第27話 大晦日
十二月三十一日。
大晦日。
今年最後の日だった。
◇
午後。
映像アーカイ部の部室。
三人はいつものように集まっていた。
冬休み中なのに。
もはや当たり前だった。
◇
「今年最後だな」
シルヴァが言う。
ティナも窓の外を見る。
「最後だね」
クジャも頷く。
「最後」
◇
部室の中は静かだった。
クリスマスツリーは片付けられている。
年末らしい空気だった。
◇
「何撮る?」
ティナが聞く。
シルヴァは少し考える。
「一年振り返るか」
クジャも頷いた。
「あり」
◇
三人はパソコンを開く。
春からの動画。
夏祭り。
海。
花火。
肝試し。
文化祭。
イルミネーション。
クリスマス。
◇
「結構あるな」
シルヴァが言う。
「思ったより」
ティナも笑う。
「多い」
クジャも頷いた。
◇
動画を見返す。
春の自分たちは少しぎこちない。
今見ると分かる。
まだ距離があった。
◇
「初々しい」
ティナが笑う。
「言うな」
シルヴァが返す。
「事実」
クジャが言った。
◇
三人は笑う。
今なら普通に話せる。
普通に遊べる。
でも最初は違った。
◇
夕方。
今年最後の動画を撮る。
特別な企画ではない。
ただ一年を振り返るだけ。
映像アーカイ部らしい動画だった。
◇
「一番楽しかったのは?」
ティナが聞く。
◇
「海」
シルヴァが即答する。
◇
「花火」
ティナが答える。
◇
「夏祭り」
クジャが言った。
◇
三人とも違った。
でも。
全部夏だった。
◇
「分かりやすいな」
シルヴァが笑う。
「夏楽しかったし」
ティナも笑う。
「楽しかった」
クジャも頷いた。
◇
しばらく話す。
来年のこと。
やりたい企画。
行きたい場所。
色々。
◇
「来年はもっと増やしたいな」
シルヴァが言う。
◇
「登録者?」
ティナが聞く。
◇
「思い出」
◇
一瞬だけ静かになる。
そして。
ティナは笑った。
「それっぽい」
◇
クジャも頷く。
「部活っぽい」
◇
三人は笑った。
◇
夜。
編集。
投稿。
タイトル。
『今年最後の動画』
◇
コメント欄。
『一年お疲れ様』
『来年も楽しみにしてます』
『このチャンネル好き』
『夏祭り回好きだった』
『良いお年を!』
◇
登録者数。
五百二十三人。
↓
五百五十八人。
◇
「増えたな」
シルヴァが言う。
◇
「年末ブースト?」
ティナが笑う。
◇
「かも」
クジャも言った。
◇
部室を出る。
旧校舎の廊下。
夕焼けはもうない。
外は夜だった。
◇
「じゃあまた来年」
ティナが言う。
◇
「また来年」
シルヴァも答える。
◇
「また来年」
クジャも頷いた。
◇
当たり前みたいな約束。
でも。
少しだけ特別だった。
◇
こうして。
映像アーカイ部の一年目は終わる。
そして。
新しい年が始まろうとしていた。




