第26話 年末大掃除
十二月下旬。
冬休み。
今年も残りわずかだった。
◇
午後。
映像アーカイ部の部室。
三人はいつものように集まっていた。
だが今日は少し違う。
机の上には掃除道具が置かれている。
◇
「大掃除するか」
シルヴァが言う。
「部長みたい」
ティナが笑う。
「違う」
クジャが言う。
その通りだった。
映像アーカイ部に部長はいない。
なんとなく三人でやっている。
最初からずっとそうだった。
◇
「でも確かに汚いね」
ティナが部室を見回す。
机。
本棚。
棚の上。
よく見ると埃もある。
◇
「掃除」
クジャが言う。
「掃除だな」
三人は立ち上がった。
◇
窓を開ける。
冷たい空気が入ってくる。
「寒っ」
シルヴァが言う。
「開けたの自分」
ティナが返す。
「自業自得」
クジャも言う。
反論できなかった。
◇
掃除開始。
机を拭く。
本を整理する。
機材を片付ける。
思った以上に作業は多かった。
◇
棚の奥。
シルヴァが古い箱を見つける。
「なんだこれ」
開ける。
中には写真だった。
映像アーカイ部の活動写真。
◇
春。
入部した頃。
まだ三人とも少し距離がある。
「若いな」
シルヴァが言う。
「一年も経ってない」
ティナが呆れる。
「早い」
クジャが言った。
◇
夏祭り。
海。
花火。
文化祭。
写真は少ない。
でも動画は残っている。
それが映像アーカイ部だった。
◇
「結構撮ったな」
シルヴァが言う。
ティナも頷く。
「撮ったね」
クジャも同意した。
◇
春。
登録者ゼロ。
動画一本。
そこから始まった。
今は四百八十九人。
少しだけ増えた。
◇
「来年どうなるかな」
ティナが言う。
シルヴァは少し考える。
「千人?」
「高い」
クジャが即答した。
◇
「じゃあ六百人」
「弱気」
ティナが笑う。
三人も笑った。
◇
掃除は続く。
夕方になる頃にはかなり綺麗になっていた。
机も。
棚も。
床も。
見違えるほどだった。
◇
「終わった」
シルヴァが椅子に座る。
「終わったね」
ティナも座る。
「終わった」
クジャも頷く。
◇
窓の外。
冬の夕焼け。
春に初めてここへ来た日を少し思い出す。
あの日。
シルヴァは部室の扉を開けた。
ただそれだけだった。
でも。
そこから全部始まった。
◇
「来年もよろしく」
ティナが言う。
一瞬静かになる。
◇
「よろしく」
シルヴァが答える。
「よろしく」
クジャも頷いた。
◇
三人は少し笑った。
特別な言葉ではない。
でも。
映像アーカイ部らしかった。
◇
動画投稿。
タイトル。
『年末大掃除』
◇
コメント欄。
『一年お疲れ様』
『来年も楽しみ』
『思い出振り返るの良かった』
『もう年末か』
『この三人好き』
◇
登録者数。
四百八十九人。
↓
五百二十三人。
◇
「五百人超えた」
シルヴァが言う。
ティナも笑う。
クジャも頷く。
◇
春には想像もしなかった数字。
でも。
今は三人で喜べる。
◇
窓の外。
夕焼けは少しずつ夜へ変わる。
今年の映像アーカイ部も、残りあと少しだった。




