣に行ってきた』
◇
コメント欄。
『あけましておめでとう!』
『大吉すごい』
『今年も楽しみ』
『この三人好き』
『良い一年になりますように』
◇
登録者数。
五百五十八人。
↓
六百二十三人。
◇
「六百人超えたな」
シルヴァが言う。
◇
「今年も頑張ろう」
ティナが笑う。
◇
「頑張ろう」
クジャも頷いた。
◇
映像アーカイ部。
二年目の放課後が始まった。




