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第28話 初詣

 一月一日。




 新年。




 冬の空気は冷たい。




 吐く息は白い。







 午後。




 駅前の待ち合わせ場所。




 シルヴァは先に来ていた。




 黒いコート。




 マフラー。




 完全防寒だった。







「お待たせ」




 声が聞こえる。




 振り返る。




 ティナだった。




 白いコートに赤いマフラー。




 普段の制服とは少し雰囲気が違う。







「寒いな」




 シルヴァが言う。







「寒いね」




 ティナも頷く。







 その直後。




「寒い」




 クジャが現れた。




 黒いコート。




 黒いマフラー。




 いつも通りだった。







「新年だな」




 シルヴァが言う。







「新年だね」







「新年」







 今年最初の会話だった。







 三人は神社へ向かう。




 人は多い。




 参拝客の列が続いている。




 屋台も出ていた。




 少しだけお祭りみたいだった。







「思ったよりいるな」




 シルヴァが言う。







「初詣だし」







「初詣」







 三人は列へ並んだ。







 少しずつ進む。




 冬の空。




 神社の鐘の音。




 新年らしい空気だった。







 やがて。




 参拝の順番が来る。




 三人は手を合わせる。







 今年も楽しく過ごせますように。







 シルヴァはそう願った。







 何を願ったのかは誰も聞かない。




 それもなんとなくのルールだった。







 参拝を終える。







「次」




 クジャが言う。







「おみくじだな」







「おみくじだね」







 三人はおみくじ売り場へ向かった。







 結果。







 シルヴァ。




 吉。







 クジャ。




 吉。







 ティナ。




 大吉。







「勝った」




 ティナが少し得意そうだった。







「勝負だったのか」




 シルヴァが言う。







「勝負」




 クジャも頷く。







 ティナはおみくじを開く。




 色々書いてある。




 健康運。




 学業運。




 金運。







 そして。




 恋愛運。







 ティナの視線が少しだけ止まる。







『身近な人との縁を大切に』







 一瞬だけ。




 本当に一瞬だけ。




 シルヴァを見る。







「どうした?」




 シルヴァが聞く。







「なんでもない」




 ティナはすぐ視線を戻した。







 クジャは見ていた。







「青春」







「うるさい」







 即答だった。







 シルヴァは意味が分かっていない。




 今年も変わらないらしい。







 三人は屋台を回る。




 たこ焼き。




 たい焼き。




 甘酒。







 結局。




 食べ歩きになった。







「動画撮ってる?」




 ティナが聞く。







 クジャはカメラを向ける。







「撮ってる」







「さすが」







 三人は笑った。







 夕方。




 神社を出る。




 空は少しずつオレンジ色になっていた。







「今年もよろしく」




 ティナが言う。







「よろしく」




 シルヴァも答える。







「よろしく」




 クジャも頷く。







 新しい一年。




 映像アーカイ部の一年。




 また新しい思い出が始まる。







 夜。




 動画投稿。




 タイトル。




『初詣に行ってきた』







 コメント欄。




『あけましておめでとう!』




『大吉すごい』




『今年も楽しみ』




『この三人好き』




『良い一年になりますように』







 登録者数。




 五百五十八人。




 ↓




 六百二十三人。







「六百人超えたな」




 シルヴァが言う。







「今年も頑張ろう」




 ティナが笑う。







「頑張ろう」




 クジャも頷いた。







 映像アーカイ部。




 二年目の放課後が始まった。

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